11月19日、英国王室御用達で知られるシャンパーニュ「ポール・ダンジャン」の3代目当主の来日記念イベントが六本木のステーキ店「六花」にて開催されました。

イベントでは3代目当主であるジャン・バティスト・ダンジャン氏と、栽培責任者のエリック・ダンジャン氏が登場。
メゾン(ワイナリー)の歴史と哲学、製法へのこだわりなどが語られました。

また、各キュヴェ(ワイン)の試飲と、六花の料理とのペアリングも楽しむことができました。

どんな話が語られたのか、そしてシャンパーニュの味わいはどうだったのか、レポートします。
○英国王室御用達シャンパーニュ「ポール・ダンジャン」とは

シャンパーニュは日本でよく「シャンパン」と呼ばれています。フランスのシャンパーニュ地方で厳しい規定を満たして生産されたスパークリングワインだけが名乗れる名称です。

ポール・ダンジャンは、もともとドン・ペリニヨンを造るモエ・エ・シャンドン社や、マム社といった有名なシャンパーニュメゾンにぶどうを販売する栽培農家でしたが、1947年には自らのシャンパーニュメゾンを設立。自社製品を販売し始めました。

現在ではダンジャン家の14人が携わる規模に成長しており、家族経営メゾンとしてはシャンパーニュでも最大規模。日本では、この日のイベントを主催する株式会社ソムリエ(旧社名:株式会社トゥエンティーワンコミュニティ)が約12年にわたり輸入しており、人気ワイン漫画『神の雫』で紹介されたことでも知られています。

登壇した3代目当主、ジャン・バティスト・ダンジャン氏によると、ポール・ダンジャンはシャンパーニュ地方のなかでも最南端となるコート・デ・バール地区に位置しているといいます。コート・デ・バールはもともとシャンパーニュのメインとなる地区からは少し離れた場所にあり、土壌も異なります。

近年ではそうした特徴に注目が集まっており、気鋭の若手生産者を次々に生み出してきました。
ポール・ダンジャンはそんな同地区で、70年以上にわたりシャンパーニュを造り続けてきた先駆者といえます。

栽培を担当するエリック氏によると、ポール・ダンジャンでは「リュット・レゾネ」と呼ばれる減農薬栽培を実践しており、除草剤は一切使用していないとのこと。代わりに、畑の表土を数センチ耕す方法で雑草対策を行っているといいます。

またエリック氏は毎日畑の状態を確認し、病気の兆候が見られる場合にのみ必要最小限の農薬散布を行うといいます。

こうした取り組みにより、ポール・ダンジャンは安定して高いクオリティのシャンパーニュを生産することに成功。その品質は世界中で認められており、英国王室御用達になっているほどです。
○ポール・ダンジャンの各キュヴェを試飲、家庭で楽しむなら?

この日はポール・ダンジャンが誇るシャンパーニュを六花の料理と共に試飲できました。

まず、ピノ・ノワールという黒ブドウ100%で造られた「カルト・ノワールNV」(税込8,415円)。黒ブドウ100%で造られるシャンパーニュは「ブラン・ド・ノワール」と呼ばれ、芳醇で力強い味わいとなります。このカルト・ノワールもその特徴がよく表れており、さらに30ヶ月以上の長期熟成により複雑さも加わっています。これぞシャンパーニュという完成度の高さで、前菜から魚料理、メインディッシュの肉料理まで幅広くマッチする味わいだと感じました。

ペアリングとして提供されたのは、野付天然ホタテと蕎麦の実のファーブルトンオシェトラ・キャビア。
ホタテとバター、蕎麦の実の香ばしさが見事にシャンパーニュと調和します。もし家庭料理に合わせるなら、個人的には蟹や海老を使った料理に合わせてみたいですね。

続いて「キュヴェ・’47」(税込18,590円)。47はメゾン設立年の1947年に由来しています。特徴的なのがソレラシステムを採用していること。これは言うなれば秘伝のタレのような“継ぎ足し”方式で、複数の年のぶどうから造ったワインをいくつも折り重ねるようにブレンドし、複雑さを演出する製法です。

カルト・ノワールと同じくピノ・ノワール100%で造られていますが、たしかに香りや味わいの複雑さはワンランク上を行きます。

合わせる六花の料理は、北海道産生筋子とフロマージュ・ブランのタルト。濃厚ないくらの塩気がキュヴェ・’47を引き立て、バターの風味香るサクサクのタルト生地が良いアクセントになっています。これはすばらしいペアリング。家庭ならちょっと良いお寿司に合わせるのはどうでしょうか。
○日本専売品の特別なキュヴェ「プレステージ・ロゼNV」

最後に「キュヴェ・プレステージ・ロゼNV」(税込44,000円)。
なんと、輸入会社である株式会社ソムリエの依頼で特別に造られた日本専売品とのこと。赤ワインと白ワインをブレンドする製法で造られたロゼシャンパーニュで、白ブドウのシャルドネを80%使用しており、フレッシュで繊細な味わいを追求したといいます。それでいて、黒ブドウのピノ・ノワールの力強さや骨格も同居しており、赤いベリー系の香りも感じられます。

今回合わせたのは、山形牛のヒレ肉と有東木本山葵。上品さと力強さを両立したロゼシャンパーニュだからこそ、山形牛の旨味をしっかりと受け止めてくれます。また、わさびの風味がシャンパーニュの清々しい泡とよくマッチしていました。

これだけの品質のロゼシャンパーニュであれば、家庭料理というよりはレストラン、またはホームパーティーで気合の入った料理と合わせたいところ。上質な和牛を使った料理、あるいはローストビーフと合わせてみたいと感じました。

最後にジャン・バティスト・ダンジャン氏は、株式会社ソムリエに向けて12年間の付き合いに対する感謝を示し、「何よりもエンドユーザーの皆さんが私たちのシャンパーニュを楽しんでくださることが大事」とコメントし、会を締めくくりました。

ポール・ダンジャンには、この日提供されたキュヴェのほかにも様々なキュヴェがラインナップされており、さまざまなニーズに合わせて選ぶことができます。

イベントが増える年末年始は、ポール・ダンジャンのシャンパーニュと共に過ごしてみては。

山田井ユウキ/ワインエキスパート ワインも含め興味のおもむくまま多ジャンルで執筆するフリーライター。
ワインの物語を伝える“ワインストーリーテラー”として活動中。著書に『ワインの半分は物語でできている。』など。[有資格]ワインエキスパート/WSET Level3/ドイツワインケナー/第8回J.S.A.ブラインドテイスティングコンテスト・ファイナリスト この著者の記事一覧はこちら
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