エクサウィザーズは10月21日、生成AIを活用して組織の文化やプロセス、人の意識そのものの変化に挑戦する人に向けたイベント「AI Innovators Forum 2025」を開催した。同イベントには将棋棋士(九段)の羽生善治氏も参加し、棋士の視点を通じてAI時代における人間の価値を論じたトークセッションを繰り広げた。
今回はそのトークセッションから、羽生氏が感じたAIの特徴や将棋界への影響、さらにはAI時代の教育について、2回にわたって紹介する。本稿は前篇として、将棋界とAIが歩んできた10年間を振り返る。モデレーターはエクサウィザーズの石山洸氏が務めた。
羽生氏が将棋連盟の会長を経験して感じた変化
石山氏:羽生さんは日本将棋連盟の会長という立場から、再度棋士に戻って挑戦しています。どのようなモチベーションで棋士の現場に戻ったのでしょうか。
羽生氏:6月に連盟の会長を退任して、今は棋士をしています。会長をしている間にも棋士として対局しながら運営に携わっていましたが、時間の使い方が変わってきたことを感じます。
当時は2つのまったく違う仕事をやっていくことがモチベーションになっていましたが、今はそれがなくなってしまいました。その中で、現在は改めて将棋に集中して向き合っていく時期なのかなと思っています。
石山氏:会長を経験してから棋士に戻ると、何か違いはありますか。
羽生氏:私は棋士になって今年で40年になります。以前は将棋界のことをほとんど知っているつもりでしたが、連盟の上の立場になって初めて知ることも多かったので、将棋界の全体像が腑に落ちた感覚があります。
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