道でつまずいたり、動作が遅くなったと感じることはありませんか? 実はそれ、筋力の低下だけでなく「脳の老化」が原因です。この記事では、脳の老化について研究してきた遠藤英俊氏が人生100年時代を元気に楽しむための方法を解説した『こうして脳は老いていく』(著者: 遠藤英俊/アスコム)から一部を抜粋して紹介します。


今回のテーマは『脳は酸化の影響を特に受けやすい臓器』。
○脳は酸化の影響を特に受けやすい臓器

脳を老化から守るには食事にも気をつけましょう。キーワードは、抗酸化、抗炎症、抗アミロイドです。どんな食事が効果的なのか、ひとつずつ紹介することにしましょう。まず、抗酸化です。

脳は、私たちの体の中でも特に酸化の影響を受けやすい臓器です。

なぜなら、脳の重さは体重のわずか2%ほどしかないのに、体全体の20%もの酸素を使うからです。

この酸素が使われる過程で生まれるのが、「活性酸素」。

活性酸素は、本来はウイルスや細菌を退治する役割を持っていますが、増えすぎると脳の神経細胞を攻撃するようになります。この攻撃を「酸化」といい、ダメージを受けることを「サビる」と表現することがあります。

しかも、脳は酸化されやすい性質があるうえ、活性酸素を抑える力が他の臓器に比べて弱いため、ダメージを受けやすいのです。

脳を酸化から守るのが、抗酸化作用のある食事です。


抗酸化作用のある食べ物はたくさんありますが、私のおすすめは、カレーです。私のクリニックの患者さんにも好評で、継続率の高い習慣になっています。

カレーに欠かせないスパイスであるウコン(ターメリック)に含まれるクルクミンという成分は、強力な抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、脳の神経細胞を守る効果が期待されています。

シンガポールの研究では、週1、2回カレーを食べる人は認知機能テストの成績がよく、動物実験でもクルクミンがアルツハイマー病の原因となるアミロイドβというタンパク質の蓄積を抑えることがわかっています。

ワンポイントアドバイスとしては、カレーに黒胡椒を少し加えることです。クルクミンの吸収がぐんと良くなります。

高齢になるとカレーをつくるのが面倒に感じるかもしれませんが、レトルトでも十分効果が期待できるので、週に1回はカレーを楽しんでみてはいかがでしょうか。

もうひとつのおすすめは、シークワーサー。沖縄発祥の香り高い酸っぱい柑橘系の果物です。

シークワーサーには、ノビレチンという抗酸化作用の強い成分が特に果皮に多く含まれています。このノビレチンは、神経細胞を保護し、記憶力や学習能力の低下を抑える可能性があると、九州大学や琉球大学の研究で示されています。

果汁を飲むだけでなく、皮をすりおろしてサラダや魚料理にかける。
酸っぱいものが苦手な場合は、果汁をハチミツや炭酸水で割ると飲みやすくなります。

他のおすすめとしては、緑茶。

緑茶に含まれるカテキンという成分は、強力な抗酸化作用で脳の酸化ストレスを軽減します。1日2~3杯を目安に、70~80℃のお湯で淹れると、カテキンの効果を最大限に引き出せます。

カフェインが気になる人は、夕方以降は控えめにしましょう。

赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールは、脳の血管を守り、認知機能の維持に役立ちます。ただし、飲みすぎは逆効果なので、1日グラス1杯程度に抑えること。アルコールが苦手な人は、赤ブドウやブドウジュースでも似た効果を得られます。

ブルーベリーやサーモン、くるみ、ブロッコリー、ダークチョコレート(カカオ70%以上)なども抗酸化作用が豊富な食べ物です。

大切なのは、特定の食材に頼りすぎず、色とりどりの食材をバランスよく食べることです。週に1、2回のカレーやシークワーサージュース、緑茶を楽しみながら、毎日の食事に少しずつ取り入れてみてください。

○『こうして脳は老いていく』(著者: 遠藤英俊/アスコム)

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