腕時計の防水性能は高いほど安心感がある。とはいえ、いわゆるダイバーズウォッチの無骨な外観や厚みは、日常の装いには少し“強すぎる”と感じる人もいると思う。


現実的な選択肢として注目したいのは、100mや200mの防水性能を備えつつ、デザインを日常使いに寄せたモデル。水回りや雨、旅先でも不安がなく、それでいてスーツや休日の装いにも自然となじむ――。今回は、スポーツ、ドレススポーツ、タフネスという異なる方向性を持つ3本を選んでみた。

○タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル200 デイト(WBP2110.BA0627)

タグ・ホイヤーのアクアレーサーは、確かなスペックを持つラグジュアリー・スポーツラインとして長く展開されてきた。「プロフェッショナル200」はデザイン的にも主張しすぎず、汎用性が高い3針モデルだ。ここではブラックダイヤルの「WBP2110.BA0627」を取り上げたが、ブルーやグリーン、レッドといったダイヤルカラーもある。

回転ベゼルを備えた40mmケースは厚みやラインが比較的シャープで、多くのスポーツウォッチに見られる重厚感がない。スモーキーな印象を加えたダイヤルが個性的だ。インデックスや針はシンプルで、時刻の判読性も上々だ。ケースとブレスレットの仕上げはきめ細かく、シャツの袖口にすっきりと収まる。

200mという高い防水性能とクールな表情によって、オンとオフを意識せず使える実用時計として幅広いシーンをカバーする、扱いやすい1本だ。ムーブメントの自動巻き機械式「キャリバー5」はパワーリザーブが38時間と少し短い気もするが、時計を変えずに日々を過ごすユーザーには特に問題とはならない。
平日はスーツで仕事をし、週末には気負わず街に出かけるような大人に似合いそうだ。

ケース/ブレスレット素材:ステンレススチール
ケースサイズ:径40mm×厚さ11.54mm
風防:サファイアクリスタル
裏ぶた:ステンレススチール
防水性能:200m
ムーブメント:自動巻き機械式「キャリバー5」
パワーリザーブ:38時間
価格:42万3,500円

○チューダー ロイヤル 38mm(Ref.m28500-0003)

チューダーの「ロイヤル」コレクションは、スポーツとドレスの境界に位置するような印象だ。回転ベゼルを持たず、固定のベゼルはオルタネイティングカットポリッシュ仕上げ。このベゼルと一体感のある5列ブレスレットによって、全体的に落ち着いた雰囲気を醸し出している。

38mmというケースサイズは近年のトレンドでもあり、多くの日本人にとって腕元に収めやすい。ダイヤルのデザインは比較的クラシカルで、ローマ数字インデックスやサンレイ仕上げが上品だ。視認性とエレガンスのバランスが取れている。38mmのほか、28mmや41mm、ダイヤルカラーといったバリエーションも豊富だ。

防水性能は100mと数値だけ見れば控えめだが、ねじ込み式リューズを備え、日常生活においては十分。雨や手洗い、移動中の急な天候変化といった場面でも、ナーバスになる必要はない。

スポーツウォッチの枠にありながら、ドレス寄りの造形を与えられたこのモデルは、万能時計をエレガンス視点から考える人にとって魅力的な選択肢となる。装いを大切にし、時計に品のよさを求める人にとって、ロイヤルは自然に寄り添う存在だ。
スーツやジャケットを中心とした生活の中で、さりげなく実用性を重視したい人に向いている。

ケース/ブレスレット素材:ステンレススチール
ケースサイズ:径38mm×厚さ10.4mm
風防:サファイアクリスタル
防水性能:100m
ムーブメント:自動巻き機械式「キャリバー T601」
パワーリザーブ:約38時間
価格(Ref.m28500-0005):38万1,700円

○【箸休め】腕時計の防水性能、「○気圧」と「○mm」の違いは?

腕時計の防水表記には「○気圧」と「○m」があり、日常使いであればほぼ同等と考えてよい。仕様的には、「○気圧防水」は時計が静止した状態で耐えられる水圧、「○m防水」はその深さまでの潜水が可能であることを示す。

実際に「どの程度まで大丈夫なのか?」の説明にはけっこうバラつきがあったりするのだが、シチズン時計の解説を引用すると以下になる。

名称:日常生活用強化防水時計
防水性能:10気圧防水、20気圧防水
可能:水がかかる程度(洗顔、雨など)、水仕事や一般水泳、スキンダイビング、マリンスポーツ
不可能:空気ボンベ使用のスクーバ潜水、ヘリウムガスを使用する飽和潜水、濡れたままのりゅうずやボタンの操作

名称:潜水用防水時計
防水性能:200m防水
可能:水がかかる程度(洗顔、雨など)、水仕事や一般水泳、スキンダイビング、マリンスポーツ、空気ボンベ使用のスクーバ潜水
不可能:ヘリウムガスを使用する飽和潜水、濡れたままのりゅうずやボタンの操作

また、それなりの防水性能を持つ時計でも、たとえば水道の蛇口から勢いよく出る水が直接かかったりすると、瞬間的に防水性能を超える水圧を受けて時計の内部に水が入ってしまうことがある。お風呂のシャワー、プールや海で泳ぐときも同様だ。腕時計の防水性能は高いにこしたことはないが、過信は禁物である。
○ビクトリノックス I.N.O.X. メカニカル(Ref.241834)

I.N.O.X.は、ビクトリノックスが掲げるタフネスを象徴するコレクション。過酷な耐久テストを前提に設計され、20気圧(200m相当)の防水性能を備える。

ここで取り上げた「ビクトリノックス I.N.O.X. メカニカル」はケース径が43mmとやや大きめだが、曲線を多用したケース造形によって、ダイバーズウォッチやツールウォッチが持つ“道具感”とはまた違った印象をまとう。立体感のあるインデックスと太めの針は視認性がよく、実用性が前面に出たデザインといえる。

高い防水性能に加えて、日常で多少ラフに扱っても気を遣わずにすむ安心感は、このモデルらしい魅力。
タフさを軸にした万能時計として、アウトドアや旅先だけでなく、日常の相棒として使い倒すイメージが浮かぶ1本だ。アクティブな生活を送りながら、1本で完結させたい人に向いている。

ケース素材:ステンレススチール
ケースサイズ:径43mm×厚さ14mm
風防:サファイアクリスタル
ストラップ:レザーベースのウッドストラップ
防水性能:20気圧(200m相当)
ムーブメント:自動巻き機械式「Sellita SW200-1」
価格:14万3,000円
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