アイリスオーヤマといえば家電や生活用品など、生活に密着したアイテムで知られるメーカー。ですが、じつは国内No.1シェアの業務用清掃ロボットベンダーでもあります。
そんな同社が新たに発表したのが、ハードとソフトの両方を自社で開発した初の完全内製モデル「JILBY(ジルビー)」。

新製品はNTT西日本との協業により、清掃の優先順位や改善提案まで自分で考えて動く次世代機能「AIエージェント」を搭載。最近さまざまな店舗やオフィスで見かけるようになった業務用清掃ロボットは今どう進化しているのか? 発表会で実機をチェックしてきました。

清掃ロボットが自分で考えて掃除方法を提案

アイリスオーヤマは2020年より、ソフトバンクロボティクスの業務用清掃ロボット「Whiz i(ウィズ アイ)」をベースとした「Whiz i IRIS EDITION(ウィズ アイ アイリス エディション)」で市場に参入。その後、約5年で自社工場でハードウェアを内製した「BROIT(ブロイト)」の発売を開始しました。

また、2023年にはロボットスタートアップを子会社化し、「株式会社シンクロボ」を設立。新製品JILBYは、ハードウェアだけでなく、シンクロボの協力によりソフトウェアまで自社開発となった、アイリスオーヤマ初の完全内製モデルです。

JILBYで注目したいのが、2025年10月29日に発表されたNTT西日本との業務提携です。これはアイリスオーヤマの製品・サービスに、NTT西日本グループがもつAI技術やクラウドプラットフォームを連携させ、新たなソリューションを提供するもの。

そして、今回のJILBYにもNTT西日本のAIロボティクスプラットフォームを活用した「AIエージェント」という機能が搭載されています。

AIエージェントとは、ロボットが人の代わりに考えて判断する人工知能のこと。従来の清掃ロボットがあらかじめ設定されたルートを自動で動くだけだったのに対し、JILBYは現場の環境や汚れ具合を学習。
より効率的な清掃方法を自ら提案します。

たとえば「毎週、金曜日の5階はほかの日よりも40%汚れが多いため、金曜のみ5階を2回清掃しますか?」といった具体的な改善提案を自動で行ってくれるのです。

現場の声を反映した、使いやすさとメンテナンス性

長年にわたって清掃ロボットを提供してきたアイリスオーヤマらしく、JILBYは細部の使いやすさにもこだわりが見られます。

まず注目したいのが大容量バッテリー。JILBYは清掃終了後に自動で充電ステーションに戻って充電開始しますが、バッテリーは着脱可能なので、いざという場合は予備バッテリーとも交換可能。清掃中に電力が減っても、満充電済みのバッテリーに交換すればすぐに再稼働できる構造です。

これにより、夜間の限られた時間で広いフロアを清掃する場合などでも、充電待ちによる停止時間を最小限に抑えられます。

さらに、日常のメンテナンスを軽減するため、ダストボックスには紙パック式を採用。ゴミをそのままパックごと廃棄できるため、ホコリが舞い上がりにくく衛生的です。定期的な交換が必要となるブラシ部分も工具なしで簡単に取り外せる構造で、毎日の清掃後に短時間でメンテナンスを済ませられる工夫が感じられます。

ロボットは人手不足時代に無くてはならないアイテムに

冒頭でも触れたとおり、JILBYはアイリスオーヤマ初となるハードウェアとソフトウェアすべてを自社開発した同社初の完全内製モデルです。

重要なのが、新製品はソフトウェアまで内製できたことにより導入先の施設や業務内容にあわせた機能拡張が柔軟に行えるようになったということ。


たとえば、社員証などによる個人認証が必要なフラッパーゲートとの連携では、ロボットが自動で通行許可を取得して通過する仕組みも実装可能。さらに、エレベーターシステムと連携させれば複数階を自動で移動しながら清掃するなど、清掃現場の実情に即したアップデートが可能になります。

ユーザーの要望に応じたカスタマイズや現場特化型の改善がしやすくなり、清掃現場の多様なニーズに応えられるのがJILBYの強みといえそうです。

さらに、NTT西日本のプラットフォームを活用することで、今後は複数の清掃ロボットや設備との連携、施設全体での最適化も期待できます。現在は導入企業から集めた稼働データをAIが分析し、各施設ごとに最適な作業工程を自動で提案する仕組みも構築中だそうです。

少子高齢化が進む日本では、清掃業界に限らず人手不足は今後さらに深刻化すると見込まれています。そんな中、誰でも簡単に操作でき、効率的に清掃を行えるロボットの存在は、働く現場を支える新しい仲間としてますます重要になるはず。JILBYはまさにそういった時代のニーズを先取りした製品だといえそうです。

倉本春 くらもとはる 生活家電や美容家電、IoTガジェットなど、生活を便利にする製品が大好きな家電ライター。家電などを活用して、いかに生活の質をあげつつ、家事の手間をなくすかを研究するのが現在最大のテーマ。 この著者の記事一覧はこちら
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