「地域」は日本全体の現在そして未来を考えるうえできわめて重要な要素だ。いま、少子高齢化による人口減少と過疎化、働き手の都市部への流出、それらに伴う経済の衰退など、地域は社会的・経済的に多くの課題を抱えている。
その解決にはさまざまなプレイヤーが乗り出しているが、ここに一つ、注目すべき取り組みがスタートした。SBIネオファイナンシャルサービシーズ(以下、SBIネオ)がクラウドファンディングのプラットフォーマーであるCAMPFIREおよび地域金融機関と連携して開始した、「SBIふるさと応援クラウドファンディング」である。本記事では同社社長の吉木直道氏に、この取り組みを始めた経緯と目指すところを聞いた。

根底にあるのはクラウドファンディングの“再定義”

「SBIふるさと応援クラウドファンディング」は、全国各地域の金融機関がそれぞれの地元に持っているネットワークを活かし、地域に根ざして活動を続ける事業者や長年愛され続ける商品・サービス、まだ知られていない観光資源などにフォーカス。それらに関わる事業をプロジェクト化してクラウドファンディングを組成し、SBIグループの広い顧客基盤に事業者の思い、独自のこだわり、地域で愛される理由や魅力を発信して、日本全国にファンを生み出していこうという取り組みだ。地域の宝をネーションワイドに広げ、そこで生じた利益を地域にしっかり還元することで、事業の発展はもちろん地域経済の活性化にもつなげていこうという目的が背景にある。

地域の企業や産品に着目したクラウドファンディング自体はこれまでも行われてきた。ただ、吉木氏は今回の取り組みについて、従来とは異なる意図があると話す。

「ポイントはクラウドファンディングの再定義です。従来型のクラウドファンディングは、地域の事業者にスポットライトを当てること自体は同じですが、地域金融機関にとって融資の対象とならない小規模企業の資金調達手段として使われることが多かったと考えています。そのため目的はクラウドファンディング業者へのトスアップが中心になり、展開も地域内がメインとなる傾向がありました」

「ただ、クラウドファンディングは単純にプロジェクト化して資金調達をすればうまくいくものではなく、背景にある事業者の思いや産品が刻んできたストーリーを伝えることが求められますし、事業として展開する以上はプロモーションも必要で、そこでは専門家によるサポートも重要になります」

「今回は、そうしたストーリー構築やプロモーション、収益化に向けた全体設計などをSBIグループが担い、かつグループが有する5000万超の顧客基盤に向けて全国区で発信していこう、その強みをクラウドファンディングの成功につなげていこうというのがコンセプトです」

吉木氏によると、従来型クラウドファンディングはプロジェクトオーナーとなる事業者と仲介する地域金融機関、そしてクラウドファンディング業者が相互に深くはつながらず、結果的に事業者が単独で動くことになり、せっかくの挑戦にも限界が生まれる傾向があった。地域金融機関としても、事業者と伴走しながらプロジェクトを進める状況にはなりにくかったという。


そこを今回はSBIネオが主導し、SBIグループとして積極関与することで事業者をしっかりサポート。加えて、事業者を発掘する伴走役の地域金融機関、プラットフォームを提供するCAMPFIREがそれぞれの強みを活かして連携することで、一つのチームとしてプロジェクトを成功に導く座組ができあがるというわけだ。
スタートした案件から見えてきた役割と深まる自信

「SBIふるさと応援クラウドファンディング」では、2025年12月時点で2つのプロジェクトが進行している。山形県高畠町で約40年にわたり無添加ソーセージ作りを続け、国際コンクールで20年連続金賞受賞を続ける「スモークハウスファイン」がその味を届けるプロジェクトは、地元のきらやか銀行(本店・山形市)による推奨がきっかけとなった。対してもう1つのプロジェクト、茨城県土浦市の「ROOTS社/芋や」が提供する県産さつまいもにこだわった焼き芋については、もともとSBIが直接接点があって案件化された形だ。

