11月6日、地域資源を活かした循環型社会づくりをテーマとする「第5回 かながわSDGsパートナーミーティング」が開催された。NTT東日本の地域循環型ミライ研究所が運営する「海とミライのがっこう」が行うSDGsへの取り組みを追ってみよう。
○SDGsの拡大を目指す「かながわSDGsパートナーミーティング」
「かながわSDGsパートナーミーティング」は、かながわSDGsパートナーの登録企業による、SDGsに資する取り組みのより一層の展開を目指した活動だ。神奈川県内でのSDGsのさらなる拡大を目指して、パートナー企業間の交流を促進し、継続的な連携を生み出していくことを主体とし、年間8回にわたり開催されている。
11月6日に行われた「第5回 かながわSDGsパートナーミーティング」では、「海とミライのがっこう」を中心とした地域連携の実践例と課題が語られた。
「海とミライのがっこう」は、NTT東日本 経営企画部の「地域循環型ミライ研究所」(以下、ミライ研)が運営し、NTT東日本 神奈川事業部がサポートするプロジェクトだ。豊かな海が広がる神奈川県横須賀市・走水地区において、“地域資源を活かした循環型社会づくり”をテーマに活動している。
○“ローカルループ”を目指して活動するミライ研
NTT東日本 経営企画部 地域循環型ミライ研究所 エバンジェリストを務める原田拓哉氏は、もともとSEやコンサルタントとして働き、2021年に中途でNTT東日本に入社した人物だ。新規事業開発を志望し、2022年から2024年までは横須賀市の文化スポーツ観光部に出向していた。2023年10月より現職に就く。
原田氏は、ミライ研の活動について次のように説明する。
「NTT東日本は、パーパスとして『地域循環型社会の共創』を掲げています。このパーパスのもとに設立されたのが、私のいる“地域循環型ミライ研究所”です。発足してもうすぐ3年になりますが、地域資源や地域の文化、自然などの領域に踏み込み、新しい価値作りをお手伝いできないかということを考えて作られた組織であり、いわば地域シンクタンクです」(原田氏)
ミライ研のメンバーは現在13名。
ミライ研の2025年度の調査方針は“ローカルループ”。これは、“「風を起こし」、「土を耕し」、社会価値と経済価値の循環を生み出すこと”という意味を込めた造語だという。地域に埋もれている魅力や資源を掘り起こして価値の顕在化を行い、地域内外の人たちとともに新しい価値を作っていくことで、持続的な地域づくりをしていくという考え方だ。
昨年度は大きく4つのテーマで11のプロジェクトを行い、例えば新潟県小千谷市では、電車やチャイムの音、放課後の体育館の音といった地域の音を集めて発信することで、地域を離れた人が地元を思い出すきっかけにし、将来的なUターンなどに繋げるという取り組みを行ったという。
○研修プログラムから生まれた走水地区の「海とミライのがっこう」
そんなミライ研のプロジェクトのひとつが、神奈川県横須賀市・走水地区をフィールドとした「海とミライのがっこう」だ。
「走水地区はとても自然豊かなところで、近くには県立の観音崎公園や横須賀美術館、防衛大学校があります。こういった自然資源を使って、大人も子供も想像力を育むことができる体験プログラムを、NTT東日本のメンバーと地域の事業者のメンバーが連携して行っているプロジェクトです」(原田氏)
「海とミライのがっこう」は、もともとNTT東日本社内の“越境学習”という研修プログラムからスタートしたという。これは、本業から離れて別の地域や別のプロジェクトに入り、数カ月間活動して課題解決と新しい事業を生み出すというもの。
横須賀市に出向していた原田氏もこの研修に誘われ、そこで漁業を営みながら「かねよ食堂」を経営し、造形作家としても活躍する、金澤等(愛称:ジョン)氏と出会う。ジョン氏の交流を通じて、「走水の資源を使って何ができるか」を考えた結果、“学校”というアイデアが生まれたという。
「走水に唯一の小学校が2025年3月で廃校になりました。学校が廃校になるとさらに人が減っていくというデータもあります。町長さんも課題感を抱えていました。我々は地域の自然資源や歴史などを学びのプログラムに活かして、人が訪れる場所にできないかと提案し、海とミライのがっこうが生まれたのです」(原田氏)
原田氏の研修プログラム自体は約10カ月程度で終わりを迎えたが、10カ月程度では地域を変えることはできない。原田さんら有志のメンバーは研修後もNTT東日本社内の“スクラム制度”という、本業以外に自分がやりたいことにチャレンジできる制度を使って
走水地区で活動を継続する。
そして漁業体験やわかめ種付け体験、漁師飯作りのワークショップなど、子どもも大人も楽しめる自然体験プログラムをこれまで10回以上、実施してきた。先日は小学校の社会科見学も受け入れたという。
「走水の資源を使った学びの場を作ることで、徐々に社会的価値は生み出せていると実感しています。ここからは、どうやって経済的価値に繋げ、持続可能なものにしていくかです」(原田氏)
