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新NISAの普及とともに、投資信託への資金流入が続いている。「S&P500」や「全世界株式(オルカン)」は、もはや投資の代名詞となり、書店やSNSではこれらを推奨する声が圧倒的だ。
低コストで世界経済の成長を取り込む戦略は、過去のデータに基づけば合理的といえる。しかし、多くの日本人が「みんなが買っているから」という理由だけで、構成比率やリスク要因を深く検証せずに資金を投じている現状には危うさも漂う。
特定の銘柄への極端な集中や、「円安がこの先も続くはずだ」といった期待に寄りかかった前提。大衆が同じ方向に動くとき、市場には必ず歪みが生じるものだ。その歪みを冷静に見極め、あえて群衆から一歩離れた場所でチャンスを掴むにはどうすればよいのか。
株式投資・トレードの講師として多くの個人投資家・トレーダーを指導し、自らもトレードの第一線に立つ窪田剛氏に、S&P500やオルカンに代わる選択肢と、データと前提を点検しながら本質的に市場と向き合う方法について伺った。
オルカンもS&Pも、結局“同じ株”
現在、米国株市場を牽引しているのは間違いなくAI(人工知能)関連の巨大企業群だ。S&P500指数の構成比率を見れば、いわゆる「GAFAM(M7)」の影響力がいかに絶大かがわかる。
多くの投資家はこのブームが半永久的に続くと信じているが、特定のテーマへの依存度が高まることは、そのテーマが崩れたときの痛手も最大化していることを意味する。
窪田氏は、現在の「2強(S&P500・オルカン)」人気について、一定の合理性を認めつつも、そこで思考停止することの危うさを指摘する。
「S&P500やオルカンが選ばれる理由は明白です。第一に、信託報酬が極めて安いこと。
しかし、完璧に見える選択肢にも構造的な死角はある。窪田氏は、多くの人が見落とす“ある偏り”を危惧する。
「問題は、S&P500といっても、結局はその2割前後がGAFAMなどの巨大テック企業で占められているという点です。これでは特定企業への依存度が高すぎる。では、オルカンに逃げれば安全かというと、そう単純ではありません。確かにテック企業の比率は下がりますが、今度はリスクの高い新興国や、経済が成熟しきって成長が止まっている国々までセットでついてきてしまう。つまり、S&P500は『特定の数社に賭けすぎ』ており、オルカンは『成長しない国が混ざりすぎ』ている。この『集中リスク』か『成長の希薄化』か、というジレンマがあるのです」(窪田氏)
王道はS&P500…は日本だけの思い込み
S&P500の集中リスクを避けつつ、オルカンのように成長性を犠牲にしたくもない。この課題に対する解として窪田氏が提示するのが、「全米株式(VTI相当)」だ。
「全米株式を選ぶメリットは、リスクの分散と成長性の両立にあります。S&P500よりも銘柄数が圧倒的に多いため、巨大テック企業が崩れた時のダメージは相対的に軽減される。一方で、これから成長する未来のGAFAM、つまり中小型株のポテンシャルも取り込めます。実は、米国現地の投資家たちがメインで買っているのは、S&P500よりもこの全米株式の方なのです」(窪田氏)
S&P500こそが王道だと思っている人も多いかもしれないが、それはあくまで「指数」としての知名度が高いからに過ぎない。
「現地の残高はおよそ2兆ドル(約320兆円)にも上ります。これは米国の国家予算規模の資金が入っているということであり、決してマイナーな商品ではありません。先進国の中で唯一、人口が増え続け、イノベーションが起き続ける米国市場の果実を、最もバランスよく享受できるのが全米株式なのです」(窪田氏)
次ページ「具体的な商品の選び方」
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円安が怖い人ほど「為替ヘッジなし」を選ぼう
では、具体的にどの商品を選び、どう運用すべきか。
「現在、新NISAなどで購入できる全米株式の主要なファンドとしては、『SBI・V・全米株式』と『楽天・全米株式』の2つが挙げられます。中身はほぼ同じですが、個人的にはSBIの方がベターだと考えています。理由はシンプルで、信託報酬が安いからです。楽天が0.16%程度なのに対し、後発のSBIは0.0938%程度。
さらに、為替ヘッジの有無についても、窪田氏の見解は「なし」一択だ。かつては為替変動を嫌ってヘッジありを選ぶ層もいたが、長期的な資産防衛の観点からは推奨しないという。
「今後、1ドル100円を割るような円高が来る可能性はゼロではありません。ただ、10年、20年というスパンで見れば、円安方向に振れやすいと見る方が自然です。為替ヘッジなしを選んでおけば、円が弱くなった時に資産評価額が上がり、生活防衛になります。輸入品やガソリンが高くなっても、資産が増えているから相殺できる。人生のトータルバランスを考えれば、ヘッジなしの方が合理的です」(窪田氏)
成長投資枠で買うべきは“よく知る米国株”
つみたて投資枠で「全米株式」という盤石な土台を築いた後、次に悩むのが「成長投資枠をどう使うか」だ。ここで窪田氏は、安易な「日本株回帰」に釘を刺す。
私たちは日本円で給料を得て、将来の年金も日本株の運用環境に左右される。そこにNISAまで日本株で埋めてしまえば、資産の大半を「日本」という一つのカゴに乗せることになりかねない。
「成長投資枠では、自分が愛用しているサービスの米国株を買ってみるのがおすすめです。Amazonをよく使っているならアマゾン・ドットコム(AMZN)、iPhoneユーザーならアップル(AAPL)といった具合です。
さらに窪田氏は、「今投資をやっていない人は速攻やったほうがよいです」とも強調する。円はゆるやかに、しかし確実に安くなっていく。そうである以上、先延ばしにするほど不利になりやすいからだ。
「個別株は難しく感じるかもしれません。そうであれば、まずはNISAで選べる低コストの商品からでも問題ありません。むしろ手数料の安い商品を淡々と積み上げていくほうが、長い目では効いてきます。投資で大切なのは、値上がり銘柄を当てることより、自分が“続けられる形”を作ることですからね」(窪田氏)
王道は王道として押さえつつ、成長投資枠で偏りを整え、守りのクッションも用意する。そうやって設計しておけば、相場がどんな局面になっても退場せずに済むはずだ。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や投資を推奨するものではありません。
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。











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