2025年11月29日、福井市高柳の「TRETAS GREEN HALL」で「マタニティー&ファミリーパーク」が開催された。
会場中央にはワークショップやキッズコーナーが配置され、子育て中のファミリーのにぎわいで常に明るい空気が流れる。
○「マタニティー&ファミリーパーク」って?
このイベントは、JA福井県共済部が「若い世代に向けた取り組みをしたい」という思いから立ち上げたものだ。昨年の初開催が好評だったことを受け、今年も続けての開催となった。共済部共済普及課の小林宏至さんは、企画の背景をこう語る。
「子ども向けのイベントとして『アンパンマンこどもくらぶ』がありましたが、『子ども向けってアンパンマンだけだよね』という声が出てきたんです。子ども向けイベントで『妊婦さんは入れないの?』と聞かれることもあり、もっと幅広い世代を対象にした場をつくる必要性を感じていました」。
JAというと「お米」や「農産物」、「貯金」のイメージが強い。しかし共済部では、暮らしを支える活動にも力を入れており、今回のイベントも地域への還元として無償で行っている。
「若い世代とのつながりを作り、地域の子育てを支えたいという思いが大きいです」。
○妊娠期から家族をサポートする取り組みは、地域に根ざすJAならではの視点だ。
妊娠中から準備をしっかり。プレママ&プレパパ向けの体験ブース
プレママ&パパ向けの体験ブースとしては、「沐浴体験」「妊婦体験」「抱っこ紐体験」「おくるみ教室」などが挙げられる。
○・妊婦体験ブース
妊婦ジャケットを装着する妊婦体験のブースは、装階段の昇降やしゃがむ動作、寝返りなどを体験できる。
体験者の多くはパパで、お母さんが「やってみて!」と背中を押す姿も多い。
ジャケットをつけると、立つだけでもバランスが取りづらく、しゃがんで子どもの靴紐を結ぶ動作も一苦労。体験したパパからは、
「こんなに重いと思わなかった」
「早く外したい……!」
といった率直な声があがり、周りから笑いが起きていた。
指導していた助産師は「パパが家事や育児を分担しようと意識が変わってくれれば」と願いを込めながら、サポートをしていた。
○・抱っこ紐体験ブース
抱っこ紐の種類の多さに迷うプレママたちが「買う前に試したい」と訪れる姿が目立った。パパが試着してフィット感を確かめ、夫婦で真剣に相談する様子が印象的だった。
○・沐浴教室ブース
沐浴教室は、ベビーバスと人形を使った実践的なレッスンで、手順と意図を丁寧に説明していた。
筆者は10年以上前の沐浴経験者だが、当時は「顔も石けんで洗う」「お風呂上がりの全身保湿(なんと頭皮の保湿も!)は必須」といったケアは、そこまで浸透していなかった。最新のケアを伝えながら、ぎこちない手つきのパパが奮闘したり、祖父母世代や兄姉児も一緒に学んでいたりと、ほほえましい光景が散見された。
「妊娠中の沐浴指導はよくありますが、お湯を使って実践できる教室は少ないのできました」という声もあり、体験した福井市在住のご夫婦は「一度指導を受けたのですが、生まれる前にもう一度したいと思ってきました」と、2度目の体験に少し自信をつけた様子だった。
○・おくるみ教室&ベビーマッサージ
おくるみ体験では、おくるみの重要性を再確認できた。
巻き方を実際に練習できるため、プレママが熱心に講師を見つめる姿が多かった。
子連れ家族にはベビーマッサージも実施され、今回はオイルを使わず足裏を中心にレクチャー。講師によれば、「思春期になっても足裏だけは触らせてくれる子が多いんですよ」とのことで、未来の親子の姿を想像して微笑むお母さんもいた。
○元気な子どもたちも楽しめるファミリーイベント
入口近くにブースを構えていたプロカメラマンによるフォトコーナーは今回も盛況。前ボケを活かした構図で、プレママ・プレパパからファミリーまで、貴重な「今」を美しく残していた。
「たまひよ」ブースでは、「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の表紙をイメージしたフォトが撮れるとあって賑わっていた。
そのほか、輪投げや工作のワークショップ、モールドール制作など、子どもが楽しめる内容も充実。
韓国アイドルをきっかけに人気が広がる「モールドール」のワークショップでは、子どもたちが思い思いのパーツを選びながら真剣に材料選ぶ様子が見られた。
ほかに、「子どもとの関わり方教室」や「ヨガ」、「スタンプラリー」「食育スマートボール」なども行われており、講座や体験の幅の広さがイベントの魅力のひとつでもあった。
「子どもとの関わり方教室」では妊娠中、産後、祖父母向けと3種類の講座が行われ、それぞれの立場に必要なコミュニケーションや心構えを知って、うなずく夫婦の姿が見られた。
また、今回はタレントの鹿沼憂妃さんが来場し、妊婦体験や沐浴、ワークショップを実際に体験。「想像以上の重さ」「姿勢がつらい」と率直にコメントし、会場が和む場面も。参加者とも積極的に交流しながらイベントを楽しんでいた様子だった。
○地域の子育て世代と一緒に歩むイベントへ
このイベントは、中央のあそび場でのびのびと遊ぶ子どもたち、妊婦体験で重さに驚くパパ、ヨガマットの上で深呼吸する妊娠9ヶ月のお母さん、おくるみの巻き方に真剣な表情を向けるプレママ、そしてモールドールづくりに夢中の子どもたちと、さまざまな家族が楽しみながら参加し、JA福井県の「地域で子育てを支えたい」という思いが伝わってきた。
「皆さん笑顔で帰ってくださるイベントなので、次回も続けたい。JAなので“食と農”も絡めた形にできれば」と小林さんは微笑む。
妊娠中から子育て期までを、家族まるごと、地域とともに歩む。「マタニティー&ファミリーパーク」は、まさにその入口となるイベントだった。
後藤久美子 言葉の運送屋こと、京都のゴクミ。「ちゃんと聞いて、ちゃんと書く」をモットーに、ビジネス・旅・グルメなど幅広い分野で執筆。取材企業は600社以上。











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