麺と湯気の向こうに、世の中が見える……。その刹那を追いながら、街のラーメンを観測し続けてきた井手隊長。
前回の連載は「700円以下で楽しめるラーメン99杯」を紹介し、幕を閉じた。

あれから1年、今のラーメン業界で巻き起こっている新潮流「街ラーメンの進化」を紹介していく新連載を開始する。記念すべき第1回は、ファミレスの手軽さで本格中華の味を提供するバーミヤンの「麻辣湯」だ。

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○バーミヤンが選んだ次の一手は“麻辣湯”

中華専門のファミリーレストランとして、「バーミヤン」はラーメンに力を入れている。担担麺、酸辣湯麺、広東麺、そしてご当地風アレンジまで、ファミレスの枠を越えた多彩さが注目されてきた。そんな同チェーンが次なる看板メニューに選んだのが、いま最もホットな“麻辣湯”である。

今年の流行語大賞にノミネートされるほど注目を集めるこのジャンルを、実に早いタイミングでメニュー化したのが「バーミヤン」の面白さだ。先行して発売された「小龍包入り!紅白団子の麻辣湯」が瞬く間に人気メニューになったことからも、同社の嗅覚と商品開発力の高さがうかがえる。

この麻辣湯の完成度はかなり高い。動物系をベースにしつつ、山椒の痺れと唐辛子の辛味を重ね、バランスの良い辛ウマな一杯に仕上げている。刺激を押し出しながらも、スープのコクを決して損なわず、具材の選び方も独特で、まさにここでしか食べられない麻辣湯として成立している。麺を中華麺と春雨から選べる自由度も、ユーザーの多様なニーズをとらえており、トレンドメニューを単発の話題作として終わらせない工夫が見て取れる。


○アワビ3枚、1,400円台の衝撃

その麻辣湯シリーズの最新作が、今回レビューする「やわらか鮑の麻辣湯」だ。商品名のインパクトで想像がつく通り、主役はアワビ。なんと贅沢に3枚もトッピングしてしまったという強気の一杯である。価格は1,299円(税込1,429円)。リーズナブルなバーミヤンにおいては最高級クラスになるが、「アワビ3枚の麻辣湯が1,400円台」と考えれば、むしろ常識が揺らぐレベルの破格だ。価格と内容のバランスが一瞬でバグる、なかなかファンキーな商品である。

肝心のアワビは辛味の中で存在感を放っていて美味しい。海鮮を使った麻辣湯は珍しくないが、アワビという高級食材をファミレスでここまで自然に組み込んでしまった思い切りの良さには乾杯だ。

○万人に届く辛ウマ設計、その完成度

そして、ベースとなる麻辣湯のスープがやはり抜群に旨い。旨味・辛味・痺れの三位一体、その芯がしっかりしているからこそ、アワビという豪華食材が浮かずに一杯の中に調和している。「バーミヤン」らしい万人が楽しめる辛さ設計も健在で、辛いもの好きはもちろん、普段あまり辛さを求めない層でも美味しさを感じられる絶妙な着地点に仕上がっている。

もともと同店はラーメンメニューが強かったが、そこに「麻辣湯」という新たな武器が加わり、ラインアップはますます盤石になった。
流行に乗るだけでなく、品質でしっかり勝負し、さらにアワビというサプライズでヒットを確定させてくるあたりに、「バーミヤン」の本気が見える。中華ファミレスの可能性をさらに押し広げた、2025年の注目作である。

井手隊長 いでたいちょう 全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。メディア出演、ラーメンの商品監修など多方面で活躍中。ラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。本の要約サービス「フライヤー」執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。 著書に『できる人だけが知っている「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム新社)、『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(早川書房)がある。 ブログ:「隊長日誌(ラーメンミュージシャン井手隊長の日記)」 YouTube:「ラーメンミュージシャン井手隊長の 今3時?そうねだいたいね」 この著者の記事一覧はこちら
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