昨日、高市早苗首相が誕生しました。首相はさっそく経済対策にも言及しましたが、それらが抜本的な景気回復につながるかを疑問視する声もあります。


こうした政治の動きに限らず、トランプ関税の動向やAI関連銘柄の決算など、国内外のニュースに市場が敏感に反応する局面が続いていますが、ファンドを活用した資産運用では、短期的な変動に振り回されず、長期的な視点を持つことが大切です。

特に、安定的に資産を育てたい人にとっては、「どれだけリスクを抑えて効率的に運用できるか」がポイントになります。
そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、NISAで買える、運用効率に優れた低リスク好成績ファンドをご紹介いただきます。

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オルカンよりも低リスクのファンドは?

過去半年間のマーケットを振り返ると日米の株価指数(日経平均株価、S&P500指数)は、トランプ関税に対する懸念の後退や、世界的な人工知能(AI)関連投資の拡大に伴うAI関連銘柄の好決算などが追い風となって上昇が継続し、10月上旬にはそれぞれ過去最高値を更新しました。

しかし足元の日経平均株価は、10日以降の2日間で、政局への不透明感などから大幅下落となり、S&P500指数についても米中の貿易摩擦懸念などから10日に大幅下落を記録するなど、不安定な状況となっています。

為替市場においてもドル円レートが日銀の利下げ見送り観測や財政拡張への懸念などから9日には153円台をつけるなど急速な円安ドル高が進みましたが、10日以降は政局不安や為替介入への警戒感などから円高ドル安に転じて150円台をつけるなど、価格変動が大きくなっています。

こうした投資環境下においては、リスクを抑えたファンドへの分散投資が選択肢と考えます。

SBI証券の投資信託取引メニューのファンド検索(ログインが必要です)において、リスクを抑えたファンドを探す基準としては、値動きの振れ幅を示す標準偏差(シグマ)を見ます。標準偏差はリスクと呼ぶときもあります。標準偏差の値が小さいほど、値動きが相対的に小さいファンドといえます。

また、標準偏差の大きさをリスクメジャー(全ファンドの中でのリスク水準を5段階で示した指標)で知ることもできます。リスクメジャーは標準偏差が全ファンドの中でどの程度の水準にあるかを示した値です。
低い(1)から高い(5)まで5段階あります。

リスクを抑えたファンドを探す場合は、「ファンド検索」で「条件変更」をクリックして「絞込条件」に入り、リスクメジャーで低い(1)とやや低い(2)のファンドに絞った上で、3年リターンなどを参考にして、ある程度のリターンが期待できるファンドを探すのが有効と考えます。特定のカテゴリーに絞らずにSBI証券取り扱いでNISAで買える低リスクファンドの3年リターンランキングが図表1となります。

参考としてNISAで人気のオルカン(リスクメジャーはやや高い(4))を表示していますが、1位から3位までのファンドは1年、3年リターンがオルカンをわずかに上回りました。また、標準偏差の3年は7本ともオルカンよりもかなり小さい値となっています。そのため、運用効率を示すシャープレシオ((リターン-安全資産利子率)÷標準偏差)の3年は、7本ともオルカンを上回る結果となり、運用効率に優れたファンドとなっています。

それぞれのファンドについてコメントします。
運用効率に優れた低リスク好成績ファンド7選

7位:株式とJリートのハイブリッド運用 日本株&Jリート好配当フォーカスファンド(インカムフォーカス)

株式及び不動産投資信託証券(Jリート)に投資し、各資産への投資割合は50%ずつを中心とし、各資産の期待リターンやリスク、市場環境等によって、それぞれ30%~70%の範囲で決定しているファンドです。直近の構成比は株式50%、リート50%となっています(※)。株式とリートは値動きが異なることと、外貨建て資産に投資していないことが標準偏差が抑えられた要因になっているといえます。国内株式は好配当株式を投資対象としていることとJリートは相対的に高い利回りが期待できることから、予想配当利回りは3.76%(※)となっています。
6位:株式7割・債券3割のバランス運用 ハッピーエイジング30

基準資産配分比率が株式70%、債券30%のバランスファンドです。
ファンドの構成比率は国内株式(大型割安株と小型株)44%、外国株式21%、新興国株式5%、外国債券20%、国内債券8%(※)などとなっています。リスクを抑えて高いリターンを上げているバランスファンドといえ、つみたて投資枠でも購入可能なファンドです。
5位:金を高比率で組み入れた分散型ファンド ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド(ポラリス)

日本を含む世界の様々な資産クラス(株式、債券、金、リート等)に投資し、世界の市場環境に応じて魅力的なリスクプレミアムが期待できる資産を選定し、配分比率の決定を行うファンドです。基本資産配分の見直しは原則として月次で行い、資産別の構成比率は、株式42.9%(高配当の世界株式と高配当の新興国株式を含む)、債券7.6%、金46.5%などとなっており(※)、恒常的に金の構成比が高いファンドとなっています。円資産の比率は3%(※)のため、大部分が外貨建て資産のファンドとなっていますが、値動きの異なる金の高ウエイトが、相対的に小さい標準偏差と好パフォーマンスに貢献しているといえます。
4位:配当の安定性と成長性に注目 日本好配当株オープン

予想配当利回りの水準に着目しつつ、配当の安定性や成長性、企業の業績動向、株価バリュエーション(割安度)等を勘案して銘柄を選定しているファンドです。組入上位銘柄は野村不動産ホールディングス、日本たばこ産業、インフロニア・ホールディングス、NTT、ヒューリックなどとなっており、組入銘柄数は57銘柄、予想配当利回りは3.8%です(※)。1位のファンドと運用会社が同じですが、異なる運用方針の配当に着目したファンドとなっています。
2位・3位:市場平均を上回る高配当銘柄に投資 好配当ジャパン・オープン/みずほ好配当日本株オープン

好配当ジャパン・オープン(愛称:株式時代)、みずほ好配当日本株オープンは、同じマザーファンドに投資しており、予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄を主な投資対象としたファンドです。組入上位銘柄はトヨタ自動車、三井住友トラストグループ、NTT、太陽誘電、三井化学などとなっており、組入銘柄数は98銘柄、予想配当利回りは3.5%です(※)。
1位:配当収入と株価上昇を両立 三井住友・配当フォーカスオープン

配当に着目し、中長期的な株価の上昇と配当収入による成長を目指すファンドです。組入上位銘柄はみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日本たばこ産業、三機工業などとなっており、組入銘柄数は94銘柄、予想配当利回りは3.7%です(※)。
シャープレシオ(3年)は2.98となっており特に運用効率に優れたファンドといえます。

上記7ファンドは、高配当の国内株式ファンド(4本)と運用効率に優れたバランスファンド(3本)となりました。バランスファンドはすべて高配当の株式に投資しているのが共通点といえます。一般的に高配当株式は株式相場の下落局面で一定の抵抗力が期待される点が特徴として挙げられます。

リスクを抑えた分散投資を検討している方は、オルカンよりも低リスクで高い運用効率を実現しているこれらのファンドの活用が有効と考えます。

(※)ポートフォリオの情報は2025年9月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。予想配当利回りはファンドの運用利回りを示すものではありません。

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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。
最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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