今年も冬のボーナスシーズンがやってきた。「今回こそは全額貯金」「繰上返済に回して身軽になりたい」。
だが、数カ月もすれば仕事の忙しさやストレスを理由に財布の紐が緩み、気づけばボーナスで埋めたはずの穴が、日々の散財によって元通りになっている...。そんな経験はないだろうか。
実は、最新科学の研究によれば、その「全額貯めよう」というストイックな姿勢こそが、かえって散財を招く大きな原因になっているという。むしろ、あえてボーナスの一部を「趣味や体験」、さらには「他人のため」に使っている人のほうが、結果として資産形成に成功しやすいという意外な事実が判明している。
「重要なのは金額よりも、"脳の報酬系"をどう設計するかです」──そう語るのは、行動神経科学を専門とする板生研一氏だ。
なぜ、貯金しようとする人ほどお金が貯まらないのか。そして、脳の仕組みを味方につけた「科学的に正しいボーナスの使い道」とは何か。そのメカニズムを紐解いていく。
○ボーナスを全部貯金すると、その後のムダ遣いが増える
まず、私たちが陥りがちな失敗パターンを振り返ってみたい。
手取りで数十万円、あるいは百万円単位のボーナスが入る。普段とは桁違いの数字を見て、「今回は手を付けずに別口座へ」と心に誓う。
しかし、その数カ月後には仕事の繁忙期やストレスが重なり、「これくらいなら」と外食のグレードを上げたり、ネット通販で衝動買いをしたりする頻度が増えていく。結果、ボーナスで埋めたはずの穴が、日々の「使途不明金」によって再び掘り返されていくことになる。
これを「自分の意志が弱いからだ」と責めてしまう人もいるかもしれない。しかし板生氏によれば、原因は個人の資質ではなく「脳の仕組み」そのものにあるという。
「私たちの脳には『報酬系』という神経回路があります。これは、何かを頑張ったあとに分かりやすいご褒美が得られると活性化し、次の意欲や満足感を生み出すシステムです。ところが、『全額貯金』や『ひたすら我慢』というルールは、脳に対して『どれだけ働いても報酬はゼロ』という過酷な状況を強いることになります」(板生氏)
報酬が得られない状態が続くと、脳の報酬系は枯渇し、我慢を司る前頭葉の働きも低下して、ストレスに対して非常に脆くなってしまうのだ。その反動として起きるのが、ある日突然タガが外れたように散財してしまう「反動消費」である。
つまり、全額貯金というルール自体が、脳にとっては「いつか爆発するための時限爆弾」をセットしているようなものなのだ。
○自分のためだけに使う人ほど、貧乏になる理由
そこで注目したいのが、"あえて使う"ことの効用だ。もちろん浪費ではない。
その鍵となるのが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学のエリザベス・ダン博士らの研究だ。ダン博士らは「収入の多さよりも使い方が幸福感を左右する」とし、特に「モノより経験」「自分より他人」への支出が幸福度を高めると結論づけている。
一般的にボーナスといえば、時計やバッグなど形に残る「モノ」を購入しがちだが、板生氏は「脳の性質上、それは推奨できない」と指摘する。
「モノによる満足感は『快楽順応』ですぐに慣れてしまい、脳はまた次の刺激を欲します。一方で、旅行や習い事といった『体験』は、思い出として定着し、何度も報酬系を刺激してくれる。さらに体験を通じて得たスキルや人間関係は、自己肯定感を高める持続的な資産になるため、結果として日々のストレス発散消費(ダラダラ消費)が減り、お金が残りやすくなるのです」(板生氏)
もう一つ、意外な視点が「他人のために使う」というアプローチだ。資産形成の観点では単なる流出にしか見えないが、どうなのだろうか。板生さんは「計算上はマイナスでも、脳の報酬系にとっては強烈なプラスになります。ダン博士の研究でも、他人のために使った金額が多い人ほど幸福度が高いことが明らかになっています」と話す。
「誰かのために使うと、脳は"自分は役に立っている"という深い安心感を得る。この充足感が、孤独や不安を埋めるための散財を抑制してくれるのです。
○意志の力でお金は貯まらない...。貯金体質になる方法
理屈は理解できた。しかし、いざ支給日になると全額貯金してまったり、散財してしまう人もいるかもしれない。そこで板生氏が提案するのが、意志力に頼らない「3つの箱」のメソッドである。
まず手取り額を、貯金や投資へ回す「将来の自分」に50%、趣味や貢献に充てる「今の自分と体験」に30%、そして緊急時の備えである「予備費」に20%という黄金比で自動的に振り分けるのだ。
「脳は決断のたびに疲弊します。入金されたらまずこの比率というマイルールを固定し、思考停止でも実行できる仕組みを作ることが継続のコツです」と板生氏。そして、肝となるのが30%の「今の自分と体験」の内訳だ。このうち20%は「体験」に、残り10%は意識的に「他人のため」に使う。
「例えば、手取り100万円なら10万円は誰かのために使う。家族との食事でも寄付でも構いません。自分の稼ぎで誰かが喜んだ、という実感は脳への最高の報酬となり、枯渇したエネルギーを回復させ、結果的にストレス性の無駄遣いを防ぎます」(板生氏)
実行のポイントは「自動化」と「予約」。
「貯蓄か浪費かの0か100かの発想は、脳にとって最もストレスフルです。あえて『体験』と『他者』にお金を回し、脳の報酬系を満たしてガス抜きをする。これが結果的に、残りの資金を長く守り抜くことにつながります」(板生氏)
ぱっと見遠回りに見える「3つの箱」のメソッドだが、科学的にはこれこそが資産を盤石にする最短ルートなのだ。次の支給日、通帳を前にぜひ思い出してほしい。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。











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