両備システムズは12月19日、北海道札幌市と官民連携事業として、生成AIとAIエージェントを活用した自治体の旅費事務を効率化する実証実験を行うと発表した。実証期間は2025年12月上旬~2026年3月下旬までを予定している。
実証実験の背景
自治体の旅費事務は、地方自治法や条例に基づき規程が自治体ごとに異なるため、全国共通のシステムでは完全対応が難しく、職員が手作業で確認する負担が残っている。また、承認フローは多段階で、出張命令から行程作成、旅費計算、起案、承認(電子決裁)、精算まで複数ステップを要し、公共性・透明性確保のため承認プロセスが長く、時間がかかっているのが現状だという。
札幌市では、2023年度に生成AI利用ガイドライン群を制定し、全職員が使えるチャット型生成AI環境を整備し、職員向け研修も実施するなど活用を進めている。今後、生成AIをさまざまな業務に組織的に活用していくための足掛かりとして、各部局に共通の事務で影響範囲の広い「職員の出張にかかわる旅費事務」をテーマとして選定し、生成AI活用における旅費事務の効率化を模索していた。しかし、同市の旅費制度を反映できる既存の生成AIサービスがなかったため、民間事業者と共同で活用方法を実証していくこととした。
一方、両備システムズではこれまで「公開羅針盤シリーズ」でさまざまな自治体業務の支援機能を提供しており、職員の負担軽減と自治体DX推進を目指し、人事給与や文書管理機能の強化、他社サービスと連携、AI機能の搭載などの開発を進めている。
実証実験の概要
今回、札幌市職員の事務負担軽減と同氏の自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目指し、両備システムズの自治体特化型内部情報システム「公開羅針盤V4庶務事務システム」にAI機能を実装し、旅費事務効率化・高度化に向けてAI適用時の課題分析や業務効率化の効果を検証する。
札幌市におけるた民間事業者からの提案受付、事業化のコーディネートを担うワンストップ窓口「SAPPORO CO-CREATION GATE」を通じて「生成AI及びAIエージェントの活用による行政内部事務(旅費事務)の効率化・高度化」というテーマに対してテーマ型提案を行い、官民連携で実証実験を行う。
実証では、出張の条件(旅行者、日程、場所等)に応じた経済的かつ合理的な出張行程案の自動作成、出張行程に基づく旅費の自動計算、審査業務の効率化などを主な対象範囲としている。
具体的には、公開羅針盤V4の旅費事務支援機能へ生成AI、AIエージェントを適用し「出張の条件(旅行者、日程、場所など)に応じた合理的な出張行程案の自動生成、出張行程に基づく旅費の自動計算及び審査業務の効率化」ができる旅費システムを構築する。
実証実験では、旅費事務の業務フローで3つのAI実装を予定。「出張行程プランニングエージェント」は公開羅針盤V4に入力された出張の条件から、札幌市の旅費規程に沿った出張行程を提案するAIエージェントを実装。
「旅費規程確認エージェント」は職員に提示する出張行程が、札幌市の旅費規程に沿っているか評価するAIエージェントを実装するほか、宿泊費・宿泊手当などのその他出張命令に必要な入力項目も提案する。
「旅費審査エージェント」は、公開羅針盤V4の電子決裁基盤へ起案された旅費申請を、事前審査するAIエージェントを実装。承認者・決裁者は、申請内容の不備がなく旅費規程に沿った審査が済んだ申請内容を確認するのみとなり、電子決裁の省力化を可能とする。
今後、旅費事務における職員の負担軽減に対する効果検証を行い、成果が得られた点については公開羅針盤V4への実装を行い、機能改良を継続していく。また、本実証で得られた知見をもとに、そのほかの行政内部事務へのAI適用検討・実装を検討していく考えだ。











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