Inter Beaujolais(ボジョレーワイン委員会)が、今年収穫されたブドウの状況と仕上がりについて、ボジョレーの取り組みとともに紹介している。

○「5のつく年」は早熟の年

ボジョレーでは今でも多くのブドウが手摘みで収穫され、約1か月の間、2万人以上の人がブドウの収穫に携わる。
2024年と同様、栽培初期には一部「戦い」ともいえる厳しい天候に見舞われたが、その後は夏の暑さの中、"我が道を行く"成長を見せた。その結果、ブドウの成長は加速、早期成熟し、8月中の収穫開始につながった。これは醸造家の間で記憶に残るような良い年であり、ワイン愛好家も満足させた2015年の特徴とも共通している。つまり、2025年も深みのあるワインができあがることが期待される。
○ボジョレー・ヌーヴォー2025の気象条件

比較的冷涼な冬を経て、年初は気温・降水量とも平年並み。新芽を確認できたのは平均して4月6日だった。4月は暖かく、雨も多く降ったことでブドウの生育は順調に進んだ。5月もおおむね平年並みで、開花は2024年より8日早い、5月末に始まった。これは2015年・2017年・2018年のヴィンテージと似た傾向となる。

しかし、この期間、気候条件は極端なものだった。4月末には気温が35°Cに達する暑さを記録、6月初旬には100mmを超える大雨があった。また、6月1日には北部・南部の一部地域で雹(ひょう)が発生し、局所的に被害が出た。
よって昨年同様、生産者たちは、病害への対策に全力が注がれた。

6月後半から7月初旬には、猛暑と雨が降らない状況が続き、結果的に病害の発生率を抑え込むことができた。それにより、収穫直前の段階ではブドウの木は健全な状態に保たれた。

ブドウの実に糖分が蓄積し始める「着色期(véraison)」は、早い区画では7月14日の革命記念日の花火が上がる頃に始まった。これは"良い兆し"であり、平均では7月22日に始まった。これも2015・2017・2018年と同水準となった。7月末には恵みの雨が降ったが、一部で再び雹(ひょう)が降ることもあった。しかし、それにより土壌内の水分が補充され、ブドウが順調に成熟。そして8月の前半15日間は猛暑が続き、ブドウが急速に成熟、その後1週間の雨と気温の低下でブドウ内のバランスが整い、非常に高い品質を持つポテンシャルが見込まれた。
○ブドウの収穫量は少なめだが、品質に期待

SICAREXボジョレー研究所 醸造学者のベルトラン・シャトレ氏は、次のようにコメントを寄せている。

「早熟の年は、ボジョレーにおいて高品質のしるしとされます。ただし、8月の成熟が早い分、迅速な対応と柔軟な判断が求められます。
実際、春の降雨や6月の猛暑など、このブドウ栽培のシーズンを通して、常に柔軟な対応が必要とされてきました。マチュレーション・ネットワーク(熟成観測ネットワーク)は、こうした先読みの作業を支援し、すべての区画における最適な収穫時期を判断するために、醸造家をサポートしています。今年のブドウは非常に健全で、理想的な衛生状態。8月後半に気温が落ち着いたことにより、早い収穫では難しいとされる段階的な収穫もできるようになり、ブドウが糖度だけでなく全体的に十分に成熟できる時間を確保できました。また醸造家たちが目指すワインのスタイルに合わせて適切な区画を選ぶ時間を確保できました。酸と糖のバランス、フェノール成分の組成はいずれも非常に良好で、今年のブドウで造るワインはヌーヴォーだけでなく、赤白問わず、長期熟成型のワインも高品質なものが期待できます。」

また、インターボジョレー会長のジャン=マルク・ラフォン氏は次のように述べている。

「ブドウの木は健全で、太陽の光をたっぷり浴びた果実で、そして糖と酸のバランスは完璧です。この収穫が、ガメイとシャルドネという象徴的な品種を通じて、ボジョレーの多様で豊かなテロワールをお客様にお届けできることを確信しています。」
○ブドウ成熟を追跡するマチュレーション・ネットワーク

マチュレーション・ネットワーク(熟成観測ネットワーク)は、今年で34年目を迎える。ブドウの色づき(véraison)が25%進んだ段階から、週2回、約200人の生産者が30の観測センターでブドウを計測・観察・分析する。これらのサンプル採取により、ブドウの成熟度合いを綿密に追跡し、最適な時期に収穫することが可能となる。ワインの品質にとって極めて重要な要素となっている。

このネットワークには176区画のガメイ、61区画のシャルドネが参加しており、これらの採取結果は、ネットワークを統括・運営するローヌ農業組合(Chambre d’agriculture du Rhône)に送られる。
収集されたデータはまとめられ、分析されたうえで、栽培家や関係者に提供される。こうして得られる情報は、追跡と意思決定を支援する、他に類を見ない貴重なツールとなっている。

このネットワークを補完する形で、SICAREXボージョレによって13区画がさらに詳細に追跡調査される。ここでは酒石酸とリンゴ酸、カリウム、アンモニア性窒素、アントシアニンポテンシャルなどの分析が行われ、最終的に「色指数(indice couleur)」が算出される。
○新世代のボジョレー「Beaujolais Nouvelle Génération」

「ボジョレー・ヌーヴェル・ジェネラシオン(Beaujolais Nouvelle Génération)」とは、単に新しい世代のワイン生産者(ヴィニュロン)を指すものではない。それは、ここ数年にわたるボジョレーの再生であり、生産者、協同組合、ネゴシアン(仲買業者)が共有する活力と現代的なビジョンを意味している。

この取り組みは、ボジョレー・ワイン全体のレベルアップを目指す強い意志によって支えられており、地域のすべての関係者を結束させ、「ボジョレー・デクセプション(Beaujolais d’Exception)」、すなわち「新しい偉大なテロワール・ワイン」というカテゴリーを強化し、テロワールの個性を生かした新たな銘醸ワインの創出にもつながっている。

具体的には、ブドウ畑の特定区画の主張、「Premiers Crus」認定申請、地理的補足呼称(DGC)における「Pierres Dorées」の申請、各村名の表示価値を高めるための共同プロジェクトなど、さまざまな取り組みが進められている。また同時に、あまり知られていないボジョレー・ブラン(白ワイン)を広く紹介しようという多様化への意欲も表している。
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