去る12月9日・10日に、NTT西日本が福岡市のマリンメッセ福岡において社内競技大会「マイスターズカップ 2025 in 福岡」を開催した。

このイベントは、サービス品質や顧客満足度の向上を目的とし、社員同士が専門技術を切磋琢磨する場として2004年より毎年行われているもの。
21回目となる今年度は、NTT西日本30支店の各予選を勝ち抜いた社員ら約400名が選手として参加し、実務で培ったスキルやサービス品質などを競い合った。ここでは、その様子をレポートする。

生成AI活用や顧客の課題解決など多様な競技が開催された1日目

「マイスターズカップ」は、西日本エリア各地の持ち回りで行われており、福岡県では7年ぶりの開催となる。イベントにはNTT西日本のグループ会社のほか、NTT東日本や通信建設会社などのパートナー企業も参加しており、昨年度は応援や運営スタッフなどを含めると約1,500人の社員が参加する盛大な大会となった。今回はそれをさらに上回る規模となり、マリンメッセ福岡のA館/B館を舞台にさまざまな競技が繰り広げられた。

大会初日の9日には、開会式のあと、データをビジュアル分析するためのプラットフォームであるTableauを活用して制限時間内にダッシュボードを作成する「Tableauダッシュボード」や、あらかじめ設定されたシナリオに基づき社内の複数の情報を横断的に検索して情報要約や文章生成を行う「生成AI活用」、Microsoft 365 Appsを用いてローコードアプリケーションを実装する「デジタル複合」、電話やインターネットがつながらない顧客に対してリモートで解決したり修理対応したりする「マルチ故障受付」などの競技が行われた。

選手たちは真剣なまなざしで競技に臨んでおり、会場はその緊張感と声援を送る社員たちの熱気とで大盛り上がり。選手たちの中には、普段仕事が終わったあとも研鑽に励む人が少なくないようで、その業務に対する真摯さや技術力の高さがうかがえる内容となっていた。

「マルチ故障受付」競技に選手として参加したNTTフィールドテクノの宮友貴さんは、「業務にあたってスキルやお客様応対の品質の部分で不安なところがありましたが、バックヤードの方たちに熱心に教えていただいたり応援をいただいたりしました。自分自身も今後、支える側の人間になれるよう頑張りたいと思います」と出場した感想を語ってくれた。

また、顧客が抱える業務課題に対して解決策の提案や製品・サービスの導入支援を行う「フロント連携」競技に参加したNTT西日本ビジネスフロント 福岡支店 北九州営業所の杉田純さんは、「職場の先輩のサポートや、他の営業所の方のアドバイスなどをもとに、より一層ノウハウや経験を積むことができました。今回の競技で得たものを、自分もほかの人たちに伝えていけたら」とコメント。


杉田さんとともに競技に臨んだ藤田匡敬さんは「我々のふだんの業務を知らないグループ会社の方も競技を見に来ているので、そういった方たちにもわかりやすく『こういう提案をしている』と伝えることを意識しました。今回の経験はふだんの業務にも活かせることなので、大変意義のある大会だったと思います」と話した。

同じく杉田さんらと競技に参加した神田真帆さんも「今回の競技で、ほかの部門の方がふだん具体的にされていることが分かり、より一層協力して頑張っていきたいという思いになりました」と振り返った。

災害時の通信復旧対応を競い合った「複合オンサイト」競技

大会2日目は、災害などで通信設備が被災した際の復旧作業を行う「複合オンサイト」、建設時から30年以上経過している設備の高度なスキルによる保守を行う「希少アクセス技術」などの競技が行われた。

そのうち「複合オンサイト」は、台風通過後に通信設備が被災した環境を想定。会場には、電柱や故障した通信回線、端末などを再現した模擬設備が参加チームのブースごとに用意された。

競技は3名1チームで行われ、予選を勝ち抜いた8支店、さらにNTT東日本代表の山形エリアの計9チームが参加。顧客(個人宅と法人2社の3カ所)からの故障申告を受けた後、その申告内容に基づいて回線・端末の復旧作業を行い、回線正常確認などの各種試験を経て完了処理を行うまでの工程が競われた。制限時間は120分だが、評価ポイントは時間だけではなく品質や正確性など複数あるため、一番乗りが必ずしも優勝とはならず、総合点で順位が決定される。

競技スタートの合図のあと、各チームは顧客からの故障申告を確認し、テクニカルサポート担当のリモート支援を受けながら復旧作業を急ピッチで展開。クロージャー(電線の接続部や分岐部分にある黒いボックス)を開けて点検したり、ケーブルを繋ぎ直したりしながら、復旧作業を進めていった。

