河合塾グループの学校法人河合塾学園は12月9日、「“次代の学びを拓く”新たな高等学校設立記者発表会」を開催。地域拠点の学びと通信制を組み合わせた「ドルトンX学園高等学校」を、岩手県一関市で2027年4月に開校することを発表した。
「ドルトン東京学園」で得た成果や気付きを新学校に反映
このようなハイブリッドなスタイルの通信制高校は日本初。そのモデルとなったのが、河合塾学園が2019年に東京の調布市に設立した、中高一貫の「ドルトン東京学園」だ。
同校では、アメリカのヘレン・パーカーストが提唱したドルトンプラン教育を実践。これは自由と協働を軸として、生徒自身が興味のある課題を選び、自分で学習を進めることを重視する教育スタイルだ。
2025年春に一期生が卒業。6年の学びで得られた成果を分析したところ、入学当時は全国平均レベルだった非認知能力が、卒業時には平均を大きく上回っていることがわかった。非認知能力とは、論理的思考や創造性、自己効力、柔軟性といったペーパーテストでは測定しづらい能力を指し、人生を豊かにする能力として近年注目されている。
この非認知能力の伸びの要因となったのが、対話して相手の気持ちを尊重する「共感・傾聴力」だ。これらの能力を伸ばすためには、地球規模の課題を自分ごととして捉え、解決のために行動する「地球市民性」や「失敗から学ぶ力」の成長も影響していることがわかったという。
ドルトン東京学園では、五感で本質に向き合う探求学習を実施。中学生でアジア各国に研修旅行に行き、地域の人たちと一緒に探究学習を行うプログラムを設けている。例えばマレーシアでは、親が不法滞在者のため国籍が得られない子どもの無国籍問題を探求。
このような探究学習で一筋縄ではいかない社会の壁にぶつかったり、挑戦して失敗や挫折を経験したりした生徒ほど、非認知能力が大きく成長。調査によって、非認知能力が大きく伸びている生徒は、学力の偏差値も大きく伸びていることがわかった。
ドルトン東京学園でのこうした気付きを元に、ドルトンX学園高等学校を開校。この学校名の「X」には、場所に縛られず国内外のあらゆるところに滞在しながら、探究的な学びや社会課題に向き合う学校にしたいという思いが込められている。また、「X」には数学における変数の意味もあることから無限の可能性を感じてほしいという意味もあり、「X」の値が変わると「Y」の値も変わることから社会全体にインパクトを及ぼすことができる人材になってほしいという意味もある。
「新学校に込めた思いは、自らの足で探求し、破天荒に出会い、フロンティアを共創するということ」と、発表会に登壇した河合塾学園 理事長の河合英樹氏は語る。
具体的には、アメリカのミネルバ大学の教育モデルを参考に、滞在型と越境型の学びを実践する。ミネルバ大学では1年次はサンフランシスコのキャンパスで学び、残りの3年間は世界の各都市を回りながら、社会課題に向き合うという学習スタイルをとっている。同大学は現在、ハーバード大学よりも合格するのが難しく、世界で最も革新的な大学として知られる。
そこで新学校では、1年次は岩手と東京の2拠点で学び、探求に必要な基礎的な能力や生活力を養う。そして2年次は国内外の地域拠点に約3カ月単位で滞在し、最大4カ所でオンライン学習と地域のフィールドワークを実施。
新学校は、岩手県一関市の旧油島小学校に開校予定。岩手の地域拠点として、そこから数分のところに学生寮を設立する。そして東京の拠点はNTT東日本のNTT中央研修センタ内の「NTTe-City Labo」と連携。そのほか国内では、けいはんな学研都市/徳島/沖縄に拠点を設置。海外では、エストニア/イギリス/マレーシア/インドに拠点があり、今後も連携拠点を増やしていく予定だという。
ドルトンX学園高等学校を岩手県に開校する理由としては、豊かな自然や世界有数のスキー場・温泉・歴史的建造物など、様々な魅力があることを挙げる。その一方で、様々な社会課題に直面していることから探求テーマが多く、一緒に取り組んで解決を目指せる地域でもある。地理的にも一関市は東北エリアの中心に位置していて、東京と行き来しやすいという利便性もある。
ドルトンX学園高等学校は広域通信制高校として、47都道府県から生徒を募集。定員は1学年150名。
「この新学校では、学力が高い生徒に集まってほしいというわけではなく、探求心を持って社会課題の解決に取り組みたい、失敗を恐れずに挑戦したいという、全国の“好奇心モンスター”な生徒に集まってほしい」と河合氏。3年間の学校生活を通じて、世界を変えられると信じて行動できる人材が多く育つ学校にしたいと願っているという。
連携パートナーのNTT東日本は3つの支援を実施
新たな高等学校計画を協働する連携パートナーとして、次世代教育の取り組みを包括的に支援するのが、河合塾グループと連携協定を締結しているNTT東日本。共創の目的とするのは、NTT東日本グループがパーパスとして掲げる「地域循環型社会の共創」だ。