「海とミライのがっこう」は順調な滑り出しを見せているが、まだまだ課題も多い。ひとつは、資金面が十分ではなくメンバーの関わりがボランティアベースになること。基本的に本業で「海とミライのがっこう」に関わっている人はおらず、リソースは非常に限られる。
もうひとつは、リピーターやファンになってくれる方々とのコミュニティができていないこと。
○本業を持ちながら活動する3名のパネルディスカッション
続いて、ミライ研の原田拓哉氏に加え、「海とミライのがっこう」のジョン氏、藤澤寛子氏が参加し、パネルディスカッションがスタートする。
「海とミライのがっこう」の活動を主導するジョン氏は、漁師である父の背中を見続け、青春時代にはサーフィンをしながら過ごしてきたという。ジョン氏は「走水という環境は本当にすばらしく、現代社会にとって必要な場所だと強く感じています」と説く。
「走水からは東京湾を行き交う船、横浜、スカイツリー、そして富士山まで見渡せる景色があります。この景色の中で、現代社会が全て透き通って見えるような感覚があるんです。学校がなくなると知ったとき、子どもたちはこの景色を見られなくなり、この環境でさまざまなことを感じる機会が失われるのだと危機感を覚えました。地域社会にとって“子ども”というワードは“未来”と同じ意味を持つと考えています。」(ジョン氏)
ジョン氏が目指したのは、地域に住む子どもたちだけでなく、外から来た子どもたちも「ここは自分の海だ」と思えるような関係人口を増やすこと。そして地域の一員として関わることができる地域づくりだ。
「AIで何でも調べられる時代だからこそ、子どもたちのわくわくする感情を育み、自分で考えて行動する力を養う取り組みとして『海とミライのがっこう』が生まれました」(ジョン氏)
藤澤氏は、走水地区の隣にある馬堀地域で生まれ育ち、一度横須賀を離れたのち、結婚・出産を機にUターンしてきたという。現在はアズバリューという会社を立ち上げ、中小企業のマーケティングやPR支援、不動産再生事業などを行っている。
「横須賀に戻ってきて、自分の母校に娘を通わせていますが、子どもの数が減っていることに危機感を覚えました。地域活動に参加すると、私が子どもの頃に活動していたおじいちゃんが、さらに年を重ねて活動されている状況で、若い人はほとんどいません。地域のために何かをしたいという思いから、まずは空き家再生などの活動を始め、その後、ジョンさんの取り組みを知って参加するようになりました」(藤澤氏)
現在、藤澤氏はSNS、ウェブサイトでの情報発信面から「海とミライのがっこう」を支えている。リソースが少ないからこそ効率化できるところは効率化し、自らが持つスキルを活かして貢献するこで、充実感も得られていると話す。
ミライ研の原田氏は、走水地区のプロジェクトを通して、NTT東日本が受けるメリットについて語る。
「現在、活動を通してNTT東日本にどのようなメリットがあるのかを調査・研究しており、年明けぐらいにレポートを出す予定です。結論から言うと、ウェルビーイングの変化、本業への影響・接続、地域との関係性、すべてにおいて非常にポジティブな回答が得られました」(原田氏)
ウェルビーイングに関しては「仕事だけでなく自分の人生や社会生活にも良い影響を与えている」、本業への影響・接続に関しては「本業とは離れた場所で活動することで、視野が広がったり、創造性やイノベーティブな力が身についたりするという効果がある」、地域との関係性については「引き続き応援したい、関わりたい、自分の身近な地域にも関心を持つようになった」といった回答があるという。
登壇した3名は、いずれも本業を別に持った上で「海とミライのがっこう」に関わっている。ジョン氏は、仕事とプライベートと地域活動の境界線について考えを述べる。
「私の活動は自分から生み出していくことが多く、仕事とプライベートの境目は最初からありませんでした。仕事というよりも“生き方“だと思っています。どんな生き方がしたいかということが、イコール仕事につながる。
○社会性と経済性をうまく循環させることが目標
「第5回 かながわSDGsパートナーミーティング」はこの後、パートナー企業間のグループディスカッションに移行。神奈川県内の地域連携について議論や交流が行われた。
最後に、講演を終えた原田氏に、ミライ研の今後の展望を伺ってみよう。
「我々の組織って何をしてるかわかりにくいので、こういったイベントにも出させていただくことで、少しずつ活動が広まってきてるのかなと感じます。地域の魅力を掘り起こし、新しい価値を作っても、社会的に“いいね”と言われるだけでは持続できません。社会性と経済性をうまく循環させることが、ミライ研の目指す目標です。そして私自身も社会の中で役割を持ちたいという思いがあるので、活動を通して“自分の乾いてる部分”を満たせるといいなと思います」(原田氏)











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