大分県 東京事務所の主催による「Fun! Fan! OITA 大分県移住セミナー&交流会」が12月20日、都内で開催された。第1部のセミナーには、数年前に関東エリアから大分に移住したばかりの「先輩ゲスト」が登壇し、そのきっかけ、移住先での働き方、地域での暮らしについて紹介。
第2部の交流会では、大分市、別府市、中津市など7市町村の担当者が地域の魅力をアピールし、来場者の個別相談にも対応した。

大分への移住を見据えている参加者たちの熱気に包まれた当日の様子をレポートする。

姉が語る「大分の魅力」が移住のきっかけに

大分県企画振興部では、移住の検討者に向けたさまざまな施策を展開している。大分県 東京事務所の石川華代さんは「年間を通じて、東京、大阪、福岡、そしてオンラインでも同様のイベントを開催しています」と話す。

『おんせん県おおいた』の名の通り、当地は温泉が大きな魅力の一つ。都会の喧騒を離れ、自然豊かな大分で温泉を楽しみながらこの先の人生を過ごしたい、そんな思いから移住を検討する人が増えているそうだ。

セミナーには2名の女性が登壇した。増渕さんは2023年に千葉県から大分県臼杵市に家族4人で移住した。現在は、実姉の経営しているワインバー&カフェで働いている。

移住の経緯については「先に臼杵市に移住していた姉から、近所に住む人々の温かさ、自然の豊かさについて聞いていました。『もう千葉には帰らない』というほど惚れ込んでおり、『どんな地域なんだろう』と興味を持ったのがきっかけです」と振り返る。

もともと増渕さんには「良い環境で、子どもたちを伸び伸び育てたい」という思いがあった。
そこで、まずは臼杵市が斡旋するおためしハウス「ほっとさんの家」(1泊2,000円)を家族4名で利用。武家屋敷のような大きな宿泊施設で、いくつも部屋があり、2人の娘さんも大喜びだったという。

4泊5日の期間中に周辺エリアを散策し、実際に住んでみたときのイメージを膨らませた。「そこで臼杵の魅力を感じられたのが大きかったです」と増渕さん。千葉に戻ると、臼杵市の不動産屋と連絡をとり、条件に合ったいくつかの物件をリモートで内見して住む家を決めた。

移住するとなると、引っ越し費用も考慮しなくてはならないが、増渕さんの場合、寝具の一部やお気に入りの家電製品だけ残し、あとはすべて捨てる決断をしたそう。また引っ越しが増えるシーズンを避け、閑散期の最も安い日を狙った。その結果、21万円ほどで済んだという。

「猫がいるため飛行機は使えませんでした。まずは自家用車で千葉から大阪まで行き、大阪からはフェリーで別府まで、そして別府から臼杵まで車で向かいました。引っ越し後、子どもたちは初日から学校に通いはじめ、これまで(風邪をひいた日を除き)1日も休んでいません。毎日、帰宅したらすぐに外に遊びに行く生活で、千葉にいた頃よりも笑顔が輝いて見えます。
こちらの学校では生徒の数も少ないので、先生方も子どもたち一人ひとりをしっかりフォローしてくれます。自宅から歩いて5分で海に出られる環境なんですが、夜、子どもたちと一緒に海岸線を歩いて、満天の星空を眺める時間が癒やしのひとときになっています」(増渕さん)

東京へのこだわりを捨て、祖母の空き家がある中津市へ

一方で、小川さんは2023年に世田谷区から大分県中津市に夫婦で移住した。地域おこし協力隊員として、現在はブランド牡蠣「ひがた美人」の養殖およびPR活動に協力している。

「蕎麦屋を10年間やっていたんですが、連日、深夜1時まで営業していました。常々『東京でこの先、どこまで続けられるだろうか』とは思っていました。移住を検討するきっかけになったのは2020年のコロナ禍です。夫婦で話し合った結果、『もう東京にこだわらなくても良いのでは』という結論になり、祖母の空き家がある中津市に移住を決めました」(小川さん)

地域おこし協力隊員の活動を通じて、地元の人たちや市役所、漁協で働く人たちと交流が生まれ、すぐに地域になじむことができた。

「朝市に顔を出すと、ほかの漁師さんとも仲良くなります。いまどんな魚がとれているか、どうやって食べたらおいしいか、などを教えてもらえるのも楽しくて」と小川さん。地域おこし協力隊員のメリットとして、住居費および駐車場代金が優遇されることも紹介した。働く際に必要な道具、作業着なども活動費として出るため、初期費用もかからないという。

もちろん引っ越し費用に関しては自費。
蕎麦屋に必要な機器も運ばなくてはならず、最初の見積もりでは55万円だったが、これを交渉して35万円にしてもらえたのだそう。

「地域おこし協力隊員の任期は3年です。退任後は、祖母の住んでいた住居を改装して蕎麦屋を開業するつもりです。うどん文化の大分で、江戸前蕎麦は珍しがられるのでは。ゆくゆくは地域の人々が交流する、賑やかな店舗にしていけたら素敵ですね」(小川さん)

移住体験者2人が語る「移住後のリアル」

ひと足先に移住した2人は、現地の人たちと温かな交流ができている、と笑顔を見せる。増渕さんは「アットホームな空気感があり、みなさんに寄り添ってもらえています。地域の大人たちが子どもたちの成長を見守る、そんな雰囲気も感じます」とし、小川さんは「歩いていると、向こうから話しかけてくれる人ばかり。すぐに顔見知りになれます」と話す。

また気をつけるべきポイントについては「大人の人数分の車が必要です」(増渕さん)、「通勤するにも買い物に行くにも車がないと不便です」(小川さん)と口を揃えた。

このあと第2部の交流会では、はじめに各市町村の担当者が登壇してプレゼンを行った。

大分市は「あなたの暮らしの”ちょうどイイ”がみつかるまち」、別府市は「日常に温泉のある暮らし、別府で癒やされてみませんか?」、中津市は「豊かな自然と利便性、きっと住んでみたくなる中津市」、佐伯市は「海も山も川も食も一流が勢ぞろい。佐伯で再起!」、臼杵市は「豊かな自然と歴史深い城下町でのびのびとした暮らしを」、姫島村は「水産業と観光とITの村づくり」、九重町は「地熱と温泉と高原の町『九重町』」として地域の魅力をアピールした。
また、おおいたジョブステーション(おおいた産業人財センター)の担当者が現在提供しているサポートについて説明した。

イベントの最後に開催された個別相談会では、大分への移住を検討している参加者たちから仕事や家賃に関する質問が飛び、移住への本気度をうかがわせていた。
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