同社は地域密着型のICT企業として、通信事業に止まらず、防災やスマートインフラ、一次産業支援など、様々な地域課題の解決に取り組む。この地域循環型社会の実現のために必要なこととして挙げられているのが、「地域循環型社会の成功モデルの創出」「地域循環型社会を支える次世代の社会基盤の実現」「社会変革を起こす人材の発掘と育成」の3つの柱だ。
中でも重要なのが「人材の発掘と育成」。そのために、2022年10月にはドルトン東京学園と、2025年3月には河合塾グループ全体との連携協定を締結した。この連携協定に基づき、NTT東日本のアプリを活用して生徒自らが運営を行うスマートストアの開設や、社会課題を教材とする探求ツアーシリーズとして「医療編」「食と農編」「ビジネス創造編」などの提供を行っている。
このような取り組みを経て、今回のドルトンX学園高等学校との共創では、3つの支援を実施する。
NTT東日本は河合塾グループ、ミネルバ大学、自治体や地域コミュニティ、パートナー企業などと連携し、デジタルとリアルを兼ね備えた革新的なハイブリッド教育モデルを展開していく方針だ。
NTT東日本 岩手支店長の後藤高宏氏は、「AIの時代だからこそ人間くさく、テクノロジーを使えるからこそ泥臭く。これが我々が目指す新しい教育の姿。この取り組みの先に、グローカルな視点を持った次世代リーダーたちが羽ばたいていくことを信じている」と、今後の展開に期待を込めた。
岩手県の自治体や企業からの期待もかかる
発表会では、岩手県内の自治体連携パートナーである一関市のほか、八幡平市/釜石市/岩手町からもビデオメッセージで期待が寄せられた。
まず一関市と河合塾学園は、2025年11月に「探求的な学びに関する包括連携協定」を締結。市長の佐藤善仁氏は、ドルトンX学園高等学校が開校することで、若者が流入すること、地域経済への波及効果、地域人材との交流と課題解決、教育による地域ブランドの向上など、連携による地域の活性化や効果が多方面に広がる可能性に期待を寄せる。
「ドルトンX学園高等学校との連携は大きなチャンス。この連携によって一関市が掲げる“学びで可能性を広げるまち”の実現を目指したい」と佐藤市長。
八幡平市では、短期集中型の合宿型プログラミング学習イベント「スパルタキャンプ」を2015年から実施している。八幡平市の佐々木孝弘市長は、「高校生版の特別メニューとしてスパルタキャンプを展開することを計画している」と言う。
一方、釜石市では、地域の魅力を再確認するための学びの場を提供する「オープン・フィールド・カレッジ」を展開。11月にアメリカのミネルバ大学の学生が3日間滞在した経験から、「ドルトンX学園高等学校とも様々な連携を通じて、互いに刺激を得ることができれば」と、釜石市の小野共市長は期待を込める。
また、岩手町は農業とスポーツ、アートという3つの文化が息づく町。同町の佐々木光司町長は、「地域と共に学び、未来を切り拓く人材を育てることを目指している。良い循環を生み出していきたい」と語った。
連携パートナーとして協働する岩手銀行からは、同行頭取の岩山徹氏が登壇。地域社会の発展に貢献することを経営理念の一つとして、“お客さまの課題解決と地域社会の持続的発展を牽引する価値共創カンパニー”を掲げる岩手銀行。ドルトンX学園高等学校の構想は同行のビジョンとも親和性が高く、様々な場面で共創できるという考えだ。
岩山氏は、「フィールドワークのコーディネートや地元企業とのオープンイノベーションの橋渡し、教育ファンドなどで、グループの総合力と外部連携を生かした協力を進めていく」と、同行の協働に対するプランを述べた。
そして、2023年に起業した一関工業高等専門学校のスタートアップのNext IWATE。
6月に一関市で開催されたドルトン東京学園のフィールドワークにも対応。「8月の夏休みには生徒が自主的に訪れてくれて、次の春にも来たいと言ってくれるなど、手応えを感じている」と、代表取締役CEOの上野裕太郎氏。岩手県には課題や資源、人材もあり、岩手から全国、そして世界へと広がる新しい地域共創モデルの原点になることができるという。
「若者が本気で交わり、地域から学ぶことで、地域から未来を変えていくことができる。私たちは学生たちと年齢の近いパートナーとして、生徒の本音と青春に寄り添って伴奏していきたい」と、上野氏は生徒ひとりひとりと本気で向き合う姿勢を示した。
前述のとおり、ドルトンX学園高等学校は2027年4月に開校予定。その日に向けて、岩手県の自治体や地元企業などの連携パートナーとの取り組みが、今後ますます加速していくはずだ。
綿谷禎子 わたたにさちこ 情報誌の編集部から編集プロダクションを経てフリーランスのライターに。現在は小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。自称、キャッシュレスクイーン。スマホ決済や電子マネー、クレジットカード、ポイント、通信費節約などのジャンルのほか、趣味の文具や手帳の記事も手がける。 この著者の記事一覧はこちら











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