「23区平均は1億3000万円超」──。 2025年、不動産価格は我々の常識を完全に置き去りにした。
もはや一般の会社員は客ではないと言わんばかりの市場で、果たしてこの上昇は2026年も続くのか。

「今、さらなる値上がりを期待して買うのは危険だ」 そう警鐘を鳴らすのは、総資産30億円の不動産投資家・小原正徳氏だ。

数字の裏にあるデベロッパーの戦略と、水面下で始まりつつある調整の正体。小原氏が予測する2026年の残酷なシナリオとは...。
サラリーマンが買えない価格帯が標準になった

2025年を振り返ると、市場は「高騰」の一言に尽きる。ただし、日本全国が一様に上がったわけではない。数字を詳細に追っていくと、都心部、特に東京23区への極端な一極集中が目立った。

2025年度上半期(4月~9月)、首都圏の新築マンション平均価格は9489万円(前年同期比+ 19.3%)。さらに23区に限定すれば、平均価格は1億3309万円(同+ 20.4%)に達した。

新築マンション価格だけでなく、賃料までもが連動して上昇を続けたのが2025年の特徴だ。この異常事態をどう見るべきか。

「2026年の予測をする前に、まずは2025年がどれほど特殊な年だったかを整理する必要があります。
一言で言えば『23区の独り勝ち』です。 かつて『億ション』といえば特別な響きがありましたが、いまは平均で1億3000万円を超えています」(小原氏)

一般的なサラリーマン家庭が購入を検討できるラインを、完全に超えてしまっているのが現状とのこと。「たった1年で約2割も価格が上がる。冷静に考えて、これは異常事態と言ってよいでしょう」と小原氏。
数百人の超富裕層で回る、市場の新ルール

わずか一年で資産価値が2割増すという事実は、保有者には恩恵だが、これから購入を検討する層には絶望的な壁となる。 なぜこれほど価格が吊り上がったのか。

背景にあるのはデベロッパーの戦略転換だ。土地代や建築費の高騰により、従来の価格帯では採算が取れなくなった彼らは、「一般層」を切り捨て、ターゲットを明確に「富裕層」へと絞った。

象徴的なのが、千葉県船橋市で計画されている51階建てタワーマンションだ。最上階(134平米)の価格は、なんと「7億円」規模とも報じられる。都心のみならず、郊外の主要駅でもこうした価格設定が現実のものとなっている。

「これは単純に相場全体が底上げされたというより、高価格帯の物件しか市場に出てこなくなったと捉えるほうが正確でしょう。
いまのコスト構造では、一般の方向けの価格設定でマンションを供給するのは不可能です。

船橋で7億円という価格には驚かされますが、デベロッパーの論理は明快です。1000万人以上の人口がいる東京圏で、毎月300人から500人の超富裕層さえ捕まえればビジネスが成立する。市場は完全にそういう構造に変わってしまいました」(小原氏)

住宅が「住まうための箱」から、富裕層向けの「金融商品」へと変質してしまった現代。そこには、住居としての実用性とは異なる論理が働いているのだ。

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借り手を置き去りにした賃料の上昇

実需層が置き去りにされた価格帯でも売買が成立するのは、そこに投機的なマネーが流れ込んでいるからだ。竣工前に購入契約を結び、引き渡し直後に転売して数千万円の利益を得る「プレビルド投資」のような動きも、都心部では散見される。

その「受け皿」として存在感を増しているのが海外資金だ。港区の「三田ガーデンヒルズ」では、購入者の相当数を海外勢が占めているとも噂される。

彼らの潤沢な資金が、23区の中古マンション平均価格を1億円の大台(2025年10月時点)へと押し上げ、前年同月比+25.7%という新築以上の高騰を招いているのだ。しかし、実需とかけ離れたマネーゲームは、賃貸市場において無視できない歪みを生じさせつつあるとか。

「海外投資家は日本の新築抽選には参加しづらいため、割高でもすぐに手に入る、中古市場や転売物件の有力な購買層となっています。
ただ、問題はその後です。彼ら海外投資家を含めて、実需(自ら住む目的)ではなく投資目的で分譲マンションを購入した層は、高値で買った分、利回りを確保しようと強気の家賃設定を行いますが、いまの日本の借り手にはそれが払えない。データを見ると状況ははっきりします。掲載家賃は急上昇している一方で、実際に問い合わせが入る『借り手が払える家賃』との差が、どんどん広がっているのです。貸し手は高く貸したい。しかし借り手には払える上限がある...。このギャップが拡大していること自体が、市場が変調し始めたサインかもしれません」(小原氏)
相続で余るはずなのに下がらない…都心マネーの力

では、2026年の市場はどう動くのか。

日本の社会構造だけを見れば、先行きは決して明るくない。団塊の世代が後期高齢者となり、「大相続時代」が本格化すれば、郊外を中心に物件放出が増える。論理的に考えれば調整局面に入るのが自然だが、小原氏は「暴落は起きない」と話す。

「たしかに長期的なトレンドとして、需給が緩み価格が下がるのは間違いありません。私の実家がある千葉県野田市のような郊外では、もはや売りに出しても二束三文です。
ただ、2026年にすぐさま暴落が起きるかと言えば、そうは思いません。構造的な下落圧力よりも、現在は都心部に集中するマネーの勢いのほうが圧倒的に勝っているからです」(小原氏)

暴落は回避されるものの、2025年のような「年2割上昇」という高騰もまた、終わりを迎えつつある。そして、すでに調整が水面下で始まっているのだそう。

「現場の肌感覚として、『思ったより売れないから少し下げよう』という動きが出てきています。結論として、2026年は『上昇基調は続くものの、その幅は縮小し、調整局面に入る』というのが私の予測です。足元のトレンドが継続すると見て、2026年も2割上がるという前提で買うのは極めて危険です。高値で仕入れて売れずに損切りする、そんなケースがプロのあいだでも増えてくる年になるでしょう」(小原氏)

「億ション」という言葉や数字の魔法に踊らされてはならない。2026年は、高騰から覚め、自身のライフプランに基づいた冷静な選球眼が試される一年となりそうだ。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。
専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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