マイナビと栃木県警は11月22日、宇都宮市瑞穂野地区市民センターで開催された「みずほのフェスティバル 教育文化講演会」にて、子どもを取り巻く犯罪・闇バイトの現状、そして保護者が知っておくべき安全なアルバイト選びについて解説した。
瑞穂野地区の小中学校の保護者ら約40名が参加し、近年はSNSを介した勧誘や若い世代が犯罪に巻き込まれる事例が増加していることから、地域全体の見守りと正しい知識の共有が重要だと呼びかけた。
○近年の犯罪の特徴と栃木での取り組み
最初に栃木県警察本部 生活安全部 生活安全企画課 犯罪抑止対策室の植嶋康雄氏と佐藤啓司氏が、近年の犯罪傾向と県内での取り組みについて説明した。県内の犯罪発生件数は平成15年に約4万件だったものが、令和4年には8,883件まで減少していた。しかし令和6年には約1万2,163件と再び増加傾向にあり、特に窃盗や特殊詐欺関連の事件が目立つという。
近年の犯罪件数増加の背景として、植嶋氏は大きく二つの要因を挙げた。ひとつは、コロナ禍が明けて人の動きが活発になり犯行の機会が増えたことに加え、コロナを機に地域の防犯活動が縮小してしまった点。もうひとつは、SNSの普及により犯罪グループの手口が変化し、若い世代が誘われやすい環境が生まれている点だ。犯罪抑止に効果的だった防犯ボランティア団体は、多い時で全国に1,424団体あったが、昨年は870団体まで減少している。人口減少や高齢化が進む中で、地域の見守り体制を維持することが難しくなっているという。
こうした事情を受け、植嶋氏は防犯のための取り組みとして「とちぎポリスアプリ」と「ながら見守り」を紹介した。
「とちぎポリスアプリ」は、地域の不審者情報や交通事故、熊の出没、窃盗被害などが地図に表示されるアプリで、どこで何が起きているかを確認することができる。植嶋氏は「ただ歩きながら“ここは危険かもしれない”と感じるだけではなく、実際に起きている事象を知った上で対応していただくことが非常に有効」と説明した。今年2月に開始した同サービスは、すでに約4万件程度ダウンロードされていると述べ、「50万件を目指したい」と保護者へ積極的な利用を呼びかけた。
続いて紹介された「ながら見守り」は、買い物や通勤、花の水やりといった日常の行動をしながら、防犯の視点を持って子どもや地域を見守るといった取り組みだ。宇都宮市では、この「ながら見守り」に協力できる市民を募集し、「宮を守り隊」として登録する制度を設けている。登録者には防犯グッズを配布するほか、自家用車のドライブレコーダー映像や自宅防犯カメラ映像を、事件発生時に警察・市と共有して、犯罪の検挙率の増加に繋げる仕組みも整備されている。
説明の中で特に強調されたのが、「早い段階での気づき」の重要性だ。子どもがタバコを吸い始めた、夜に帰宅が遅くなった、急に言葉遣いが荒くなった、こうした“違和感”が大きな犯罪の前触れとなる可能性があるという。植嶋氏は、「怒るのではなく、まずは“どうしたの?”と声をかけてほしい」と語った。大人が見ていることを伝えることが、犯罪から子どもを遠ざける予防になると訴えた。
○なぜ若者は闇バイトに加担してしまうのか
続いて植嶋氏は、近年の闇バイトの巧妙さについて説明した。闇バイトの多くはSNSで募集され、「短時間で高収入」「簡単な作業」といった甘い文言で若者を誘い込む。しかし実態は、受け子・出し子、現金運搬、携帯端末の不正契約、銀行口座の受け渡しなど、すべて明確な犯罪行為だ。
若者が加担してしまう理由として、植嶋氏は“犯罪の全体像が見えない状態で一部の作業だけを任され、犯罪をしている意識が薄れやすいこと”を挙げた。例えば現金を受け渡すだけ・運ぶだけといった役割は、表面上は単純な作業に見えるため、犯罪の一端を担っていることに本人が気づきにくいという。
また、闇バイトは一度関わると抜け出しにくい構造を持つ。応募時に本名・住所・連絡先・家族構成・身分証画像の提出を求められ、辞めようとすると「家族に言う」「警察に知らせる」と脅されるケースも多い。海外拠点の犯行グループでは、暴力による拘束が行われていた事件もあり、闇バイトが決して軽い気持ちで踏み込めるものではない現実が示された。
