あなたの身近にも、思わず背中を追いかけたくなるような"カッコいい女性"がいるはず。

11月27日、都内でそんな女性たちが一堂に会するセレモニー「ヴーヴ・クリコ 『ボールド ウーマン アワード 2025』」が開催された。
挑戦の裏にあるリアルな声に触れ、胸をつかまれた瞬間がいくつもあった。ここでは、その場で見えた彼女たちの本音と強さを紹介する。

今年で5回目となる「ヴーヴ・クリコ ボールド ウーマン アワード 2025」は、女性起業家の挑戦と成果を讃えるアワードで、「大胆さ(Boldness)」「洞察(Insight)」「継続性(Resilience)」「社会的インパクト(Impact)」の評価軸で受賞者の選出が行われた。また、審査は起業・経営・金融・クリエイティブなどの有識者および歴代受賞者によって実施された。
「ヴーヴ・クリコ ボールド ウーマン アワード 2025」受賞者発表の瞬間

そして迎えたこの日の受賞者発表。これからの活躍がより期待される次世代の女性リーダーに贈られる「ボールド フューチャー アワード」に選ばれたのは、ASTA FOOD PLAN 代表取締役社長 加納千裕氏。

「食品ロス」として数えられていないが、工場や生産地で商品になる前段階に捨てられている食品(残さ)に着目、「かくれフードロス」と名付けた加納氏。今の日本だけでも約2,000万トンあると言われている「かくれフードロス」の問題を解決するため、食品を10秒という短い時間で乾燥し、アップサイクルする技術を開発した。

これにより、本来経済的にも捨てたほうが良いとされていた食品の残さを、乾燥して食品に変えたほうが儲かる仕組みを作り出したという。

そんな加納氏が評価された点は大きく3つ。開発した技術は現代社会がかかえる大きな課題に真正面から答えるものであること、同業者が多い中での独自の技術開発とそれによって可能になることの線引きが明確なこと、技術開発にとどまらず機械からブランディングの設計を一貫して担っていること。

受賞を受けて、加納氏は「私の原動力は『期待されること』です。
ですので、今回の賞は次世代の女性の活躍につながってほしいという想いと同時に、私自身も引き上げていただいていると感じています。また、この受賞によってアップサイクルの取り組みが広がることを願っています」とコメントした。

また、次世代にインスピレーションを与える革新的女性リーダーに贈られる「ボールド ウーマン アワード」に選ばれたのは、ビジョンケア 代表取締役社長 髙橋政代氏。

髙橋氏は、iPS細胞による網膜の再生医療開発をリードしてきた。現在は、理研の網膜再生PJが終了し再生医療・遺伝子治療が一般的な治療となるよう事業化に取り組んでいる。

細胞治療の最先端研究における第一人者として変革をリードし、目の再生医療にフォーカスを当て、研究成果を大きな社会的インパクトの具現化につなげる姿勢が、まさに次世代の女性のロールモデルであると評価された。また、髙橋氏の不屈の精神と挑戦は未来の医療に不可欠で、今回のイノベーションが今後さらに世界をけん引することに強い期待が込められている。

受賞を受けて、髙橋氏は「こんなにおしゃれな賞を頂けてとても光栄です。私自身の受賞者紹介ビデオを見ながら『私が画面に映ってる! 』とうれしく思っていました」とお茶目な一面を見せてから、「たまたまアメリカに留学した際に感じた『自分が薬を作らなくてはならない』という一種の勘違いと責任感からすべてが始まりました」と語った。また、「いろいろな苦労や転換期を経験してきましたが、ビジネスの観点で受賞できたことがとてもうれしいです」と、研究者としてだけでなくビジネスパーソンとして評価されたことへの喜びを話した。
女性リーダーを突き動かす原動力とは?

受賞者発表の後に実施されたパネルディスカッションには、受賞した2名、審査員を務めたジャーナリスト兼エディトリアル ディレクターの木田隆子氏、メディヴァ 代表取締役社長の大石佳能子氏、タレント兼ウェルビーイングプロデューサーでLOVE GIVES LOVE社長のRIKACO氏、MHD モエ ヘネシー ディアジオのヴーヴ・クリコ ブランドディレクターの渡邉香菜子氏が登壇した。

あらゆる分野の第一人者が集まるこのセッションでは、「原動力」と「家庭と仕事との両立」について意見交換が行なわれた。


ファシリテーターの木田氏に改めて原動力について問われた加納氏は、30年ほど前の父の事業の挫折経験について語った。

もともと自身も父の経営する加熱水蒸気を使った調理器の会社に勤めていたがその事業が失敗に終わり、父も加納氏自身も会社から離れざるを得なかったという。当時これ以上失うものが何もない状態に陥ったからこそ、父の想いを引き継いで形にしたいという気持ちが強く自分を動かしたと、加納氏は語った。

また、同じく今年度受賞した髙橋氏は、原動力について「毎週外来で来られる目の前の患者さんを何とかしたい、助けたい、それだけです」と語った。

また、これまでの苦労について問われると、「『どうしてこんなに熱意をもって止めてくるんだろう』と思うほど反対されることが多くて、理化学研究所に勤めていたときは、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授に助けてもらったり、そんな山中教授でもあきらめかけて私が怒ったり......(笑) 朝ドラにできそうなくらいドラマがたくさんありました」と冗談交じりに話した上で、「壁にぶつかったとき、どうしてみんなやめてしまうのかと思います。横空いてるやんって思うんです」と伝えた。

目の前の人が分かってくれなくても、横を見ると分かってくれる人もいるかもしれない、という想いで壁を乗り越えてきたのだそうだ。

女性起業家を取り巻く環境と家庭との両立への本音

ヴーヴ・クリコが女性起業家の現状をまとめた国際調査「バロメーター」によると、女性起業家は、経済的に裕福になることよりも、自身の価値観や信念を実現することのほうが原動力となる傾向があるという。

これを受けて、髙橋氏は、家庭と仕事の両立について「あまり分けて考えていなかったです。細胞移植と保育園のお迎えと掃除、それぞれを並立のプロジェクトと考えていました(笑)」と話した。その上で、自分が担当するプロジェクトと、他の人に割り振ってお願いするプロジェクトに分けていたとのこと。
タレント・RIKACOが息子からもらった言葉

ゲストとしてパネルトークに参加したRIKACO氏は、自身のターニングポイントとなる瞬間について、「仕事」「家庭」「子育て」の何を優先するかを決断するときに、仕事を一旦横に置いてしっかり子育てをしたいと思ったこと、結果的に子育ての空いている時間で仕事をもらえたことを語った。


その上で、自身のブランドを立ち上げる経緯について、「息子たちにライフスタイルブランドの立ち上げを考えていることを話したとき、『今さらお金儲けに走らないで。これからは、子どもたちや人のため、地球のためになることをしてほしい』と言われて……。その言葉が背中を押してくれました」と話した。

また、RIKACO氏は「子育てが終わって、自分の時間が自由になった私たちミドル世代の皆さんに、この年齢だからこそ諦めず何かを始めてほしいです」とエールを送った。

今年のレセプションは、女性たちの挑戦の裏にある「リアルな声」がテーマだった。さまざまなアプローチで社会課題に立ち向かい挑戦する彼女たちには、ぐっと親近感がわくような本音と自分が信じたものを貫く強さがあるように感じた。
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