何でも楽しもうという気持ちがより強く「自由に生きている」

イベントなどでいつも陽気に盛り上げ、多くの人を笑顔にしている草なぎ剛。先日、11月15日に開幕する主演舞台『シッダールタ』についてインタビューした際も、「絶好調!」と言いながら登場し、その場の空気を一気に明るくしてくれた。「朝起きた瞬間に『快調! 好調! 絶好調!』って言ってる(笑)」とプライベートでも前向きな言葉を連発し、言葉の力を日々感じているという。
仕事も「遊び」と捉え、何でも楽しんでいる草なぎ。年齢や経験を重ねてたどり着いた今の人生観や仕事観、そして今後について語ってもらった。

ノーベル文学賞受賞作家ヘルマン・ヘッセの最高傑作を舞台化した『シッダールタ』は、古代インドを舞台に主人公が悟りに至るまでの姿を描く物語。草なぎが、実在する宗教家で仏陀(釈迦と言われる仏教の始祖ブッダ)と同じ名を持つ青年シッダールタと、現代を生きるひとりの男の二役を演じる。草なぎと演出の白井晃氏がタッグを組むのは、2018年の『バリーターク』、2020年・2021年の『アルトゥロ・ウイの興隆』に続いて3作目となる。

稽古が始まる直前に行ったインタビューで、草なぎは「早く稽古に行きたい。ワクワクしています」と声を弾ませる。

「台本を読んだだけでは正直わからない。稽古場に入ると白井さんの100本ノックみたいな稽古が待っていて、何度も何度もやって台本に書かれていることが自分の中に刷り込まれていくので、今は何も考えてなくて、遠足に行く子供みたいに、早く遠足に行きたいなって感じです」

そして、白井氏への絶大な信頼を口にする。

「新しい地図を始めて、初めて舞台のお仕事をいただいたのが白井さんの演出作品だったので、信頼しかないです。僕が知らない世界を見せてくれる方で、『バリーターク』のときも白井さんは僕の目線でわかりやすく噛み砕いて演出してくださるので、どんどん芯を食っていくような感覚があって、そういうところがすごく楽しくて。一緒に演劇を通して遊んでいるような感じで、その中で新しいものを引き出してもらっています」

何でも遊びと捉えて楽しんでいる草なぎだが、その“遊び”の精神は、主演舞台『蒲田行進曲』(1999・2000)の演出を手掛けたつかこうへい氏から学んだものだという。


「『蒲田行進曲』でつかさんに引き出していただいて自分の中でお芝居が開花し、感情を爆発させるというか、役の中で自由に生きることを教えてくれて。僕はよく『遊び』と言いますが、つかさんがよく言っていたことで、『どれだけ役の中で遊べるか』『ステージに立ったら思う存分遊んでこい』とおっしゃっていたので、その気持ちをずっと持ち続けて忘れないようにしています」

“遊び”の精神を常に大切にしていることで、何でも楽しもうという気持ちがより強くなっているそうで、「年々、人にどう思われているか気にしなくなってきた」という変化も明かした。

「若い頃は自分がどう見られているのか今より気にしていたけど、人がどう思っているのか気にしていてもつまらない。人の気持ちはコントロールできないので、自分が好きなようにした方がいいと学び、より自由に生きている気がします。もちろん人に迷惑をかけてはいけない、傷つけてはいけないというルールはありますが」

ポジティブな言葉で自分を鼓舞「疲れていても『絶好調!』って」

イベントなども心から楽しんでいる様子で、よく「絶好調!」と発している草なぎ。今回のインタビュー時も「絶好調!」を連発して明るい空気にしてくれた。

いつから口癖のようになったのか尋ねると、「ファンミーティングの挨拶で言い始めたのがきっかけかな。『新幹線大爆破』(Netflix)に出演し、『出発進行!』と言っているうちに、『快調! 好調! 絶好調! 出発進行! 1本満足! 元気があれば何でもできる!』みたいにどんどん増えていって(笑)」と答えた。

そして、「一番は自分を盛り上げている」と言い、言葉の力を熱弁する。

「言葉はめちゃめちゃ大事で、ネガティブな言葉を発していると気持ちも落ちてしまうので、空元気でもいいから、いいことばかり口にした方がハッピーになれる。自分を鼓舞しているんです。絶好調じゃないときでも『絶好調!』って(笑)。撮影で疲れたときに『疲れた』って言っても、やらなきゃいけないわけだから、疲れていても『絶好調!』って言ったほうがよくないですか!?」

