資産規模が大きく高収入であるゆえに、リスク許容度が高いと誤認し、分散投資を怠たる投資家もいます。退職金を一括投資して、大きな損失を出し、その後の人生計画が狂ってしまう方も少なくありません。
この記事では資産を大幅に失う失敗パターン、本当のリスク許容度の見極め方を解説します。
資産が多い人ほど「ハイレバレッジ」に手を出しがちな心理

多くの資産がある方で、ハイレバレッジの投資を選んでしまう心理は主に3つあります。
○成功体験による自信

これまで仕事や事業で大きな資産を築いてきた経験から、自信の判断に自信を持っている方が多く見られます。過去の体験による自信が、ハイレバレッジ商品や複雑な金融商品など、難易度の高い投資にチャレンジしたくなる要因になります。

この「自己効力感」は投資の経験によるものではないのですが、そこに気づかない方は多くいるのです。
○損失に対する感度が鈍い

多くの資産を持つ方は、投資で損失が出たとしても、すぐ生活が破綻するような状況にはなりません。よって、損失に対する感度が鈍く、高いリスクを取りやすい心理状態になります。

しかし、感度が鈍い状態が続くと、いつまで経っても同じパターンの「負けトレード」を繰り返し、資産は減少の一途をたどります。
○効率を追求したがる

仕事と同じく投資にも「効率性」を追求するため、短期間で資産が増える方法を好む方もいます。このような方は長期投資ではなく、短期のFXや株式の信用取引など、ハイリスク・ハイリターンの投資を選ぶ傾向です。

短時間でお金が急激に増える可能性のある金融商品は、投資というより投機であり、お金があっという間になくなる可能性も高いです。

分散投資を怠った富裕層が市場急変で資産を失うパターン

投資は、複数の金融商品に分散投資をするのが基本中の基本です。
それをしなかった場合に資産を失うプロセスを紹介しますので、こうならないように注意してください。
○急成長株に集中投資

株式投資でよくある失敗事例は、急成長株と呼ばれる小型・中型の銘柄に集中投資をしてしまうことです。これらの株は「大化け」する可能性があり、短期間で利益を得たい方には魅力的に映ります。

しかし大型株と異なり、値下がりも速いのが特徴で、1つの銘柄だけに投資するのは非常に危険です。さらに、米国株などはストップ安の制度がないため、わずか一日で10%・20%と急落することも。

急成長株への投資自体が悪いわけではありませんが、大型株も含めた分散投資を心がけることが必要です。
○レバレッジの使い過ぎ

FXのレバレッジは、ハイリスク・ハイリターンの典型です。たとえばレバレッジ20倍を設定すると、資金が10万円でも200万円の規模で取引ができます。

高いレバレッジをかけるほど利益も大きくなりますが、失敗した時の損失が莫大なものになります。FXに慣れてきて自信がついた頃、「これならいける」とハイレバレッジで勝負してしまう人が後を絶ちません。

FXの短期取引は、複数の通貨ペアに分散して行う方は少ないでしょう。結果として、特定の通貨ペアの大きな変動により、多くの資産を失うことになるのです。

○感情で無計画なトレードをしてしまう

トレードの損失を取り戻そうとして、焦って無計画なトレードをしてしまうことも、破滅への入口です。トレードのロジックが甘いため、結果的に失敗することが多くなり、さらなる無謀なトレードを誘発します。

失敗を取り戻そうとするとトレードの金額が大きくなり、損失も増えていきます。中には数千万円の損失を出してしまい、退場を余儀なくされた投資家もいます。
資産形成初期の高所得者が見直すべき「本当のリスク許容度」

資産運用を始めたばかりの初心者の方は、自分のリスク許容度を認識することが非常に重要です。リスク許容度に合った投資手法を選ぶことで、大きな損失を回避しやすくなります。

この章ではリスク許容度の内容、判断方法を紹介します。
○損失をどの程度受け入れられるか

リスク許容度とは、相場の変動や資産の減少をどれだけ心理的に受け入れられるか、その範囲を意味します。ローリスク・ローリターンか、ハイリスク・ハイリターンかは、人によって異なります。

ただし、ローリスク・ハイリターンの投資はありません。もしそのように謳う金融商品があるとしたら、詐欺の可能性が高いです。リスクとリターンは常に表裏一体です。

○リスク許容度の判断基準

リスク許容度を見極めるには、年齢、家族構成、資産・収入、投資経験の4つの要素が重要です。

4つの要素のうち、どれが特に重要かも人によって異なります。たとえば資産は少ないけれど、まだ年齢が若くて一定の投資経験がある人の場合、リスク許容度がやや高くなるかもしれません。

投資を始める前に、ご自身のリスク許容度がどの程度か、一度確認してみることをおすすめします。リスク許容度に見合った金融商品・投資方法を選びましょう。

安藤真一郎 あんどうしんいちろう マーケティング会社に勤務した後、フリーランスのライターに転身。 多種多様なジャンルの記事を執筆するなかで、金融リテラシーを高めることや情報発信の重要性に気づき、現在はマネー系ジャンルを中心に執筆している。 ライターとして、知識のない人でも理解しやすいよう、かみくだいた文章にすることが信条。 ファイナンシャルプランニング技能士2級、日商簿記検定2級取得。 この著者の記事一覧はこちら
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