東京商工リサーチは12月23日、2025年全国「社長の輩出率・地元率」調査の結果を発表した。本調査は、同社の企業データベース約440万社の代表者データ(個人企業を含む)を基に出身地を抽出し集計したもので、人口規模を考慮した社長の「輩出率」を算出した。

○社長「輩出率」、徳島県が8年連続トップ

都道府県別の社長「輩出率」(社長数÷人口)は、トップが徳島県の1.34%(前回1.35%)で、8年連続トップを守った。古くから近畿圏と交易があり、産業や観光・文化等の振興が目的の「関西広域連合」に四国から唯一、加わる。2位以下は、山形県1.12%(前回1.14%)、香川県1.06%(同1.08%)、秋田県1.01%(同1.03%)、愛媛県0.98%(同0.99%)、広島県0.91%(同0.92%)、青森県0.89%(同0.89%)と続く。10位内を四国3県、東北4県が占める。

一方、社長「輩出率」が最も低かったのは、埼玉県の0.26%(同0.26%)だった。次いで、46位が千葉県0.27%(同0.27%)、45位が神奈川県0.32%(同0.32%)で、42位の東京都0.49%を含む首都圏の1都3県が下位に並んだ。この他、44位に滋賀県0.35%(同0.36%)と43位に兵庫県0.45%(同0.45%)の近畿勢が並び、下位に首都圏や近畿圏が並んだ。

2024年の社長の平均年齢は63.5歳(東京商工リサーチ調べ)で、社長たちが生まれた年に近い1960年の人口(国勢調査)と2025年の人口を比較すると、埼玉県が243万人から737万人、千葉県が230万人から631万人、神奈川県が344万人から920万人、滋賀県は84万人から140万人、兵庫県が390万人から539万人と、それぞれ大幅に増えている。このため、他県からの転入も併せた人口急増が計算上、「輩出率」を抑えたともいえる。

○地区別「輩出率」四国が唯一の1%超え

地区別の社長「輩出率」では、四国が1.05%(前回1.06%)で唯一、1%台だった。調査を開始以来、12年連続トップとなった。徳島県を始め、3位香川県、5位愛媛県、11位高知県と4県すべてが上位に入った。
以下、東北0.87%(同0.88%)、北海道0.85%(同0.86%)、中国0.78%(同0.79%)、北陸0.73%(同0.74%)、九州0.67%(同0.68%)、中部0.61%(同0.61%)、近畿0.50%(同0.50%)、関東0.43%(同0.44%)の順。9地区に順位の変動はなかった。東名阪の大都市圏が下位に並び、人口集中が「輩出率」を抑えた側面もみられる。

○社長の「地元率」沖縄県が12年連続トップ

社長の出身都道府県と本社所在地が同一の「地元率」は、沖縄県が92.1%(前回92.4%)で調査を開始以来、12年連続でトップだった。47都道府県のうち、唯一の90%台を維持した。県内産業は、「3K」(観光、公共事業、基地)が中核で、他県から離れた距離感も背景にあるが、移住者も増えており地元率は0.3ポイントダウンした。

同社が2025年5月に発表した"2024年「全国新設法人動向」調査"では、普通法人数に対する新設法人の割合が、沖縄県は15年連続で都道府県別トップだった。コロナ禍後も好調な観光産業が起業の後押しになっており、地元率首位の座はしばらく続きそうだ。

2位以下は、愛知県88.4%(前年88.7%)、広島県86.9%(同87.2%)、北海道86.7%(同86.9%)、香川県85.8%(同85.9%)、宮城県85.5%(同85.7%)が続く。いずれも地域経済の中心で、Uターンを促す素地もあるようだ。愛知県や広島県は自動車産業の集積地であり、取引先や関連企業などのすそ野が広く、下請け企業の後継社長も押し上げた可能性がある。

一方、「地元率」の最低は奈良県の63.6%(前年64.1%)。
次いで、長崎県65.9%(同66.2%)、兵庫県66.7%(同67.0%)、鹿児島県69.1%(同69.4%)、山口県69.3%(同69.4%)、佐賀県69.3%(同69.0%)、千葉県69.4%(同69.9%)と続き、7県が70%を割った。
大都市圏への流出が止まないが、見方を変えれば、他県で活躍する人材(社長)を多く輩出した県ともいえる。

社長「輩出率」は、県民性だけでなく地理的条件や人口動態の要因も大きく、濃淡が見られる。日本全体は少子高齢化が止まらず、若年層が進学や就職で大都市圏へ流出し、そのまま大都市に就職する流れに歯止めが掛からない。「輩出率」は人口が分母のため、人口減少が進む県は「輩出率」が高くなる傾向もある。

一方で、「地元率」は強い地場産業の有無や地理的条件、そして家族構成など、複雑な条件が絡み合う。また、後継者が不在で事業承継が難しい中小企業では、親族以外の第三者やM&A、事業譲渡などは、他の都道府県出身社長に交代し、「地元率」を押し下げる可能性もある。事業承継問題が大きく浮上しているが、今後は自治体の取り組み具合が「地元率」に反映されるかもしれない。
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