東京商工リサーチは12月23日、「日中関係悪化の影響」についての調査結果を発表した。調査は2025年12月1~8日、5,645社を対象にインターネットで行われた。

○受注や販売の「減少、減少見通し」は合計15.6%

2025年11月、高市首相の台湾有事をめぐる発言をきっかけとした日中関係の悪化で、企業活動への影響を懸念する声が出始めている。中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけてから1カ月あまりが経過。この間、日中間の航空便の欠航が相次ぎ、日本産水産物の輸入停止措置など、日中ビジネスへの影響も懸念されている。

「台湾有事に関する国会答弁後、日中の緊張感が高まっています。貴社の受注(販売)はこの影響を受けていますか?」質問したところ、5,645社のうち、「すでに受注が減少」1.7%(99社)、「今後受注が減りそう」13.8%(782社)で、合計15.6%(881社)が日中関係の悪化による悪影響があると回答した。

一方、「現在は影響がなく、今後も影響はなさそう」は82.4%(4,655社)と8割を占めた。また「すでに受注が増加」は0.23%(13社)、「今後受注が増えそう」は1.7%(96社)で合計1.9%にとどまった。

悪影響との回答は、大企業で19.9%(442社中、88社)と2割にのぼり、中小企業は15.2%(5,203社中、793社)で、4.7ポイントの開きがあった。事業規模が大きいほど中国との接点も多く、悪影響の比率が高まったようだ。

○産業・業種別「減少、減少見通し」宿泊業は6割以上

産業別で分析した。「すでに受注が減少、今後受注が減りそう」が高かったのは、製造業(21.9%)、運輸業(21.1%)、卸売業(20.5%)の順で、10産業中、上位3産業が2割を超えた。一方、「現在影響なく、今後も影響はなさそう」は、金融・保険業(91.6%)が最高で、唯一、9割を超えた。


さらに細かく分類した業種別では、「すでに受注が減少、今後受注が減りそう」との回答は、宿泊業(61.9%)がダントツだった。このほか、3位の道路旅客運送業(37.5%)など、インバウンド需要の落ち込みが直撃する業種が上位に入った。

○3割が「調達面の中国依存の低減」と「中国への渡航自粛」を検討

「日中の緊張感の高まりを受け、貴社は何か対策を採る予定はありますか?」と質問した。全企業2,317社中、最多が「調達面の中国依存の低減」の32.4%(752社)で、2位の「中国への渡航自粛」の30.4%(705社)と拮抗した。上位2回答はいずれも大企業が中小企業を上回った。次いで、3位は「販売面の中国依存の低減」の12.7%(296社)で、大企業の9.9%(212社中、21社)に対し、中小企業は13.0%(2,105社中、275社)で3.1ポイント上回った。また、その他の回答には「何もしない」のほか、「現状分析と情報収集の強化」、「中国輸出に依存している取引先の精査」などの回答があった。
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