早いもので、2025年も残りわずかとなりました。年末年始は、自宅でゆっくりと映画やアニメを楽しみたいものです。
そんな時間を過ごすために最適なデバイスが登場しました。7,980円という手ごろな価格ながら、4Kの高画質に対応したHDMI接続のストリーミングメディアプレーヤー「Fire TV Stick 4K Select」です。

「わが家はインターネットにつながるスマートテレビがあるから、外付けのFire TV Stickは必要ない」と考えている方もいると思います。ところが、Fire TV Stick 4K Selectは想像を軽く超えるほどの“サクサク動作”を実現しています。スマートテレビと使い心地を比較してみると、差は明らかでした。

今回は、アマゾンジャパンでFire TV製品を担当する西端明彦氏と鈴木良氏に、新製品の実力と魅力についてうかがいました。

4K対応Fire TV Stickのエントリーモデルが登場

Fire TV Stickシリーズのラインナップは、フルHD画質のスタンダードモデルと、4K画質の上位モデルという基本構成に分かれています。しかし、昨今のテレビ市場の変化に伴い、Fire TV Stickシリーズに対するニーズも変わりつつあります。これを受けて、アマゾンが追加したFire TV Stick 4K Select(以下:4K Select)は「今までにないモデル」であると西端氏は語ります。

「本機は、4K対応のFire TV Stickのいわゆるエントリーモデルです。誕生した背景には、薄型テレビの新製品の多くが4K化して、視聴できるコンテンツもVODサービスを中心に4Kの作品が増えたことがあります」

HDMI端子を搭載するさまざまな4K対応のテレビやディスプレイで、手軽に4Kコンテンツを楽しみたいユーザーにとって、本機がおすすめだといいます。この秋から、4K対応のFire TV Stickには、7,980円のエントリーモデル「4K Select」のほか、9,980円で買えるスタンダードモデルの「4K Plus」と、最上位モデルとなる12,980円の「4K Max」が揃いました。
4K対応の端末には、このほかにもAlexaリモコンを使わず、完全ハンズフリーによる音声操作にも対応する「Fire TV Cube」があります。

アマゾン独自の「Vega OS」がもたらす革新

4K Selectは、アマゾンが同社デバイスのため独自に開発した「Vega OS」を搭載しています。従来のFire TVシリーズや、パナソニックのFire TV搭載ビエラには、Android Open Source Project(AOSP)を基盤にして、アマゾンが独自に最適化したFire OSが搭載されています。新しいVega OSはLinuxをベースにしながら、Fire OSと変わらない心地よい使い勝手と、従来のFire TV向けアプリとの互換性確保を実現しています。

なぜ、このタイミングでアマゾンが新しいVega OSまで開発したのでしょうか。その理由を西端氏が次のように説明しました。

「4K対応の高機能とお買い求めやすさを両立するためには、限られたデバイスのメモリー容量でも軽快な動作を実現する新たなOSを開発する必要がありました」

Vega OSを開発するにあたって、従来の4K対応Fire TVシリーズとの比較でパフォーマンスを落とすことなく、またデバイスのコストダウンにも貢献することを目指したそうです。そして、従来のFire OS対応のアプリとの互換性確保も果たしているため、ユーザーにとって使い勝手が変わることはありません。

現在発売されている4Kテレビの多くは、インターネット接続とアプリによるVOD視聴機能を標準搭載しています。このような環境でもユーザーに「Fire TV製品がほしい」と思わせるためには、性能を落とさずに手に取りやすい価格を提示する必要がありました。アマゾンはこの課題を解決するため、OSを刷新して無駄を徹底的に削ぎ落としています。
スムーズな操作感を体験。
検索機能も使いやすい

スマートテレビがあれば、AmazonプライムビデオやNetflixといったVODサービスのテレビ向けアプリをインストールして、テレビ単体でも視聴できます。

しかし、最新の4K Selectを使うと、体験の「快適さ」がさらに向上します。アマゾンジャパンで、4K Selectを接続したテレビと、スマートOSを内蔵するテレビによる操作を体験により比べられる機会がありました。

鈴木氏による4K Selectのデモンストレーションでまず驚かされたのは、専用リモコンによる迅速で快適な操作応答性能です。

スクロール操作やアプリの起動は、この日に比較したスマートテレビの場合、リモコンのクリック操作に対してワンテンポ遅れて反応しました。かたや4K Selectはクリック操作に対して画面表示が即座に応答するので、ストレスを感じません。新しいVega OSによる最適化も効いているのでしょう。

複数のVODプラットフォームをまたがる作品検索も安定感があります。例えば『僕だけがいない街』というタイトルを検索すると、4K Selectはアニメ版と映画版、そしてNetflixの実写映画版を網羅的にピックアップします。一方、比較したスマートテレビでは検索にヒットしないバージョンがありました。

鈴木氏によると、アマゾンでは複数の動画配信サービスを横断して、ユーザーが見たい作品をくまなく探せるようにFire TV Stickシリーズの使い勝手を高めることにも腐心しているそうです。Amazonプライムビデオの配信作品ばかりを先頭に立ててゴリ押しするのではなく、ユーザーがサブスクリプション契約を結んでいる配信サービスから優先的に表示しつつ、ユーザーがさまざまなプラットフォームで見たいコンテンツと出会えるようにレコメンデーションします。


