岡山県の南端・玉野市が11月14日、「せとうちブルーエコノミーサミットin玉野」を開催。海洋資源を活用しながら新しいビジネスの可能性を探り、経済と暮らしの発展を目指すため、瀬戸内や岡山県外の沿岸地域で注目を集めるスタートアップ企業などが集い、パネルディスカッションや交流会が実施された。


○"ブルーエコノミー"を多角的に議論

玉野市は岡山県の南端・瀬戸内海沿岸に位置し、瀬戸内の玄関口として知られる。このほど同地で初開催された「せとうちブルーエコノミーサミットin玉野」は、海洋資源を持続的に活用しながら経済や暮らしの発展を目指す"ブルーエコノミー"をテーマに設定。

瀬戸内や県外の沿岸地域で注目を集めるスタートアップ企業や有識者が集結し、瀬戸内から考えるブルーエコノミーの可能性についてのトークセッションが実施された。

冒頭、玉野市市長の柴田義朗氏は「海と港がある玉野市は古くから船が行き交う街。そして造船業や塩づくりといった産業で発展してきた街です」と挨拶。

「まさに海と切っても切り離せない、海と共に発展してきた街ですが、いま新たな流れが起きようとしています。日本最大級の蓄電池工場が立地し、また、直島・豊島といった瀬戸内のアートの島が世界的に注目され、国内外からたいへん多くの観光客の方々が訪れています」と紹介した。環境を守りながら、いかに地域の経済的な価値を高めていくのかが大きな課題になっているという。

「私自身、人の流れやビジネスチャンスといったことも含めて、この地域の可能性を感じつつ、具体的にどういったかたちで取り組みを進めていくべきか、研究・検討していくことが大切な時期だと感じています。今日は皆さんと一緒に各分野の専門の方々、地元の方々からのお話をうかがうことで、この街をさらに発展させていくためのひとつのきっかけ、スタートにしたいと思います」(柴田氏)

トークセッション前半では地球環境戦略研究機関(IGES)主任研究員・金振氏、ナイカイ塩業株式会社取締役管理部長・大内雄一郎氏、株式会社PowerXManufacturing管理部長・古山雄一氏が登壇。「ブルーエコノミーとは何か? 瀬戸内の現場から学ぶ持続可能な海と経済成長の両立」と題し、プレゼンやパネルディスカッションが行われた。

後半では「域内外のプレイヤーと探る"ゼブラ企業"を育む沿岸地域の事業環境」と題して、イノカ取締役・松浦京佑氏、オフリバ代表取締役・松永浩行氏、玉野市観光協会専務理事・金川洋一氏が登壇した。


登壇者たちはそれぞれの企業・団体の事業や取り組みをプレゼン。パネルディスカッションでは「瀬戸内に眠る市場ポテンシャル」「生物多様性を推進するルールづくり」「玉野市により多くの観光客が立ち寄るためのきっかけづくり」などを多角的に議論した。

ビーチスポーツ普及団体の参加者からは「海岸の清掃活動をブルーエコノミーに接続していくために必要なことは」との質問も。金氏は一例として「スポGOMI」という競技について紹介した。

「ゴミ問題を解決するためのイベントはいろいろあります。例えば「スポGOMI」は3人1チームで制限時間内に拾ったゴミの総量をポイントにして競うという競技です。ワールドカップもあり、今年9月には東京で第2回ワールドカップが開催され、33カ国が参加しました。こうしたイベントを主催し、拾ったゴミから二酸化炭素削減量を換算するなどしてポイントを市民に還元したり、イベントに関わる関係者にポイントを支給したりする地域還元の方法もあると思います」(金氏)

瀬戸内の玄関口・玉野をサステナブルなローカルビジネスの共創拠点として盛り上げるため、11月15日には複合型音楽・ライフスタイルイベント「SetouchiContemporary2025」が玉野市内で開催された。

伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら
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