鯖江の実力を体験する「さばえめがね館」

国内のメガネフレームの95%以上を生産する世界でも有数の「メガネのまち」が福井県の「さばえ(福井市・鯖江市)」だ。映画『おしょりん』などでご存知の方も多いのではなかろうか。

今回訪れた「さばえめがね館(東京店)」は、そんな“さばえ”で作られたメガネフレームを専門で取り扱うメガネ販売専門店。
さばえめがね館のオプティカルアドバイザー 杉本弘毅氏にオススメの鯖江産メガネを案内してもらった。

フレームだけで選ばず、レンズとのバランスを重視してほしい

コンタクトレンズやレーシックが普及したいまも、メガネを好む人は多く、メガネの形状にも大きな変化はない。しかし、消費者の生活スタイルの変化から、メガネの選び方は変化してきている。

「かつては面長の人には横長のデザイン、四角い顔の人には丸いデザインという、顔の形と逆の印象を与えるメガネを選ぶのがセオリーでした。現在は顔の形で決めることは少なくなり、お客さまの好みや趣味趣向に合ったメガネをオススメすることが多いです」(杉本さん)

このため、来店客とのコミュニケーションは欠かせないと杉本さんは言う。特に重要なのは、いま使っているメガネを気に入っているかどうか。気に入っていても気分を変えたいのであれば、まったく違うデザインをすすめることもあるそうだ。

杉本さんはメガネが似合うか似合わないかを決める重要なポイントとして、フレームだけでなくレンズも含めてトータルで考えることを挙げる。

「視力の矯正はメガネ選びのうえで欠かせない要素です。フレームだけで選んでしまうと、厚いレンズを入れたときにお客さまの期待とずれたデザインになり、結果的に見づらいとか装着しづらいメガネになってしまうこともあります」(杉本さん)

また、メガネ店や店員によってどこまで重視するかが異なると前置きしつつ指摘するのは、メガネをかけたときにレンズの中央に自分の瞳がくるのが良いということ。

「レンズの光学的な中心と瞳の位置が近いほど視界が良くなり、ほかの人からの見たときの印象も格好良くなります」(杉本さん)

ビジネスにオススメ、実用性とオシャレを兼ね備えた3本

杉本さんがビジネス向けにオススメしてくれたメガネを紹介しよう。掛け心地の良さに定評のある「ドゥアン」、槌目仕上げが美しい「オリエンス」、モダンさとレトロさが融合する「丹羽雅彦」の3本だ。

ドゥアン(dun)- ゴムメタルの“戻り”で支える掛け心地

ドゥアンは軽くて弾性のあるプレミアムチタン合金「ゴムメタル(GUMMETAL)」をテンプル(つる)や、ヨロイと呼ばれるフロント両端の張り出し部分などに使用。しなやかで強度が高く、「世界一掛け心地が良い」と評価する人も少なくないメガネだ。

ゴムメタルはトヨタ自動車の研究機関である豊田中央研究所が開発したという素材。メガネ業界では国内の5メーカーのみが採用を許可されていて、海外企業で採用しているメーカーは存在しない。このため、ドゥアンのようなゴムメタルを採用するメガネはMade in Japanの証しとも言えるのだ。

「ドゥアンは中にスプリング(サスペンション)が入っていて、軽くはないものの掛けやすく、使う人の個性を引き立てる存在感があります。横のテンプルにはカーボンを使用しています。スーツスタイルに似合うので仕事のできる男性の雰囲気を出したい人にもオススメです」(杉本さん)

オリエンス(Oriens)- 槌目×精密加工、1本ごとに異なる表情

オリエンスは、マシニングセンタによる精密な金属加工と、職人が1つひとつ金槌で加工する槌目仕上げを融合し、永く使う(育てる)ことで世界で1つだけの美しい打痕模様をデザインに取り入れているメガネだ。

フロントの部品はチタンをベースにした冷間一体プレスで、フロントを取り付けるためのパイプはパイプ形状に切削。これによりロウ付けを不要にしており、つるや鼻パッドが外れる「ロウ離れ」の心配がない。

テンプルの部品には柔軟性に優れたベータチタン材を採用。前方と後方の曲がるタイミングが異なる二段構造になっているため、軽い掛け心地としっかりしたフィット感を両立している。


「彫金のようなレトロ感のある技術を継承した経年美化デザインは、高齢者だけでなく若者にも人気があります。フォーマルでもカジュアルでも合わせられるお洒落な一品です」(杉本さん)

丹羽雅彦 - シュリンク塗装ルとカシメ蝶番、手仕上げの説得力

丹羽雅彦は鯖江市のメガネ職人が自身の名前をブランドにした「作品」と呼べるメガネだ。1本ずつ時間をかけてていねいに仕上げるため、数量が限定されていることで知られる。機械よりも正確と言われる手仕上げが魅力で、メタルとセルを組み合わせたコンビのようなメタルのフレームは見る者に独特の印象を抱かせる。

テンプルには埋め込み型の蝶番ではなく、ピンでカシメを貫通させるクラシカルな蝶番を採用。現代的でありながらヴィンテージ感もあるユニークなメガネになっている。

「昭和初期のクラシックなデザインを現代風にアレンジして、シュリンク塗装など新しい手法を取り入れて作られています。チタン製のフレームはバネのように広がって挟むので、かけやすく落ちにくいです。適度な圧力で顔が細い人でもきちんと挟んでくれます」(杉本さん)

顔の一部を仕立てる。凛と見える1本を

自分に合ったメガネを選ぶには店頭で実際に装着して鏡を見るだけでなく、スマホで自撮りして正面以外の角度からも「メガネを掛けた自分」を見てみるとよい。時間に余裕があればその日のうちに購入するのではなく、撮影した写真を家族や友人に見てもらって反応を確かめるのもオススメだ。メガネは顔の一部。
ぜひ自分を引き立て気分を上げてくれる一品を選んでほしい。

著者 : 諸山泰三 もろやまたいぞう PC雑誌の編集者としてキャリアをスタートし、家電流通専門誌の編集や家電のフリーペーパーの編集長を経験。現在はPCやIT系から家電の記事まで幅広くカバーするフリーランスのライター兼編集者として東奔西走する。地元である豊島区大塚近辺でローカルメディアの活動にも関わり出した。好きなお酒にドクターストップが掛かり、血圧を下げるべく、体質改善に努める日々を送る。 この著者の記事一覧はこちら
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