中国外務省が、日本への渡航を当面控えるよう中国人に注意喚起した──。
見出しだけ見ると「インバウンド相場は終わり」「中国人観光客に頼ってきた日本株は逆風」といった連想が広がり、SNSでも「インバウンド関連は総崩れだ」と悲観論が飛び交っている。
しかし一方で、日本株全体は円安と賃上げを追い風に過去最高値圏、「サナエノミクス」と呼ばれる相場が続く。
今回の渡航自粛要請は、本当にインバウンド需要の崩壊を意味するのか。それとも、別の投資テーマを浮かび上がらせたシグナルにすぎないのか。
今回は、『Financial Free College』CEOの松本侑氏(@smatsumo0802)に、その答えを伺った。
○渡航"禁止"ではない。事実関係を整理しよう
まず確認しておきたいのは、今回「何が決まったのか」という点だ。中国政府が打ち出したのは、日本への渡航を法的に禁じる措置ではなく、「当面、日本行きは控えるように」という注意喚起にとどまっている。
ビザ発給の停止や団体旅行の全面禁止など、これまで実際に行われてきたような強い規制とは、重さも影響度も違ってくる。
表向きの理由は「日本で中国人を狙った犯罪が多発しているから」という説明だが、実質的には、高市首相の台湾有事発言に対する対抗措置と受け止めるのが妥当だろう。日本の政治姿勢に向けた、分かりやすい政治的メッセージでもある。
「中国」「渡航控えて」「インバウンド崩壊」といった強いワードが並ぶと、市場はどうしても神経質に振れやすい。そこは一度クールダウンすべきだ、と松本氏は冷静だ。
「ニュースのインパクトと、実際に企業業績にどこまで実務的な制約がかかるのかは、分けて考える必要があります。今回の注意喚起で、中国人観光客が明日から急にゼロになるという話ではありません。じわじわ効いてくるタイプのニュースなんです」(松本氏)
○インバウンド総崩れどころか、"中国一強"解消のチャンス
短期的に逆風を受けやすいのは、インバウンドの恩恵を受けてきたセクターだ。航空、百貨店、ホテルなどに加え、松本氏はより消費者に近い分野での影響も指摘する。
「影響を受けやすいのは、まず飲食株でしょう。具体的には、『一風堂』を展開する力の源ホールディングス(3561)や幸楽苑ホールディングス(7554)、『スシロー』のFOOD & LIFE COMPANIES(3563)、サイゼリヤ(7581)などが挙げられます。そのほか、ユニ・チャーム(8113)や『ユニクロ』のファーストリテイリング(9983)といった小売り関連にも、同様の影響が及ぶ可能性があるため、動向を注視する必要があります」(松本氏)
さらに、政治的緊張はコンテンツ分野にも波及しかねない。『クレヨンしんちゃん』や『鬼滅の刃』といった日本アニメが、中国で上映停止に追い込まれるリスクも懸念され始めている。
「エンタメ関連は、渡航規制とは別のルートからも、政治リスクの影響をまともに受けやすい分野です。一方で、同じキャラクタービジネスでもサンリオ(8136)の株価下落は、性質が少し違います。サンリオについては、AI関連株への資金シフトや、高バリュエーションに対する警戒感といった要因が大きく、純粋なインバウンド銘柄とは切り分けて考えるべきでしょう」(松本氏)
そんな中国人観光客は、いまも訪日客全体の約3割(※)を占めており、株式市場が神経質に反応するのも不思議ではない。とはいえ、日本のインバウンド需要そのものがしぼむわけではない。
※日本政府観光局(JNTO)が2025年9月17日に公表した、2025年8月の推計値
「円安を追い風に欧米・東南アジアからの需要が伸びており、ある地域の落ち込みを別な地域が補う構図ができつつあります。中国依存度の高すぎるビジネスモデルから脱却できるかどうかが、中長期では評価の分かれ目になっていくと思います」(松本氏)
○防衛バブル批判は無視していい。"脱中国"こそ日本株の本命テーマ
今回の注意喚起は、「安全保障と経済の一体化」という日本株相場の大きなテーマを改めて浮き彫りにした。日中関係の緊張が意識されるほど、マーケットは「有事を前提とした経済構造」を無視できなくなる。
