ファミリーマートは、おむすびや弁当などの値下げ販売に使用している「涙目シール」を10月22日からフリー素材化し、新たに4種類のデザインを加えたことを発表した。ファミリーマートでは涙目シールの導入から廃棄量が5%削減するなど一定の成果を出している。
今後は様々な飲食店や小売店でも涙目シールによる食品ロス削減を目指すという。

○「涙目シール」でファミマの廃棄が5%減った!?

ファミリーマートでは持続可能な社会に向けて食品ロス削減に取り組んでいる。

ファミリーマート サステナビリティ推進部部長の大澤寛之氏によると、パック惣菜などはガス置換包装で美味しさと長持ちを両立させ、米飯商品(おにぎりやお弁当など)は製造工程を見直すことで消費期限を2時間延長、さらに冷凍弁当も拡充するなど、仕組みで消費期限切れ商品を減らす取り組みをしてきた。

さらに、2022年からは規格外食材を使用した24商品を販売したり、店舗の発注精度の向上・「てまえどり」の呼びかけたり、そして販売期限の迫った商品の値下げ販売を行っている。

その結果、2018年から比べると32%の食品ロス削減に成功した。しかし目標として掲げていたのは「2030年までに50%削減」ということで、達成するための策として登場したのが「涙目シール」だ。

以前は「てまえどり」を呼びかけるPOPと「20円引き」と文字のみで表現されたシールの貼り付けを行っていたが、「涙目シール」はおむすびが涙を浮かべた表情で「たすけてください」と訴えかけるユニークで可愛らしいデザイン。

お客様からは「値引き商品を買うのが恥ずかしかったけど、これなら助けている感覚で買える」「心を動かされて購入しました」といった声も届いているそうで、買うためのハードルを下げることができているようだ。

そして実際に効果も出ている。「2024年10月の実証実験では文字のみの値引きシールと比べて購入率は5%アップしました。また、2025年の3月に全国展開開始後には、購入率が10%アップした店舗もありました。直近の数字ではファミリーマート全体として前年の同期間と比べて5%食品ロスが削減できています」と大澤氏は話す。
全国ファミリーマートで5%食品ロスが削減できているということは、年間で約3,000トン食品ロスが削減できるということになる。
○涙目シールをフリー素材化「社会全体の食品ロスを減らしたい」

現在日本の食品ロス量は毎年約464万トンと言われているが、ファミリーマートでは一定の成果を出した「涙目シール」で日本全体の食品ロスも減らすため、10月22日から開始したのは「涙目シール」のフリー素材化。

大澤氏は、「ファミリーマートだけではなく、色々な場で『涙目シール』を使っていただきたいです。そのため、デザインのバリエーションを増やしました。おむすび以外にもパン、肉、魚、そしてケーキなどがあります」と発表。ファミリーマートのホームページからダウンロードできるそうだ。

シール状になっているものはファミリーマート店舗のマルチコピー機から印刷することもできる。

○涙目シール成功の理由を心理学で解説すると……

滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科准教授の山田歩氏は「涙目シール」の成功を行動経済学の視点から解説。

第一に涙目シールは人々がより良い選択を自発的にとれるよう手助けする「ナッジ」型コミュニケーションがうまくいった結果だと分析する。

ポスターやチラシで「食品ロス削減にご協力ください」と書かれていたとしても実際に行動にうつす人はあまり多くないかもしれない。しかし、涙目シールは

購入するだけで食品ロス削減に貢献できる簡単さ
キャッチーな涙目シールが人の感情を動かす
「キャラクターを助けてあげたい」という気持ちと楽しさ
目の前に消費期限ギリギリの商品があり、今動くことができる状況

と、行動科学的にも「人を動かす」要素が数多く含まれ、無理なく食品ロス削減のための行動ができると話した。

続いて登壇した目黒区長の青木英二氏は、目黒区のごみ削減・食品ロス削減の一環として一部飲食店で「涙目シール」を導入していると話した。


青木氏は「環境問題の取り組みは区民1人の1人の皆さんの協力がないとできません。"大海も一滴から"という言葉がありますが、1人1人の皆さんの力は小さいかもしれないけどそれが集まって大きな力になると考えています。この考え方が環境問題には大事で、『涙目シール』もこの考え方にマッチする取り組みだと思います」と太鼓判を押した。
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