トーシンパートナーズは12月10日、「ファイナンシャル・ウェルビーイング(経済的な安心・心のゆとり)」に関する意識・実態調査の結果を発表した。調査は2025年11月20日~21日、全国の30~50代・年収500万円以上の有職男女1,000名を対象に、インターネットで行われた。

○年収500万円以上でも、約6割が「経済的な安心・心のゆとりがない」

ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、現在および将来の金銭的な債務を十分に支払うことができ、将来の自身の経済面に安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態を指す。本調査は、働き世代の「お金の安心・心のゆとり」の実態と、その背景にある将来への不安や資産形成の状況を明らかにするとともに、不動産投資を含む資産運用がファイナンシャル・ウェルビーイングにどのような影響を与えているのかを把握することを目的に行われた。

まず、現在の「経済的な安心や心のゆとり」について尋ねたところ、「あまり感じていない」「まったく感じていない」と回答した人は合計で約6割に達した。また、「人生を楽しむための経済的自由がありますか」という問いに対しては、54.6%が「ない」と回答。一定の収入があっても、「安心」と「自由」を十分に感じられていない人が多数派であることがわかった。

○経済的自由がない理由は、収入の少なさよりも「将来の見通しの不在」

経済的自由が「ない」と回答した人に理由を複数回答で尋ねると、「老後資金や教育費など将来負担への不安」、「将来の収入・支出の見通しが立たない」、「貯蓄・投資が十分でない」といった項目が上位に挙がった。

単に「収入が少ないから」というよりも、「将来どの程度のお金が入り・出ていくのかが見えない」「備えが足りていないと感じている」ことが、経済的自由を感じられない大きな要因となっていることが浮き彫りになった。

○「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の認知度

「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という言葉の認知については、「内容も含めて知っている」と回答した人が約1割、「聞いたことがある程度」が約2割にとどまり、約7割は「聞いたことがない」という結果だった。一方で、「今後の人生において「ファイナンシャル・ウェルビーイング」は重要だと思うか」という問いに対しては、約8割が「重要」「やや重要」と回答。言葉としては浸透していないものの、「お金と心の状態の良さ」を重視する意識は、幅広い層で共有されていることが明らかになった。

○8割超が何らかの資産形成に取り組む一方、不動産投資はまだ少数派

資産形成の状況について尋ねたところ、貯蓄が約7割強、投資が5割、保険が3割強となり、貯蓄・投資・保険のいずれかに取り組んでいる人は8割超に達した。「何もしていない」と答えた人は約2割弱にとどまり、多くの働き世代が何らかの形で将来のお金に備えていることが分かった。


一方で、投資を行っている人の投資対象をみると、株式投資・投資信託がそれぞれ約7割の"王道"であるのに対し、不動産投資(1棟・区分)やREITなど不動産関連商品を保有している人は合計でも2割前後にとどまり、「不動産投資はまだ慎重に様子を見ている」層が多い実態が浮き彫りになった。

ファイナンシャル・ウェルビーイングへの理解の深さと投資設計の違い


「ファイナンシャル・ウェルビーイングを知っていて内容も理解している」と回答した投資家は全体では少数派だが、この層では、株式・投資信託に加えて、不動産(一棟・区分)、債券、金、FXなど複数の商品を組み合わせている割合が高いことが分かった。

一方で、「ファイナンシャル・ウェルビーイングという言葉を聞いたことがない」投資層では、株式・投信の保有率は同程度であるものの、不動産や債券などを組み合わせている割合は低くなっている。「ファイナンシャル・ウェルビーイング」への理解の深さが、「どのように資産を組み合わせるか」という投資設計の違いにも表れている可能性が示唆される結果となった。

○経済的自由の有無で、幸福度に"約2ポイント"の差

自身の幸福度(1~10点)について尋ねたところ、経済的自由が「ある」と回答した層の平均は約7.1点、「ない」と回答した層は約5.2点となり、約2ポイントの差があった。また、投資の有無で比較すると、投資をしていない層の幸福度は平均約5.8点、投資をしている層は約6.3点と、こちらも差が見られた。

さらに投資している層の中でも、不動産(一棟・区分)などを保有している層では幸福度が7点台と高く、不動産を保有していない層(6点未満)との差が広がる結果となった。

○不動産投資と経済的自由の関係性

投資商品の内訳と「人生を楽しむための経済的自由」の有無を掛け合わせてみると、不動産投資(1棟・区分)を行っている投資家は、行っていない投資家に比べて、「経済的自由がある」と回答する割合が2~3倍程度高い傾向が見られた。

不動産に限らず、金や債券など「長期的な安定収入」「資産価値の維持」「インフレへの強さ」などを意識した資産を組み合わせている投資家ほど、経済的な安心感と自由度が高く、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」を重要視し将来価値を意識した分散投資を行う」ことが、心理的なゆとりにもつながっている可能性がうかがえる結果となった。

○投資未経験層、不動産投資に対する心理ハードルも

現在投資をしていない層に今後の意向を聞くと、約3人に1人が「近いうちに始めたい」「いずれ始めたい」と回答した。一方で、「興味はあるが始める予定はない」「始めるつもりはない」と答えた人も合計で約2/3を占めており、「関心はあるが一歩踏み出せない」層が多いことが分かる。

投資をしていない理由としては、「リスクが怖い」「知識や経験が足りない」「まとまった資金がない」といった項目が上位に挙がり、特に不動産投資についても、「空室リスクや資産価値の下落への不安」「初期費用の高さ」「管理の手間」などがハードルになっていることが明らかになった。


こうした結果から、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」の概念や将来価値の考え方を分かりやすく伝えながら、リスクや資金面への不安を軽減していく情報発信や伴走が求められているといえる。
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