今年も残り10日ほどとなりました。2025年のNISA枠が残っている場合、今から選べる使い道はかなり限られてきます。
そうした中で検討できる選択肢のひとつが「株主優待」です。2025年12月末を権利確定日とする企業であれば、今からでも間に合う可能性があります。

そこで今回は、SBI証券のマーケットアナリスト(国内株担当)の根津真由子さんに、2025年のNISA口座・成長投資枠の使い切りを検討する際の参考として、株主優待の新設・拡充が発表された注目銘柄をピックアップしてもらいました。

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○株主優待新設・拡充銘柄でNISA使い切り!?

2025年も残り半月を切りましたね。寒い日が続いていますが皆様いかがお過ごしでしょうか。投資先の参考だけでなく、2025年のNISA口座の成長投資枠の使い切りのご参考になれば幸いです。
○株主優待とは

株主優待とは、企業から株主へ、割引券や商品券、食料品、オリジナルグッズなど、その企業に関連する商品やサービス等を提供する制度です。
株主優待の権利を得るためには、「権利確定日」に株主になっている必要があります。
「権利確定日」に株主となるためには「権利付最終売買日」(権利確定日の2営業日前)までに株式を購入する必要があります。

※権利付最終日や権利確定日についてのページへのリンクは、記事末尾に記載しています
○新設・拡充とは

株主優待の「新設」とは、これまで優待制度を導入していなかった企業が、新しく株主優待を始めることです。
一方で、「拡充」とは既存の優待制度をより充実させることを指します。例えば、優待内容を豪華にしたり、対象となる株数を広げたり、逆に対象株数を引き下げて利用しやすくするケースもあります。


株主優待では、保有株式数に応じてもらえるものが変わったり、もらえる数量が変わることがあります。

一般的に、株主優待制度の新設や拡充は企業の利益が安定しているときに行われるとされ、「業績が良いからこそできる株主還元」と考えることもできます。
実際に、日経平均株価の構成銘柄の予想利益は過去最高水準ということであり、日本企業の業績見通しは良好です。

日本企業が株主優待制度の新設や拡充を行う背景には、個人投資家の長期保有を促す狙いがあります。
銘柄をピックアップしてご紹介

本稿で、ご紹介している【銘柄表】より、今期会社計画の各利益項目(営業利益、経常利益、純利益)で黒字を確保している銘柄かつ、取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄に指定されていない銘柄の中から、下線をつけた銘柄を詳しく解説します!
1.藤田観光(9722)【拡充】

株価:11,290円(12月5日終値)
2026年6月末基準の優待獲得に必要な最低投資金額:225,800円(分割後想定)
※2026年1月1日を効力発生日とした株式分割(1:5)で優待獲得の最低株数である100株とするために、株式分割前に20株を買付する場合には、S株(単元未満株)をご利用ください。

ラグジュアリーホテル「ホテル椿山荘東京」やビジネスホテル「ワシントンホテル」などを手がける同社は、株式分割(2026年1月1日を効力発生日として1株→5株)および株主優待制度の内容拡充を11月7日に発表しました。

株主優待制度の拡充内容の主なポイントは以下の3点です。
①株主優待券の割引方法の変更
基本料金からの一定割合での割引⇒販売料金からの金額割引
②長期保有特典の新設
保有株数1,500株(分割後)以上かつ継続保有期間が3年以上の株主に対象施設の無料宿泊券を追加配布
③大口保有特典の新設
保有株数5,000株(分割後)の株主に自社グループの無料宿泊券を追加配布

さらに、株主優待を受けられる最低株数区分は100株で据え置きとなったため、株式分割前に20株を保有していた株主も今回より株主優待がもらえるようになりました。

本制度によりもらえる「株主優待券」は、ホテル椿山荘東京をはじめ箱根小涌園などでの宿泊や飲食、箱根小涌園ユネッサンなどのレジャー施設の入場にも利用することができます!
「日帰り施設利用券」は箱根小涌園ユネッサン、下田海中水族館の2施設で利用可能、「無料宿泊券」は自社グループの宿泊施設およびWHGホテルズにて利用できます。

こちらの株主優待制度は、2026年6月末時点の株主名簿に記載された株主から適用開始となります。優待を受けるためには、来年6月の権利付最終日2026年6月26日までに100株以上(株式分割後)を保有する必要があります。

本株主優待制度は6月末日と12月末日の年2回を基準日としていますが、今回の新しい基準での制度は2026年6月からの適用となるため注意が必要です。


同社は株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的に、本制度の拡充を行いました。
2.京王電鉄(9008)【拡充】

株価:3,904円(12月5日終値)
2026年9月末基準の優待獲得に必要な最低投資金額:78,080円(分割後想定)
※2026年4月1日を効力発生日とした株式分割(1:5)で優待獲得の最低株数である100株とするために、株式分割前に20株を買付する場合には、S株(単元未満株)をご利用ください。

多摩地域を中心に鉄道やバス事業を展開する同社は、株式分割(2026年4月1日を効力発生日として1株→5株)および株主優待制度の拡充を11月10日に発表しました。

その内容は、「株主優待乗車券の発行基準」の実質的な引き下げです。

株主優待を受けられる最低株数区分が100株で据え置きとなったため、株式分割前に20株を保有していた株主も今回より株主優待がもらえるようになりました。

今回の制度変更は「株主優待乗車券」の発行に関してのみで、現行100株以上(株式分割後500株以上)の株主優待については変更はないとのことです。
ちなみに、現行の株主優待には京王百貨店での割引や京王プラザホテルチェーンでの株主優遇宿泊料金の適用などがあります。

