麺と湯気の向こうに、世の中が見える……。さまざまな美味しいラーメンが登場した2025年も、残すところあと数時間。
連載第3回は、横浜家系「壱角家」の冬の定番、期間限定メニューを実食レポートする。

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○家系ラーメンを日常食にした存在、壱角家

横浜家系ラーメンの人気チェーン「壱角家」。都心部を中心に店舗を展開する、いわば家系ラーメンを日常食として定着させた存在とも言える。日本全国に100店舗以上、海外にはタイとマレーシアへ出店し、日本のみならずアジアへも展開している。

家系ラーメンというと、コアなファン向けで敷居が高い印象を持たれがちだが、「壱角家」は誰でも入りやすい設計をしている点が特徴だ。家系の中でも味の方向性が分かりやすく、ブレがない。その安定感があるからこそ、期間限定メニューにおいても振り切れる強さがある。

○家系×味噌×背脂。冬の定番メニュー

その「壱角家」が冬の期間限定メニューとして投入したのが、「背脂味噌壱郎」と「背脂辛味噌壱郎」だ。家系×味噌×背脂という、食欲を刺激する構成で、ここ数年「壱角家」の冬の定番として大ヒットを続けている。

スープは豚骨の家系スープをベースに、三種類の味噌をブレンドした特製味噌ダレを合わせ、そこに背脂と黒マー油を加えている。家系スープの骨太な土台があるからこそ、味噌を合わせても輪郭がぼやけず、濃厚さの中に一体感が生まれているのが印象的だ。
さらに「背脂辛味噌壱郎」では、特製の辛味噌ペーストが別添え的に盛られ、食べ進めながら味の変化を楽しめる仕様になっている。

○コクとキレ、どちらも食べやすい2つの味わい

まずは「背脂味噌壱郎」からレポートしていこう。

具はチャーシュー、モヤシ、キャベツ、味付背脂。麺は中太ストレート。家系スープに家系の麺を合わせているのに、これで二郎系を作ってしまうのが面白い。

一見ヘビーそうに思えるかもしれないが、ベースのスープはクリーミーで味噌の塩味は際立たず、食べやすく仕上がっている。マー油がかかっているのもオリジナリティで、味噌のコクの中に香りのアクセントを加えている。食べ進めるほどに重さよりも旨さが前に出てきて、見た目ほどクドくない点も好印象だ。

「背脂辛味噌壱郎」は基本構成は同じながら、辛味噌ペーストによって表情が変わる。真っ直ぐでシャープな辛さで、いわゆる二郎系のジャンク感とは少し距離があるが、ピリッとした刺激が加わることで輪郭がより明確になる。

背脂の甘みと辛味のコントラストが生まれ、後半は「背脂味噌壱郎」とはまた違ったキレを感じさせる。辛さ自体は強すぎず、食べやすい範囲に収まっているため、辛味がそれほど得意でない人でも十分に楽しめるだろう。


家系ラーメンが好きな人はもちろんだが、二郎系は少し重いと感じる層や、冬に濃厚な一杯を求める人にとっても、このシリーズはちょうどいい落とし所になる。寒い日に体を温めながら、ガッツリとラーメンを食べたい時にオススメしたい一杯だ。販売期間は2026年3月1日までで、一部店舗を除く全国の「壱角家」で提供中となっている。

井手隊長 いでたいちょう 全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。メディア出演、ラーメンの商品監修など多方面で活躍中。ラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。本の要約サービス「フライヤー」執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。 著書に『できる人だけが知っている「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム新社)、『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(早川書房)がある。 ブログ:「隊長日誌(ラーメンミュージシャン井手隊長の日記)」 YouTube:「ラーメンミュージシャン井手隊長の 今3時?そうねだいたいね」 この著者の記事一覧はこちら
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