北海道電力 総合研究所 環境技術グループの原田和夫 理学博士が、2025年度 電機工業技術功績者表彰(日本電機工業会主催)で優良賞を受賞した。
表彰の理由は、原田氏が家電メーカーと共同で進めた「野菜・果物の鮮度保持用LED機能を備えた冷蔵庫」の開発だ。
じゃがいもの緑化を防ぐ照明装置「ポテライト」
原田氏が開発した「ポテライト」は、明るい環境下でもじゃがいもの緑化を抑制できるように設計された照明装置だ。
白色光と赤色光を組み合わせて照射することで、明るさを確保しながら緑化反応を抑える仕組みを持つ。この技術はじゃがいもだけでなく、アスパラなど他の農作物の品質保持にも応用できることが確認されている。
開発のきっかけは、「じゃがいもの芽が出て困るので、電気で何かできないか」という農業団体からの相談だったという。
北海道のじゃがいも貯蔵庫では、時間経過と共に作業灯の光でじゃがいもの表面が緑化し、食中毒の原因物質が蓄積することから出荷できなくなるケースも多く、フードロスの一因となっていた。
北海道は国内のじゃがいもの約8割を生産しており、じゃがいもは長期保存が可能な作物である。貯蔵中の光による緑化を防ぐ技術の開発は、生産現場にとって重要な課題だった。また、現場では倉庫を暗く保ちながら作業を行うことが多く、安全面や作業効率の面でも負担があった。
原田氏はこうした地域の課題を解決するべく、光に関するこれまでの知見をもとに、白色光に赤い光を組み合わせて照射する方法を検討してきた。
同氏は「赤い光には緑化を抑える作用があることを見出し、これがじゃがいも貯蔵庫に使用できないかと考えました。
原田氏は、入社当初から“電気を光として使う技術”に関心を持ち、専門書を読んで知見を深めていたという。光の当て方や照射時間などを変えながら、最も効果の高い条件を探る実験を繰り返した結果、明るさを保ちながら緑化を抑制する仕組みとして照明装置「ポテライト」を完成させた。
開発はすぐに形になったわけではなく、最初の2~3年は協力してくれた農協倉庫の横にある小さな部屋で実験を繰り返した。3年目にようやく倉庫を使っての試験に進み、さらに2年間のテストを経て製品化に至ったという。
原田氏は、「じゃがいもは年に1度しか収穫期がないので、1年に1回しかデータが取れません。結果を確認して改良なども加え、また翌年に試すという繰り返しでした」と研究の難しさを語った。
完成した「ポテライト」は、緑化を抑制しながら、馬鈴薯貯蔵庫の作業環境を改善した。現在は北海道内の農協の約2割で導入が進み、全国的にもお菓子メーカーの倉庫などに活用が広がっている。
「ポテライト」の応用で冷蔵庫を開発
ポテライトの開発で得られた光利用の知見は、その後の製品開発にも応用された。
家電メーカーと共同で、野菜や果物の鮮度を長く保つための照明技術として発展させ、冷蔵庫の野菜室に「鮮度保持用LEDライト」を搭載。このライトの光が野菜や果物の光合成を促し、エチレンガスの発生を抑えることで、栄養分の増加や軟化・腐敗の防止を図るとともに、色鮮やかさ・みずみずしさを長持ちさせる仕組みを実現した。
実際に開発された冷蔵庫では、じゃがいもの発芽を約30日間抑制するほか、イチゴやトマトの軟化を防ぎ、野菜や果物のビタミンC量の増加も確認されている。また、野菜の重量減少や葉物野菜の緑色低下なども抑制される。購入時の状態をより長く維持できる結果となり、こうした成果が評価されて今回の電機工業技術功績者表彰・優良賞につながった。
北海道電力 総合研究所の取り組み
原田氏が所属している北海道電力 総合研究所は、発電所に関連する化学分析など、電力会社としての基礎業務を担う一方で、地域と連携した研究開発にも力を入れている。
同氏が所属する環境技術グループでは、前述したポテライトの開発のほか、石炭灰の有効利用やブルーカーボン事業の検討、未利用バイオマスの燃料化など、エネルギーと環境に関わる多様なテーマに取り組んでいる。
その中でも、三笠市と連携して進める未利用バイオマスの燃料化は、地域資源を生かした実証研究の一つだ。
三笠市で試験栽培されているジャイアントミスカンサス(草本系バイオマス)を地域特産のメロンの残渣を混ぜ合わせたブリケット燃料を他の企業と共同で試作。研究所では、燃料化の過程で原料の乾燥や細断といった加工を行い、熱分析室のCHNメーターやカロリーメーターといった装置を使って、燃料の成分や発熱量を分析している。
この研究を担当する環境技術グループの佐藤良昭氏は、「この燃料開発は、地域とともに新たな価値を創造し、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて挑戦する取り組みです。ほくでんグループが掲げる“地域共創・地域課題の解決”と“北海道におけるエネルギー全体のカーボンニュートラル”の方針に沿って進めています」と語った。
北海道電力は2050年カーボンニュートラルの実現をビジョンとして掲げている。多くの企業が自社の脱炭素化を目指す中で、同社は北海道全体でのカーボンニュートラルの達成を目標としている。
そのため、研究開発も電力事業の枠を超え、農業やバイオマスなど地域に根ざした分野へと広がっている。自社の技術を地域の力に変えていく取り組みは、北海道全体の未来づくりに向けた活動として、今後のさらなる発展が期待される。











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