京王電鉄の路線や京王百貨店等をよく利用する方には魅力的な優待ではないでしょうか。

今回の株主優待制度の変更は、2026年9月末時点で株主名簿に記載された株主から適用されます。優待を受けるためには、2026年9月の権利付最終日2026年9月28日までに100株以上(株式分割後)を保有する必要があります。

株式分割は2026年4月1日を効力発生日としているため、2026年3月31日を基準日とする株主優待乗車証は現行の基準で発行されるため注意が必要です。

同社は、株式への投資の魅力をさらに高めるため株主優待制度の変更を行うと発表しています。

3.ビズメイツ(9345)【拡充】

株価:802円(12月5日終値)
2025年12月末基準の優待獲得に必要な最低投資金額:80,200円

ビジネスに特化したオンライン英会話サービスを展開する同社は11月14日に株主優待制度の拡充を発表しました。

その内容は、株主優待品の追加です。

現行の株主優待制度ではオンライン英会話レッスン「Bizmates」とオンライン英会話コーチング「Bizmates Coaching」の1カ月分の利用料のキャッシュバックを受けられていましたが、今回の拡充ではさらにビジネス特化型学習アプリ「Bizmates App」もキャッシュバック対象に加わりました!

ビジネス英語を学んでみたいと思っていた方には魅力的な優待ですね。

同社サービスの利用には別途有料会員登録が必要ですので、ご注意ください。

この株主優待制度の拡充は、2025年12月末時点の株主名簿に記載された株主から適用開始となります。
つまり、次回の権利付最終日である今年12月26日までに100株以上を保有することで株主優待の権利を獲得することができます。
4.アクシージア(4936)【今回限りの実施】

株価:405円(12月5日終値)
2026年1月末基準の優待獲得(抽選の対象)に必要な最低投資金額:81,000円

「AXXZIA」や「AGTHEORY」といった化粧品ブランドの企画、製造、販売、卸までを手がける同社は、11月21日に株主優待の特別実施を発表しました。

その優待の内容とは、ビットコイン(BTC)の贈呈です。
200株以上を保有している株主対象の中から、抽選で合計620名に総額1,000万円相当のビットコイン(BTC)が進呈されます!
具体的には、ビットコイン(BTC)10万円相当が20名に、3万円相当が100名に、1万円相当が500名に当たります。

抽選の対象となるためには、2026年1月末日の株主名簿に記載される必要があります。
つまり、1月の権利付最終日である2026年1月28日までに200株以上を保有することで、抽選対象となります。

本株主優待は今回限りの実施であり、未成年および非居住者の株主は対象とならない点には、注意が必要です。


現行の株主優待では、毎年7月末日の株主名簿に記載された200株以上を保有する株主を対象に、同社の株主専用サイトで利用できる優待券がもらえます。

同社は日本国内での認知度拡大を図るとともに、魅力的な株主還元の提供を追求していく姿勢を株主に理解してもらうことを目的に、本特別株主優待を実施すると発表しています。

※優待獲得に必要な最低投資金額は2025年12月5日終値と優待を獲得するための最低購入株数をかけた金額です。
※掲載している画像はイメージ写真であり、実際の株主優待とは異なります。
【銘柄表】11月に株主優待の新設・拡充が公表された銘柄をチェック

以下【銘柄表】は、2025年11月に株主優待制度の新設と拡充の発表を行った主な銘柄の表です。

名称の横に★が付いた銘柄は、今期会社計画の各利益項目(営業利益、経常利益、純利益)で黒字を確保している銘柄です。下線をつけた銘柄については上記で解説しています。

※藤田観光(9722)は株式分割(2026年1月1日を効力発生日として1株→5株)を予定しています。
※南都銀行(8367)は株式分割(2026年4月1日を効力発生日として1株→5株)を予定しています。
※京王電鉄(9008)は株式分割(2026年4月1日を効力発生日として1株→5株)を予定しています。
※ワールド(3612)は株式分割(2026年3月1日を効力発生日として1株→2株)を予定しています。
※南都銀行(8367)は会計項目が異なりますが、経常利益、当期利益ともに黒字予想を確保しています。

※会社発表の開示情報からSBI証券が作成。一部、表には掲載されていない銘柄もあります。
※新設・拡充内容は株主優待の新設・拡充内容についてその概要を示したもので、内容のすべてを示すものではありません。保有株式数や保有期間に応じて優待内容が異なるケースもあります。
※ 具体的な新設・拡充内容については各社Webサイトやニュースリリースをご覧ください。
※本ページでご紹介する銘柄は客観的な基準に基づき抽出したものであり、個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はお客さまご自身の判断でお願いします。

※権利付最終日や権利確定日についてはこちら

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

根津真由子 ねづまゆこ SBI証券マーケットアナリスト(国内株担当) 『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資情報コンテンツの企画・発信を担当。SBI証券に新卒入社。初心者や若い世代に寄り添った視点で、投資の基本やマーケットの情報をわかりやすく伝えることが目標。読者と一緒に学び、成長していけるようなコンテンツづくりを目指している。
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