前回は融資口数の多寡について考察いたしました。今回はデットに関するガイドラインの変遷と深化について情報を整理します。
第46回の記事ではEBITDA有利子負債倍率に焦点を当てて適債基準、リスク管理チェックリスト、ローカルベンチマークの3つのガイドラインを取り上げましたが、他にも参考になるものが存在しますので表にまとめました。
具体的な財務指標とその善し悪しの判定基準を数値として示していないガイドラインは、リスク管理チェックリスト・金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕・中小企業の会計に関する基本要領です。
リスク管理チェックリストには、金融機関が融資先の企業の債務者区分(正常先・要注意先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先)を判定するにあたり、どのような組織構成と手順を踏む必要があるのかについてルールが書かれています。企業の財務担当者が金融機関の行動を推測するにあたり、参考にすることができます。
金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕には「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」に関する記述があり、例えば2期連続赤字に陥った企業が経営を再建する際にどのような計画を立てればよいのか指針が示されています。
「中小企業の会計に関する基本要領」の適用に関するチェックリストには決算書を作成するときのチェックポイントが記載されています。
なお、「中小企業の会計に関する指針」というガイドラインが存在しますが基本要領とは別個のものです。
次に、確認対象となっている財務指標をガイドライン毎に整理します。
・適債基準/特定社債保証https://www.cgc-tokyo.or.jp/institution/needs.files/cgcshibosai2022-9.pdf
・経営者保証に関するガイドライン/「経営者保証ガイドライン対応保証」資格要件確認シートhttps://www.chiba-cgc.or.jp/static/pdf/download/documents/gl_kakuninnshi-to.pdf
・ローカルベンチマーク/ローカルベンチマークシートhttps://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/tool2022r5.xlsm
・スタートアップ創出促進保証制度/ガバナンス体制の整備に関するチェックシートhttps://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2023/dl/check_sheet.xlsx
・予兆管理の着眼点
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/monitoring/report/250327report03.pdf
スタートアップ創出促進保証制度(SSS保証)のガバナンスチェックは創業融資の実行後3年経過したタイミングと5年経過したタイミングで確認を受ける仕組みなので、融資審査時に債務超過となっていない前提が隠れていて、自己資本比率が対象となっていない特殊な位置付けになっています。
適債基準をベースとしたシンプルな建付けで評価する時代が長く続いていましたが、ローカルベンチマークが登場してから事業性を多角的に評価するアプローチに変化したことが伺えます。また、補足情報になりますが「経営者保証に関するガイドラインの活用のための参考ツール」のExcelファイルには、決算書上で特に着目すべき勘定科目が図示されています。
予兆管理の着眼点は2025年3月に中小企業庁から公表された最新の取組です。金融機関がより早期に事業者の経営悪化の予兆を把握し、事業者の状況を精査の上で必要な支援を講じていくことが狙いです。裏を返せば、予兆管理の着眼点で例示されている財務指標について企業は金融機関から真っ先に質問されることになります。赤字企業を早期検知することが目的となりますので、当然スタートアップも対象として包含されます。予兆管理は「簡易診断」「通常診断」「高度診断」の3段階で構成されます。
簡易診断は、最低限の情報(決算書・試算表等の勘定科目)で事業者の経営悪化の予兆をより早期に検知していきます。「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」がベースになっています。
指標例:売上高/粗利額又は営業利益/現預金/純資産額/棚卸資産/仮払金/未払金
通常診断は、様々な角度からの情報(財務分析指標や財務諸表以外の情報)を組み合わせながら、より的確に予兆を検知していきます。「ローカルベンチマークシート」がベースになっています。
指標例:売上高増加率/営業利益率/労働生産性/自己資本比率/営業運転資本回転期間/EBITDA有利子負債倍率/口座入出金状況/税金・社会保険料の滞納/主要取引先の支払状況/取引先の経営状況/従業員の入退社状況/滞留在庫の状況
高度診断は、AI活用も含めたDX/IT化の進展等の下で得られた情報で行われる精度の高い診断と定義されており、内容例として売掛債権・仕入債務の期日等を踏まえた将来キャッシュフロー/デフォルトアラート/粉飾アラート/定性情報アラートの4項目が挙げられていますが、具体的な基準は今後提示されると見て差し支えないです。資金繰り表以外にまだ公的な型ができていない状況で、デフォルトアラートはCRDの枠組が活用されると想定されますので、今のところ企業側が追加で準備する資料はないと予想しています。
予兆管理の判定基準については、2つの考え方が示されています。ひとつは業界平均値との乖離度合で、無料では日本政策金融公庫が公表している「小企業の経営指標調査」を、有料ではCRD協会・帝国データバンク・東京商工リサーチ等のデータを活用することが推奨されています。もうひとつは過去決算/経年推移での増減比較で、会計ソフトから出力した3期比較財務諸表・5期比較財務諸表やローカルベンチマークの財務分析シートを使うことになるでしょう。
予兆管理が融資申込に与える影響については、社会保険料納入証明書の提出が挙げられます。従来は商工中金以外の貸し手から徴求されることは稀でしたが、今後は提出する機会が増えると予想されます。証明書の申請方法については日本年金機構のWebサイトの納入証明書・納入確認書のページをご参照ください。
デットに関するガイドラインの変遷と深化についての解説は以上です。次回は政策金利上昇に伴う融資金利の反応について検討します。











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