ただし吉木氏は、後者の形は例外的で、座組が始動する最初の試行錯誤において案件化したものであるとし、「基本的には地域金融機関がきちんとコミットするプロジェクトがベースになります」と話す。

「そもそもSBIがこの座組で最もパフォーマンスを発揮できると考えていたのは、どのようなストーリーであればファンが魅力を感じ、支援者になってくれるのかというプロジェクト全体の設計です。加えて、それを実現するためどのようなリターンを設計し、どういったプロモーションをかけていけばいいのかというところで、SBIがグループとして有するノウハウと顧客基盤を駆使できると考えていたのです」

そういった仮説に基づき検証として実施している2つのプロジェクトで、SBIネオおよびSBIグループが果たす役割として新たなものも見えてきたと吉木氏は続ける。

「しかし実際に取り組みを始めてみると、地域金融機関にもより深く動いてもらうことで、さまざまな部分にプラス要素が生まれることも見えてきました。というのも、やはり地域の事業者からすると、なじみのある地元の金融機関が非常に重要な存在だからです。そこで、SBIと地域金融機関のタッグを今後さらに強めていく必要性を再認識しました。もちろんその点で、SBIはこれまで全国の地域金融機関とネットワークを築き上げているからこそ、地域の良いものを全国展開していくことが可能になるわけで、手前味噌ではありますが、取り組みを主導するプレイヤーとして、SBIはやはり最適だと考えています」

SBIとしてはこれまでにも、全国のさまざまな地域で地方創生・活性化の施策を展開してきた。
例えば地域通貨発行では100を超える自治体をサポートし、まちづくりにおいても地域金融機関や地元業者と連携したプロジェクトを数多く実施している。そうした中で強化してきた地域金融機関との連携が今回の取り組みでは効果的に作用すると、吉木氏は改めて自信を深めたようだ。そのうえで、今後案件をこなしていくことにより、より多く、大きな成功につなげるための取り組みを進化させていきたいという。

では、今回あえて「SBIふるさと応援クラウドファンディング」というブランディング化を行った理由はどこにあるのか。

「地域通貨やまちづくりの事例では、実はSBIは表に立たず、裏側でサポートしていました。それはSBIがあえて前に出ないことでうまく進むと判断したからです。一方、今回のようなケースでは、大きな顧客基盤を持つSBIが前面に出たほうが支援者に周知しやすく、かつ魅力を伝えやすい。冒頭、私たちはクラウドファンディングを再定義したいと言いましたが、SBIが表に立って強みやパーツを提供することで、地域の事業者、金融機関との連携がより強くなり、かつ発信のメリットも深まるということで、ブランドを構築し展開することが最も効果的と判断したわけです」
地域活性化に導く仕組みのロールモデルを目指したい

プロジェクト成功時の利益については、プロジェクトオーナーの事業者、地域金融機関、SBIグループでシェアする形となる。

「従来型クラウドファンディングでは各ステークホルダーへの利益配分が少なく、どちらかといえば寄付に近いイメージが強かったと思います。そこについても今回の再定義の中で、ビジネスとしてしっかり回るモデルを構築したいというのがSBIの考え方です」

繰り返しになるが何より最大の目的は、注目されていない地域の魅力的な企業や商品・サービスにスポットライトを当て、全国にファンを増やして、地域活性化につなげること。そのためには小口分散の展開が可能なクラウドファンディングという仕組みが適していると吉木氏は話す。

最後に吉木氏はこう語った。


「今後ノウハウを蓄積し、ストーリーの組み立てや全体設計にも慣れてくれば、プロジェクト数も一気に拡大できると期待しています。その先で、今回のチャレンジがクラウドファンディングの新たなロールモデルとなり、地域で愛される企業や産品のファンを全国に広げて、それが地方創生につながっていく好循環を作り出していきたいですね」

地域の事業者、金融機関、そしてSBIのタッグによる新機軸のクラウドファンディングがどのような価値を生み出していくか、注目だ。
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