日本ワイン市場が広がり、新しいワイナリーが次々と生まれる一方で、現場では栽培・醸造の知識不足や人手不足、地域の担い手不足といった課題も見えてきている。こうした状況のなか、メルシャンはスタートアップワイナリーに向けた栽培・醸造コンサルティング事業を立ち上げた。
その取り組みの延長線上で生まれたのが、「あなただけのワインづくり体験」だ。ワインを“買う”だけでなく“造る”工程に関わることで、日本ワインを軸にした新たな関係人口を生み出し、地域や福祉とのつながりを育むことを目指している。今回は、この企画を手がけたメルシャン 経営企画部 栽培醸造コンサルタントの田村隆幸氏に話を聞いた。
○ワイン産業の課題と可能性
ワインづくりは農産物加工業であり、ブドウは産地で加工しなければ品質が落ちてしまう。メルシャンの事業のもう一つの柱である、アルコール事業のサトウキビ由来アルコールも、収穫後すぐの処理が欠かせないという。つまりワインづくりは、土地の条件や気候、人の手と密接に結びついており、地域そのものと切り離して考えることはできない。
一方で、新規ワイナリーが増えているものの、実際に畑を持った瞬間から「何をすべきか分からなくなる」という声も多いそうだ。座学で学べる場は増えてきたが、天候や熟度を見極めながら判断を重ねる“現場の経験”はまだ十分に提供されていない。
さらに、田村氏が課題として挙げるのが、ワインツーリズムが広がるなかで“醸造体験の場がほとんど存在しない”という点だ。ワイナリー見学や試飲イベントは増えているが、収穫後の仕込みや発酵管理といった醸造の核心部分に触れられる機会は限られている。
「情熱を持って飛び込む人が本当に多いのですが、技術面でつまずきやすいのも事実です。だからこそ、これまで培ってきた知見を社会に返したいと思ったんです」と田村氏。
ワインに触れる機会は見学、試飲、収穫体験と段階的に深まり、最も満足度が高いのが“醸造工程への参加”だと田村氏は考える。しかし、その受け皿は全国的にも非常に限られている。そこにこそ、新しい産業の広がりしろがあると感じていたという。
○地域課題とつながるワインづくりの現場
ワイナリー支援は技術面にとどまらず、「農地」「人材」「福祉」といった地域の課題とも自然につながっていく。日本では農地の減少や担い手不足が進むなか、田村氏が全国を回る中で可能性を感じたのが、障害者福祉法人との連携だ。
岩手県のアールペイザンワイナリーは、社会福祉法人が運営するワイナリーで、障害者の方々がブドウ畑で働き、ワイナリー運営の重要な担い手となっている。ブドウ栽培、ワイン醸造には、さまざまな作業があり、障害者の特性に合わせた作業を任せることができるという点で相性がよいという。地域の農地の維持・拡大は、障害者が働く場所が広がることに繋がり、福祉事業者にとっても安定した運営ができるようになる。
「ワインづくりは、人と地域のつながりを自然と広げていく力があります」と田村氏。この視点が、「あなただけのワインづくり体験」を構想する大きなきっかけにもなった。
○つくりながら学ぶ、ワインの新しい楽しみ方
この体験プログラムの大きな特徴は、参加者がただワインを味わうのではなく、ワインを“つくる側”に立つことだ。
田村氏は、ワインツーリズムが広がるなかで「ワインに関わりたいという気持ちが、以前よりずっと深まってきている」と感じているという。「あなただけのワインづくり体験」は、そうした“もう一歩踏み込みたい人”のニーズに応える形で生まれた取り組みだ。
田村氏によれば、参加者の多くは「ワインを深く理解したい」というだけでなく、ライフステージや働き方の変化から“地域との新しい関わり方”を探している人たちだという。将来的にワイナリー開業を視野に入れる人、セカンドライフで地方とかかわりたい人、自分で作ったワインを人との交流のきかっけにしたい人など、動機はさまざまだ。
今回の参加者が向かったのは、岩手県花巻市のアールペイザンワイナリー。ブドウの収穫から選果、圧搾、仕込みの方針を決める工程まで、ワインづくりの流れを実践的に体験した。
12月某日に開催された試飲会では、参加者が自ら仕込んだ白ワインとオレンジワインを前に、香りや酸の違いを確かめながら意見を交わした。ブレンド比率を変えて試すと味わいががらりと変わり、「白は酸が鋭いけれど、オレンジと合わせると柔らかさが出る気がする」「同じブドウなのに、ここまで印象が変わるとは思わなかった」といった声があがる。また、どの比率で仕上げるのが一番おいしいと感じられるのか、参加者同士が真剣に語り合う場面も多かった。
○日本ワインで地域と人を元気にする未来へ
ワインづくりを体験する時間の中で、地域とのつながりは少しずつ深まっていく。畑に足を運び、季節ごとに顔を合わせ、一本のワインが仕上がるまでの時間を共有することで、参加者の中に“この土地にまた来たい”という思いが育っていく。
こうした積み重ねは、地域へ関わる人を増やし、農地の維持や福祉との連携といった課題解決にもつながっていく。メルシャンは、こうした取り組みを通じて日本ワインをきっかけに地域と人を元気にする未来を目指している。











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