プライベートでも「絶好調!」とよく言っているそうで、前向きな言葉を普段から発することで年々明るさが増しているという。


「朝起きた瞬間に『快調! 好調! 絶好調!』って言ってる(笑)。皆さんも言った方がいいよ! この年になって言葉の力は偉大だとすごく感じていて、もちろんネガティブな言葉を言ってもいいけど、僕はなるべく前向きな言葉を使っていきたいなと思っています」

2017年9月22日に稲垣吾郎、香取慎吾とともに「新しい地図」を立ち上げてから8年。映画『ミッドナイトスワン』(20)で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、大河ドラマ『青天を衝け』(21)、連続テレビ小説『ブギウギ』(23~24)など、数々の話題作に出演するなど仕事も絶好調だ。

舞台にも毎年出演しており、舞台ならではの醍醐味があると語る。

「もちろんキャメラ(カメラ)の前で演技したり歌ったりするのも大好きだけど、幕が開いたら止めることができないという舞台で昔からやってきているので、そこでいつまでも勝負できるというのが幸せで、観てくれる人にも忘れられないような舞台になったらなといつも思っています」

ドラマ、映画、舞台のバランスは所属事務所が判断してくれているという。

「事務所のマネージャーさんがバランスを見て仕事を取ってきてくれています。幸せですよね。僕はただ遊んでいるだけというか、それで仕事が成立しているので、奇跡のような人だと思います。『バリーターク』も『新幹線大爆破』も『終幕のロンド』も、どの作品もよくて、それは自分でコントロールできるものではなく、周りの人が考えてくださっているおかげ。僕の仕事は、役などをいただいたときにちゃんと力が出せるようにしておくこと。その心構えはあります」

そして、スタッフや、仲間である香取と稲垣、ファンと過ごしていく中で生まれるものがあるという。

「スタッフの方、慎吾ちゃん、吾郎ちゃん然り、『NAKAMA to MEETING』(新しい地図のファンミーティング)の中でひらめくこともありますし、目の前にあるものを一生懸命やったら、それがまたいいところに派生して花が咲くのではないかなと、いつもそう思っています」

「10年後、20年後も、青春真っただ中の自分でいたい」

先のことは考えず、目の前の仕事に一生懸命向き合っている草なぎ。
今後について尋ねると「“生涯青春”でありたい」と目を輝かせる。

「10年後、20年後、どうなっているかというのは僕にとってはどうでもいいことで、そこで挑戦しているかどうかが大事。結果より、10年後、20年後も、挑戦している青春真っただ中の自分でいたい。若いときだけじゃなく、人生全部が青春なんです。20年後に『もう年だな』『あの頃はよかったな』という風になっていたら自分に負けたなと。20年後も『快調! 好調! 絶好調! 出発進行!』と言っている自分でいたい」

さらに、人生を問う壮大なテーマに挑む『シッダールタ』、遺品整理人を演じている『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系 毎週月曜22:00~)という、人生について考えさせられる2作品に参加し、「人はいつまでも変われるんだな」と感じているという。

「人生一度きりなので、もっと人生を楽しみたいし、何でも飛び込んでやってみようという気持ちが強くなっている気がします。僕も昔は人前で大きな声で『絶好調!』なんて言う自分じゃなかったし、人は変われるわけで、些細なことでも変えたいと思うことは変えていきたいなと思っています」

そして、整理整頓できない自分から変わるために「お片付けを始めました」と明かし、「自分の細胞はどんどん生まれ変わっているのに、心だけ立ち止まっていたら申し訳ないなと思って、毎日生まれ変わっている気持ちで生活しています」と笑顔で話してくれた。

■草なぎ剛
1974年7月9日生まれ。1991年にCDデビューして以来、数々の名曲を世に送り出し、『NHK紅白歌合戦』に23回出場。2017年9月に稲垣吾郎、香取慎吾と「新しい地図」を立ち上げ、俳優、歌手、タレント、YouTuberなど幅広く活躍。映画『ミッドナイトスワン』(20)で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
近年の主な出演作は、映画『サバカン SABAKAN』(22)、『碁盤斬り』(24)、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(21)、カンテレ・フジテレビ系ドラマ『罠の戦争』(23)、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(23~24)など。舞台『シッダールタ』は、11月15日~12月27日に東京・世田谷パブリックシアター、2026年1月10日~1月18日に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。

ヘアメイク:荒川英亮 スタイリスト:細見佳代(ZEN creative) 衣装:ポール・スチュアート
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