会場スクリーンには各チームの進捗状況が表示され、作業がどこまで完了したかが把握できるようになっていたが、時間とともにどんどん「完了」マークが付けられていき、まさに接戦状態。
そうしたなか、九州支店チームが中盤から一歩リードし、他チームがそれを追う展開に。結局制限時間ギリギリに全工程を完了した九州支店チームがゴール一番乗りを果たし、他チームは1~2工程を残して終了する形になった。

総合順位は、復旧作業の進捗では2位だったものの総合点で九州支店を上回った東海支店チームが1位に。続いて、山口支店、北陸支店、関西支店の順となり、ゴールが一番だった九州支店は惜しくも5位となった。

「希少アクセス技術」として2つのエキシビジョンを実施

「複合オンサイト」終了後は、「希少アクセス技術」のエキシビションが行われた。競技内容は「鉛管解体」と「スタルペスケーブル接続」の2種類。

そのうち、「鉛管解体」は文字通り鉛管を解体するというもの。従来、通信ケーブルを敷設する際、ケーブルとケーブルをつなぐ接続点では外被に鉛管を使用してきた。しかし、1985年ごろから鉛管に変わって解体しやすく芯線の接続作業も容易なクロージャーが採用されるようになっている。

現在、過去に設置された鉛管が徐々にクロージャーに置き換えられている状況ではあるが、2025年11月時点でも西日本エリアに7,200個ほどの鉛管が残されている。今回のエキシビションは、その保守に必要となる鉛管解体のスキル向上を目的としたもので、会場では複数の工具を使い分けながら手際よく作業を進める選手たちの姿を見ることができた。

「スタルペスケーブル接続」は、地下ケーブルの芯線と芯線を接続するという競技。
スタルペスケーブルとはスチールテープ(ST)、アルミテープ(AL)、ポリエチレン(PETH)により構成されているケーブルのことで、昔の電話線などに使われてきたが、高度成長期以降はより取り扱いやすいPECケーブルが主流になっている。

PECケーブルが被覆に色付きポリエチレンを採用しており線番の見分けが容易なのに対し、スタルペスケーブルは被覆が紙でできており、色も赤、青、白の3色しかないため目視では線番の判断ができない。そのためケーブル同士の芯線を接続する際などに、線番確認や芯線の取り扱いに特別なスキルが必要になる。2025年11月時点で西日本エリアには44,451kmものスタルペスケーブルが存在しており、NTT西日本ではその保守を行う人材を育成するため研修などを開催して技術継承に取り組んでいるという。

今回のエキシビションでは、その有スキル者による作業を間近で見ることが可能だった。具体的には、NTTビルから送られた信号を現場で受信してスタルペスケーブルの線番を確認したあと、対応するPECケーブルの芯線に接続し、導通試験を行ってきちんと接続されていることを確認するという一連の流れになる。ケーブル同士の接続は、芯線を手で捻り合わせたあとにはんだ付けして結合する昔ながらの「手捻り接続」と、芯線をコネクタと呼ばれるパーツに取り付けて専用ペンチで圧着させる「コネクタ接続」の2パターンで行われた。

いずれも実際の作業はマンホール内部で行われ、目にする機会がめったにないため来場者の関心も高く、競技終了後には選手たちに惜しみない拍手が送られていた。
北村社長/右田九州支店長も会場を視察

なお、会場にはNTT西日本 代表取締役社長の北村亮太氏、九州支店長の右田聖秀氏が訪れており、報道陣の囲み取材に応じた。

北村社長は大会の意義や見どころについて触れたあと「今回ここに来ているメンバーは、西日本のインフラを守り続ける我々にとって宝物のような存在。業務のスキルも上がってきており、非常にレベルの高い大会になっていると思います。技術は日進月歩しているので、大会を通じて新しいものをしっかりキャッチアップし、お客様のためサービスにしっかり反映させていきたい」と話した。


右田氏は「九州は、毎年のように台風が来たり、線状降水帯による豪雨があったりする地域。10年前には熊本で大きな地震もあり、災害復旧の苦労は身にしみて感じております。現場では、いかに壊れない設備を作るのかということと、万一壊れた場合にどれだけ早く復旧するかという2点を心がけて対応しています。今回の競技でも、課題を見つけて考えて直し、お客様のサービス回復に繋ぐということを体現しているので、ぜひご覧いただければ」とコメントした。

また、NTT西日本の役割について聞かれた北村社長は「モバイルでも最後のワンマイルは固定の回線がどうしても必要になります。それをずっとつなぎ続けていくことが、日本の通信にとっても大事なこと。その意味でもNTT西日本は地域に密着した会社だと思うので、我々のテクノロジーや技術の力で地域が抱えるさまざまな課題を一緒になって変えていけるような存在になっていきたい」と語り、「ここにいる仲間たちとも同じような気持ちを共有しながらやっていけたら」と期待を寄せた。
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