植嶋氏は、お子さんを闇バイトから守るためには「コミュニケーションの時期が非常に大切」と話す。思春期、反抗期に入った中高生になってからではなく、それ以前の小学生・中学生の段階から、闇バイトの危険性を丁寧に伝えておく必要があるという。「スマートフォンを持たせるときには、『一日どれくらい使おうか』と一緒に決めたり、『アプリを入れる際には教えてね』など話し合ってほしい。ルールは親が一方的に決めるのではなく、お子さん自身に考えて決めてもらうことが大切です」と述べ、家庭内での対話の積み重ねが犯罪から子どもを遠ざける力になると強調した。
最後に植嶋氏は、「親だけで全て対応するのは難しい。家族だけで問題を抱えず、周りの人や学校の先生、警察にも相談してほしい。警察では事例を沢山持っているので力になれると思います」と呼びかけた。
○マイナビが解説する“闇バイトの特徴”
続いてマイナビ アルバイト情報事業本部 事業推進統括本部 カスタマーサクセス部 ユーザーサクセス課の影山知香氏が、求人情報に潜む闇バイトの特徴について解説した。
影山氏は、闇バイトの求人に共通する注意すべきポイントとして、以下の5点を挙げた。
UD(受け子/出し子)といった隠語が使われている
報酬が異常に高い
「運ぶだけ」「受け取るだけ」など、仕事内容が曖昧
「10代男性のみ」「女子高生限定」など、性別・年代が限定されている
連絡手段がSNSに限定され、DMからTelegram(テレグラム)・Signal(シグナル)といった証跡の残らないアプリに誘導される
説明の中では、この注意すべきポイントを踏まえ、実際に闇バイトの求人例を模した“見極めクイズ”も実施された。例として紹介されたのは、「段ボールを運ぶだけの簡単なお仕事! 1案件につき3万円支給! まずはDMへ!」「すぐに稼げる! 10代男子限定、UDホワイト案件」といった、一見するとアルバイトらしく見えてしまう文言だ。しかし、実際には複数の危険サインが含まれており、参加者は真剣に見極めポイントを確認していた。
影山氏は、こういった注意点を踏まえ、「お子さんが安心安全にアルバイトを経験するためには、保護者の方や周囲の大人のサポートが不可欠である。容易に危険なことに巻き込まれないためにも、適切なコミュニケーションやサポートをぜひ意識していただければ」と呼びかけた。
○アルバイトには“将来につながる価値”がある
影山氏は続いて、アルバイトが持つ価値について説明した。アルバイトは単なる収入源ではなく、将来につながる多くの学びがあるという。
アルバイトを通じて、コミュニケーション力や協調性、問題解決力といった社会人スキルが身に付く。また、自分の得意・不得意を知るきっかけになることや、仕事に対する考え方や自己理解が深まることで、進路選択にも良い影響を与える。さらに、学生が就職活動でよく質問される“ガクチカ(学生時代に力を入れたことの略語)”として、面接の際にアピールするための経験にもなり、アルバイトが持つ多面的な価値が紹介された。
マイナビの調査によれば、就職活動でアピールする内容として最も多いのは「学業や研究活動、ゼミの経験」だが、次いで「アルバイト経験」が2番目に多いという。影山氏は、「アルバイトは未来につながる経験になる」と強調し、「何のためにアルバイトをするのか。
最後に、影山氏は「価値のあるアルバイト」をお子さんが安全に経験するために、アルバイトの応募から就業までの各フェーズで保護者が押さえておきたいポイントを紹介した。
まずは募集元と仕事内容の安全性。信頼できる求人媒体か、仕事内容が曖昧ではないかを確認することが大切だとした。また、労働条件の明確さも重要で、勤務時間や契約内容を必ず書面で確認してほしいという。
続いて、学業や生活とのバランス。学校でアルバイトの制限がある場合や、テスト期間との調整など、無理のない働き方を調整できることが望ましい。
さらに、給与明細の確認や相談先の把握といった給与・トラブル対応。そして日頃からのお子さんとのコミュニケーションが、不安や悩みに早く気づくきっかけになるとまとめた。
地域の防犯の現状やSNS型犯罪の広がり、アルバイト教育の重要性まで幅広く共有された今回の講演会は、家庭・地域・行政が力を合わせて子どもを犯罪から守る大切さを再確認する場となった。日々の見守りや声かけの積み重ねが、子どもたちの安全につながることが示された。
小野口 輝紀 この著者の記事一覧はこちら











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