しかし、こうした動きには「安全保障を盾にしたバラマキ」「防衛株は期待先行」といった批判や、政治的思惑が優先されているとの疑念も根強い。こうした懐疑論もあるなか、松本氏は次のセクターに注目する。
「まず、防衛・安全保障の分野ですね。自衛隊の装備やレーダー、宇宙インフラ、サイバーセキュリティといった領域です。防衛費のGDP比2%はすでに決まった流れですが、今回の一件で、投資家もその方向性をあらためて意識したはずです。それからもう一つ、サプライチェーンの『脱中国』と『台湾リスク分散』。半導体や自動車部品メーカーが、中国一辺倒のリスクを避けて、国内や友好国へ設備投資を移す動きが活発になっています」(松本氏)
有事のリスクが意識されるほど生産回帰は強まり、受け皿となる装置メーカー等には中長期で追い風となるのだとか。
「短期的に見れば、たしかに今回のニュースはマイナス材料です。ですが、市場全体で見ると、『安全保障の強化』や『サプライチェーンの見直し』という、日本株の中心テーマをあらためて浮き彫りにしたできごとでもあります。どの銘柄が一時的に売られたかだけを見るのではなく、この変化で中長期的に追い風を受ける企業・業種はどこか、"構造的な受益者"を見極めることが大事だと思いますよ」(松本氏)
○不安を煽るニュースも無意味。インバウンド堅調の根拠
地政学リスクや不安をあおるニュースがインバウンド消費に与える影響について、松本氏は冷静な見方を示す。「不安材料が増えても、人の行動や交流はそこまでシンプルに止まらない」と指摘する。
その好例が、2025年夏に起きたできごとだ。「日本で巨大地震が起こる」という予言がアジア圏のSNSで拡散され、一部の国や地域ではパニック的に日本旅行のキャンセルが相次いだ。
しかし、結果として日本全体の訪日客数はどうだったか。一時的な落ち込みはあっても、年間を通せば過去最高ペースで増え続けたのだ。データ上、ある国・地域がブレーキを踏んでも、すぐに別の地域がその穴を埋め合わせるという、日本への観光需要の強固な構図が見えている。
「人は本能的に"怖い話"が好きです。『地震予言』『戦争リスク』『中国が日本に制裁』といったニュースは拡散されやすい。
続けて、松本氏は「今回の中国の注意喚起もたしかにインパクトはありますが、同時に"日本は安全でおもしろい国だ"という確固たるイメージが、特に欧米や他地域で強まっている面もあります」と語る。
○"どの株が上がるか"より、いかに相場に居続けるかが大事
では、個人投資家はこのニュースをどう投資判断に落とし込めばよいのだろうか。
地政学リスクのニュースに触れると、「どの銘柄が上がるか」という"予測"に走りがちだ。だが、松本氏はその姿勢に警鐘を鳴らす。
「私は『未来を当てること』にあまり重きを置いていません。どのようなシナリオになっても市場から退場しないように準備しておくことのほうが、はるかに大事だと考えています」(松本氏)
そのうえで松本氏は、日本株のインデックスや安定配当株を「コア」としつつ、「サテライト」として二つの方向性を挙げる。
「一つは、今回のニュースで短期的に売られすぎたインバウンド系の優良株。中国からの客にどれだけ依存しているかだけでなく、欧米や東南アジアからの観光客もどれくらい取り込めているかといった、客層の広がりを見ることが重要になります。もう一つは、防衛・サイバー・半導体製造装置など、安全保障やサプライチェーン再構築の流れの恩恵を受けるセクターですね」(松本氏)
大事なのは、ニュースを株価にとってプラスかマイナスかだけで判断しないことだ。『このできごとで、世界のお金の流れや企業の投資先がどう変わるのか』まで考えるべきである。地政学リスクが当たり前になった時代に日本株と付き合ううえで、それが一つのスタンスと言える
短期的な材料に振り回されるのか、それとも、テーマを見極め、仕込むチャンスとして活用するのか。その違いが、数年後のパフォーマンスの差となって表れてくるのだろう。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら











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