第39期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は各組ランキング戦がスタート。12月16日(火)には5局が行われました。
このうち関西将棋会館で行われた4組の村田顕弘六段―山下数毅四段戦は136手で山下四段が勝利。期待の大器が完勝と言える内容でデビュー戦を飾っています。
○期待の大型新人

山下四段は森信雄七段門下の17歳。現在最年少の棋士で、三段として挑んだ竜王戦では6組準優勝・5組優勝という実績を残しています。プロデビュー戦となったこの日の相手は村田六段。自身の名を冠した角道を開けない力戦「村田システム」を得意としており、直近では稲葉陽八段や出口若武六段といった実力者を相手に白星を挙げており充実の様子です。

振り駒で後手番となった山下四段は飛車先の歩を突いてキャリアをスタート。その後、相手の得意戦法を受けて立つ形で相掛かりを志向しました。この日は村田六段が早々に角道を開けたことでシステム発動とはならなかったものの、山下四段は堂々たる指し回しでリードを奪います。格調高い端歩突きからは攻められる展開を苦にしない自信がうかがえます。

○最後は老練な指し回しで

駒組みが頂点に達したところで山下四段が動きます。中央の歩を連続して突き捨てたのが筋のよい仕掛けで、水面下に継ぎ歩と十字飛車の狙いがあるため先手が素直に応じづらいのを見越しています。
先手もなんとか注文を外すべく頑張りますが、山下四段の攻めは勢いを増すばかりでした。さわやかな角切りから敵陣に竜を作る戦果を挙げては後手優勢です。

優位に立ってからも山下四段の指し手は乱れません。寄せを急がず竜を自陣に引き上げたのが逆転を許さない一着で、観戦するファンも「17歳とは思えないほど冷静」と舌を巻きました。終局時刻は22時3分、最後は逆転の見込みなしと認めた村田六段が投了。デビュー戦を白星で飾った山下四段は局後「まずはホッとしています」とその喜びを語りました。

水留啓(将棋情報局)
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