キリンホールディングスと日立製作所は、キリンが保有する大規模な消費者嗜好データ・成分データと、日立のマルチモーダルAI技術および行動科学・デザイン思考を組み合わせ、消費者の飲料選択の理由や飲酒行動に影響する要因の解明に取り組む共同研究を12月より開始したことを発表した。

飲料選択や飲酒行動の要因解析で社会価値創出へ


消費者の飲料選択や飲酒行動は、製品の味や香り、成分、パッケージ、あるいは生活環境など、さまざまな要因が複雑に影響し合うことで形成されている。
また近年では消費者の嗜好が多様化しており、これらの要素を科学的に統合して、飲料がどのように選ばれるのかを高い精度で理解することは、商品開発の高度化において重要な課題であるものの、商品開発の初期段階で“選ばれる方向性”や消費者像を見立てることは困難だとされていた。加えて健康・安全に対する社会的意識の高まりから、消費者がより適切な飲酒行動をとるための背景や影響要因を丁寧に捉え、より良い行動選択につなげるための基礎的な理解を深めることも求められているという。

こうした背景からキリンと日立の両社は、それぞれが培ったデータや技術などの強みを活かした共同研究を12月より開始した。キリンは、嗜好調査結果と成分分析値を一元管理し、AIや統計での解析によって中味開発の精度と速度を上げる社内基盤「嗜好プラットフォーム」などを活用。一方の日立はマルチモーダル技術、行動科学・デザイン思考を組み合わせ、消費者による飲料の選択や飲酒などの行動要因を科学的に理解するための新たな基盤構築に取り組むとする。

具体的には、“継続的に選ばれる商品開発に向けた飲料選択の要因解析に関する研究”と“健康や安全に配慮した飲酒行動の要因解析に関する研究”を行うとする両社。飲料選択の要因については、製品の特徴や消費者の評価など複数の異なる情報をAIで統合して扱う手法の検証を進め、飲料選択に影響する要因を整理・可視化するためのアプローチの確立を目指すという。これにより、商品開発の初期段階から、継続的に選ばれやすい味やコンセプトの方向性を科学的に検証できるようになり、設計にフィードバックすることが期待されるとした。一方で飲酒行動の要因解析については、行動科学やデザイン思考の活用により、消費者の健康・安全に配慮した飲酒行動に影響する認知・感情・環境要因の整理・分析を行うとのこと。その成果として、適正な飲用行動を促進する施策の検討や、社会全体の健康増進に資する知見の獲得を目指すとする。

両社は今後、この共同研究で得られた知見を基に、商品開発における意思決定の高度化や飲酒行動に関する理解の深化を図るとともに、消費者行動の科学的理解をさらに深め、AI・行動科学を応用した新たな価値創出や社会課題の解決に貢献することを目指すという。また、共同研究で得られた知見や手法を今後の幅広い応用可能性を検討するための“協創の基盤”とし、社会課題解決や学術的発信などといった新たな価値創出の方向性を柔軟に探っていくとしている。
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