「一次相続」で終わりではない現実
相続対策を検討する際、多くの方は「ご主人が亡くなられたとき(一次相続)」を前提に考えがちです。しかし実際には、その後に訪れる「配偶者の相続(二次相続)」こそが、より大きな課題となるケースが少なくありません。
一次相続では、配偶者の税額軽減が大きな効果を発揮します。たとえば、遺産総額が1億円の場合でも、配偶者が全額を相続すれば相続税を発生させないことも可能です。
しかし、二次相続ではこの軽減措置が使えません。結果として、一次相続よりも税額が数倍に跳ね上がることもあります。特に不動産を多く所有するご家庭では、資産分割や納税資金の確保が難航し、兄弟姉妹間のトラブルに発展する例も少なくありません。
二次相続で起きやすい3つの問題
○1.相続税が急増する
配偶者の税額軽減が使えなくなり、基礎控除も「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となるため、相続人が減ると課税対象額が増えます。たとえば、一次相続では相続人が「妻+子2人」であったのが、二次相続では「子2人」だけになるため、控除額が600万円減少します。
○2.不動産の共有が固定化する
一次相続で「妻が自宅、子どもが賃貸物件を共有」する形にしてしまうと、二次相続でその共有関係が複雑化します。結果として、共有持分の分割・売却・管理が困難になり、相続人全体の資産価値を下げる要因になります。
○3.納税資金の確保が難しい
不動産が多い家庭ほど、資産はあっても現金が足りない「資産リッチ・キャッシュプア」の状態に陥りやすいです。特に、収益不動産の修繕費・借入金返済が続いている場合、二次相続時の納税資金の準備が追いつかないケースが多発しています。
二次相続を見据えた「生前の設計」が重要
一次相続と二次相続を連動して設計することが、資産承継の最適化には欠かせません。
○1. 配偶者の生活保障と資産分割のバランス設計
配偶者が相続した資産が、その後の生活費・医療費・介護費用を十分に賄えるかどうかを確認しつつ、将来の税負担を抑えるための分散相続を検討します。具体的には、
一部の不動産を子どもに相続・生前贈与しておく
自宅や収益物件の所有割合を調整しておく
などの対策が考えられます。
○2.法人化・信託を活用した資産承継の仕組みづくり
不動産を法人で保有している場合、代表者の交代=株式の承継によって資産をスムーズに引き継ぐことが可能です。法人化することで、
節税効果(役員報酬・経費計上)
所有と経営の分離
遺産分割の簡素化
といったメリットも期待できます。
また、家族信託を活用すれば、「認知症リスクによる管理不能」を防ぎながら、「相続後の資産承継ルート」をあらかじめ指定することも可能です。たとえば「一次相続では妻に、妻の死後は長男に」といった設計を家族信託契約書で明文化できます。
納税・修繕・借入返済を見据えた資金計画
不動産を中心に相続する場合、納税資金と修繕資金を同時に確保することがポイントです。
生命保険の死亡保険金を「納税資金」に充当
一部物件の売却(もしくは借入返済による資産の流動性確保)
家賃収入の将来見込みに基づく資金繰りシミュレーション
など、金融面の計画を事前に立てておくことが重要です。
自宅と賃貸物件を持つご夫婦の場合
【前提】
・資産総額:2億円(自宅8,000万円+賃貸マンション1億円+預金2,000万円)
・一次相続:夫→妻・子2人(兄弟)
・二次相続:妻→子2人
一次相続では、妻が全資産を相続しても、配偶者の税額控除を適用して税額ゼロ。
しかし、妻の死亡時の二次相続には基礎控除が4,200万円しかなく、課税遺産総額は1億5,800万円。兄弟が1/2ずつ相続すると、相続税額は3,300万円を超えます。
【対策例】
・一次相続時点で、賃貸マンションの50%を子どもに分ける
・生命保険で2,000万円の死亡保険金を用意
・家族信託で「妻の生存中は収益を受け取り、死亡後は、兄は自宅と預金、弟は賃貸マンションを相続」
これにより、夫の遺志を引き継ぎながら、妻の生活保障と相続税の平準化、資産管理の一貫性を同時に実現できます。
専門家と「複数相続」を前提にプランニングを
一次相続対策だけで満足してしまうと、二次相続で「税・資金・分割」の三重苦に直面する可能性があります。保有資産全体を俯瞰し、家族の年齢・生活設計・相続人構成を踏まえたうえで、長期的な承継戦略を立てることが求められます。
特に不動産を多くお持ちの方は、
物件ごとの将来収益
評価額の推移
利用・売却・建替の可能性
を見据えた「相続シミュレーション」を専門家とともに行うことが、将来の家族の安心につながります。
いつ起こるかわからない二次相続は「次の世代への最終章」でありながら、準備不足が最も多い領域でもあります。
相続税の負担、分割の複雑化、資金繰りの行き詰まり――これらを未然に防ぐには、一次相続時点から“二歩先”を見据えた戦略的な資産計画が必要です。特に不動産の相続税価額は高く評価される一方で、分割しづらい、流動性が低いなどの特性があります。その特性を踏まえた相続対策が求められます。
「一度の相続で終わらせない」
それが、本当に家族を守る相続対策の第一歩なのです。
佐嘉田 英樹 さかた ひでき アテナ・パートナーズ株式会社 代表取締役。1991年に東京大学卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行、主に融資営業・マーケティング戦略企画に携わる。その後不動産・建設業界に身を転じ、建売分譲、賃貸アパート、介護福祉施設等の企画開発・売買などに従事し、2023年8月に独立。
アテナ・パートナーズ株式会社:https://athena-ptr.co.jp/
アテナ・パートナーズ株式会社は、お客様のニーズや目的を詳細にヒアリングして、物件や市場の調査を行った上で、所有不動産の有効活用、開発、建て替え、リノベーション・用途変更、売却、交換など、多角的・戦略的な企画提案・マネジメントを行う。企画計画から資金調達、テナント誘致、設計、工事、引き渡しまで一貫してプロジェクトをマネジメントすることで、独自のビジネスモデルを展開する。 この著者の記事一覧はこちら











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