近年、物価高騰によりさまざまな業界に影響が出ているが、ラーメン業界もその中の1つ。都心部を中心に「1,000円の壁」が崩れつつあり、それに伴い「高級ラーメン志向」という新たなトレンドも顕在化している。


そんなラーメン業界で、今年の日本の誇りとなるラーメンを称える「Takumen Ramen Awards 2025」授賞式が開催された。

プレゼンターには、タレントやフリーアナウンサーとして活躍する森香澄氏と、ラーメンをすするYouTube動画でラーメン界からも支持を集めるSUSURU氏が登壇した。

ラーメン業界のトレンドは?

主催のグルメエックス取締役の野間口兼一氏は、「店主が十数時間くらいお店に立って作ったラーメンの価値がまだ知られていないように思います。ラーメンの職人が尊敬される世の中になってほしいです」と、本イベントに掛ける想いを語った。

また、野間口氏によると、同社が展開する宅麺を含めラーメン業界は「安く、旨く」よりも「自分へのご褒美の一杯」として捉えられるようになってきており、海外にも日本の"こだわりぬくラーメン文化"を広めていくフェーズにあるとのこと。

お取り寄せラーメン部門 総合大賞は、大島「味噌らーめん」(東京都江戸川区)

お取り寄せラーメン部門の総合大賞を受賞したのは、東京都江戸川区に店を構える大島の「味噌らーめん」。今回で3回目の受賞のため、殿堂入りを果たした。

当日はプレゼンターの2人も実食。
森氏は、「ニンニクが効いていて、野菜もたくさん入っているので鼻から抜ける香りが楽しいです。遊園地のようなラーメンでした」と伝えた。

また、「この一杯を一言で表すと」というお題に対し、森氏は「おいしいとわかりきっているのにやっぱりおいしい。そこが『あざとい』ラーメンだと思いました」と彼女らしい言葉選びで魅力を語った。


SUSURU氏は、「スープを飲んだ時に芳醇な香りが広がりました。スープの表面のラードが蓋をしてくれ、熱々で食べられるのもうれしいです」と話した。

「この一杯を一言で表すと」というお題に対しては「北海道のすみれで修行された店主の大島さんの想いも伝わってきて、まさに『北の熱気 味噌一関』です」と店主のバックグラウンドも交えて魅力を伝えた。

筆者も実際に味わってみたが、スープを口に含んだ瞬間、ニンニクと味噌の力強い香りにほのかにスパイシーな刺激が広がる。中太麺とたっぷりの背油が空腹の体に染みわたり、満足感も十分だ。一方で、じっくり煮込んだ玉ねぎをはじめとする素材の旨みが全体をうまくまとめており、くどさは感じない。気づけば一杯をぺろりと平らげていた。納得の一杯である。
お取り寄せラーメン部門 つけ麺大賞に、麺屋一燈「濃厚魚介つけ麺」が殿堂入り(東京都葛飾区)

他にも、新人大賞には東京都文京区の麺屋鈴春「昆布水つけ麺(牡蠣塩)」が、ラーメン大賞には東京都板橋区の中華ソバ伊吹「闇中華」が、まぜそば大賞には東京都大田区の麺屋 こころ「台湾まぜそば」が、インスパイア大賞には東京都文京区の麺屋HERO「ラーメン」が受賞。

また、つけ麺大賞には東京都葛飾区の麺屋一燈「濃厚魚介つけ麺」が受賞。同商品も3回目の受賞のため、今回で殿堂入りを果たした。

みんなで選ぶ日本ラーメン大賞、一杯一杯に込められた想い

さらに、例年の全国の有名ラーメン店店主1,000人の投票に加え、今年はラーメン好き1,000人の投票も集めて調査した「みんなで選ぶ日本ラーメン大賞」も。
同賞は、プラチナ、ゴールド、シルバーの約100店舗が選出された。

プラチナを受賞したのは、下記の10店舗。各店舗の代表者がその1杯にかけた想いを語った。

飯田商店 (神奈川県足柄下郡)/飯田将太 店主
家系総本山 ラーメン吉村家(神奈川県横浜市)/吉村実 会長
永福町大勝軒(東京都杉並区)/草村豊 三代目店主
支那そばや(神奈川県横浜市)/佐野しおり 店主
すみれ(北海道札幌市)/村中伸宜 店主
中華そば しば田(東京都狛江市)/柴田貴史 店主
中華蕎麦 とみ田(千葉県松戸市)/冨田治 店主
とら食堂(福島県白河市)/竹井和之 店主
饗 くろ㐂(東京都台東区)/黒木直人 大将
ラーメン杉田家(神奈川県横浜市)/津村進 店主

飯田商店の飯田氏は、「僕らは、老舗といわれるラーメン店の店主が拓いてくれた道に乗っかれている部分もあると思っています。だからこそ、自分を含めて若手の店主は先輩たちが作り上げた道筋を知ろうとしてほしい。そしてそれを伝えていくフェーズにラーメン業界はあると思います」と先人への尊敬と今後の熱い展望を語った。

また、志那そばやの佐野しおり氏は、「今は亡き創業者の佐野実(夫)の想いを受け継いで、一杯一杯を大切に作ってきました。そんな味と心を受け入れてもらえてとてもありがたいです」と、こみ上げてくる想いを抑えながら喜びと感謝を伝えた。

饗 くろ㐂の黒木氏は、「先日、ポーランドのラーメン屋店主からSNSで修行をしたいと連絡があって......」と話し、「『自分は英語を話せないがいいか? 営業中は洗い物しか任せられないがいいか?』と確認しましたが、それでも来てくれるとのことで受け入れました。世界中の作り手の真剣さやラーメンを学ぶ意思を感じました」と、深い感慨を語った。

本アワードに選出された100店舗のラーメン。その一杯一杯に、ここに書ききれないドラマがあった。


移りゆくトレンドの中で、先人への敬意をもって伝統を守り抜く文化は途絶えることはないだろうと感じさせてくれる、熱いイベントだった。

ぜひ、アワードに選出された店舗で"間違いない一杯"を食べてみてほしい。
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