さらに興味深かったのは、特に日本のFire TV Stickシリーズのユーザーにも人気が高いと言われている「倍速再生」機能への対応です。TVerアプリで倍速再生を試みたところ、4K Selectとの組み合わせではスムーズに再生ができましたが、テレビの内蔵OS側ではTVerアプリの倍速再生に非対応であったり、その他の早送り操作などが不安定になるケースもありました。

鈴木氏によると「アマゾンはアプリを開発するパートナーとともに、ユーザーが必要とする機能を載せて、使い勝手もよくすることに注力している」といいます。OSの基本性能だけでなく、日本国内のユーザーが好む視聴形態に合わせて、アプリ開発を深いところまで掘り下げているところも、Fire TVシリーズの強みであると言えそうです。

4K対応モデルの主な違いとは

新モデルの登場により、スティック型のFire TV Stick 4KシリーズはSelect・Plus・Maxの3種類が展開されます。

4K Selectは4K対応でありながら、7,980円という手ごろな価格がとても魅力的なデバイスです。ただ「上位モデルにしかない機能」も存在するので、購入を検討する際には念入りな比較検討が大事です。

最上位の4K Maxには、3モデルの中で最も大きな16GBのストレージが内蔵されています。さまざまなVODサービスのアプリをインストールして楽しみたい人に向いています。ほかの2モデルの内蔵ストレージは8GBです。

無線通信規格は、4K MaxがWi-Fi 6E、4K PlusがWi-Fi 6に対応しています。テレビまわりの設置環境が、利用する無線通信速度や使用中のWi-Fiルーターの規格に合っていれば、各モデルの性能を最大限まで引き出せます。
なお、エントリーモデルの4K SelectはWi-Fi 5対応です。

ほかには、上位の4K Plus以上のモデルから、Echoスピーカーとのペアリングによる「Alexaホームシアター」の機能が使えます。アマゾンがこの秋に発売した最新のEcho Dot MaxとEcho Studioを組み合わせると、従来の2台スピーカーによるサウンドシステムだけでなく、最大5台を組み合わせた本格的な立体音響環境が組めます。4K SelectはAlexaホームシアターには非対応ですが、Bluetoothによるワイヤレスオーディオが使えます。

そのほかの相違点としては、SelectはHDR映像と空間オーディオがドルビーによるフォーマットには非対応です。また、スマートホームはRingカメラなどのピクチャー・イン・ピクチャー表示に4K Selectは対応していません。
米国ではAlexa+に対応。使える機能は?

4K Selectはグローバルで展開される製品ですが、日本と米国で利用できる機能やサービスに違いはあるのでしょうか。

西端氏によると「基本的にはグローバルで製品を展開しているので、大きな違いはない」そうですが、1点例外として、アメリカとカナダから先行導入されているアマゾンの次世代AIアシスタント「Alexa+」への対応があります。

Fire TVシリーズがAlexa+に対応すると、最新の生成AIテクノロジーにより、デバイスに話しかけて自然に会話を交わすようにコンテンツ検索ができるようになります。

たとえば、現在もFire TV Stickシリーズに搭載されているAlexaを使って、音声操作により「アクション映画を探して」「(俳優名)の映画が見たい」といったコマンドを入力して意中のタイトルを探せます。

Alexa+に対応すると、より感覚的な音声コマンドも受け付けてくれます。
例えば「雨の日に合うロマンチックな映画はある?」といった抽象的なリクエストだったり、俳優の名前や映画のタイトル名も分からない状態で「サッカーを題材にしたカンフー映画」といった曖昧な検索条件を話しかけると、それらしいタイトルをAlexa+が見つけて提案してくれます。

Alexa+が先行導入されている米国とカナダから、本体ソフトウェアのアップデートにより4K SelectもAlexa+が使えるようになる予定です。

Alexa+の日本導入時期は未定ですが、西端氏に今後の展望を聞きました。

「当社が調査したところ、米国では春以降にAlexa+を導入してから、ユーザーがデバイスに向かって話しかける頻度が2.5倍に増えたというデータが出ています。これまでも、アマゾンのデバイスは新しい機能やサービスが米国から先行提供され、順次日本を含む世界の各地域に拡大してきました。Fire TV Stickシリーズもハードウェアには将来、Alexa+に対応するポテンシャルがあります。日本のユーザーの皆さまにもAlexa+への対応をお知らせできる日が来ることを、私も心待ちにしてます」

テレビを買い替えることなく、最新のVega OSによる高速で快適な操作レスポンスが得られるFire TV Stick 4K Selectは、今後のアップデートによる新機能の追加も含めて、とてもお買い得感のある楽しみなデバイスです。もしも現在、数年以上前に導入したスマートテレビを使っているのであれば、新しいFire TV Stickシリーズの心地よさがすぐに実感できると思います。この機会に、年末年始のエンターテインメント視聴環境をアップグレードしてみてください。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。
オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら
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