2026年1月2日に55歳の誕生日を迎えた俳優・竹野内豊。華やかなスターでありながら、どこか孤高の空気をまとうその姿は、作品ごとに異なる顔を見せると同時に、“竹野内豊”という人物の奥行きの深さを感じさせる。
本記事では、近年の取材記事を手がかりに、俳優・竹野内豊の魅力を見つめ直したい。

○玉木宏も「リーダーとしてまとめる姿がとても素晴らしかった」と称賛

映画『雪風 YUKIKAZE』の完成披露上映会(2025年7月9日開催)で竹野内は、自身が演じた駆逐艦「雪風」の艦長・寺澤についてこう語った。

「本当に日々、今を生きる中で、ふと命の尊さを感じることはあるんですが、自国を守るために最前線に出ていく駆逐艦の艦長たる責任の重さ、それはもう役作りをする上でどんなに考えても最後まで答えを見い出せませんでした」

絶えず冷静に指示を下し、時には型破りな判断で激戦をくぐり抜けてみせる寺澤。武士道を信念に持ち、一般的な軍人像とは一線を画す人物として描かれる。

「実際に撮影が始まってみると、ここにいる最高のキャストの皆さんと一緒に演じていく中で、皆さんの一致団結した姿に支えられ、気づいたら艦長にさせていただきました」

初共演の玉木宏が、「すごくニュートラルな方」「(車内の)後ろの方まで風が出ているのかと気遣いをする優しさを持たれた方で、お茶目なところもあって、すごく一緒にいて楽しくさせていただいた先輩です」「本当に(車の冷房を)すごく細かく調整していて、ちゃんと風が当たるようにしてくれました。後ろに届いてましたよ。ありがとうございました」と語る通り、竹野内は撮影現場での細かい気配りを欠かさない。

寺澤の妻・志津を演じた田中麗奈も、竹野内と初共演。「私は竹野内さんとご一緒のシーンしかなくて、やはり緊張して現場に入っていました」と振り返り、「竹野内さんから出ていらっしゃる温かい優しいオーラが本当にリラックスさせてくださいました」「実際に志津も久しぶりに帰ってきた夫に対して色んな思いが詰まっていたと思いますが、帰って来た時は穏やかに過ごして欲しい、普段の日常と変わらないように過ごして欲しいと演じてましたので、竹野内さんの空気感、現場の居方に救われ、素敵なシーンになったんじゃないかなと思います」と謝意を示す。
○「行く先々で『朝ドラ見てるよ』という温かい言葉をいただけて…」

2025年前期の連続テレビ小説『あんぱん』では、町医者・柳井寛として、柳井嵩(北村匠海)を見守る存在を演じた。朝ドラには「いつかチャンスがあったら参加してみたい」「ご縁があったら出演したい」という思いがあったが意外にもそれまでオファーがなく、1994年に俳優デビューしてから31年となった同年、ようやくオファーを受けて朝ドラ初出演が叶った。

演じた柳井寛は、柳井医院の院長を務める町医者で、嵩と千尋(中沢元紀)の育ての父。
竹野内は、役柄についてこのように分析する。

「寛は誰に対しても分け隔てなく広い心を持つ人格者。それはおそらく、今までの人生が希望に満ちた明るい面だけでなく、暗闇や絶望も経験しているからこそなのではないかと思います」

やなせさんの言葉を用いたものなど、心に響くセリフを多く残した寛。SNS上では、「名言製造機」とも称された。

「台本を読んでいても心に響くセリフがとても多く、どうしたら深みを持って表現できるかというのをすごく考えていました。やなせさんの言葉を引用したものもとても多かったので、皆さんも耳馴染みの多いセリフが多かったと思いますが、土佐弁だったからこそ多くの方々にしっくり届いたのではないかと思います」

周囲の反響は予想以上に大きく、「行く先々で『朝ドラ見てるよ』という温かい言葉をいただけて、これだけ毎朝多くの人々に楽しんでもらえてうれしいです」と笑顔に。「人生のヒントになる言葉を与えたり、人格者ならではの周り全体をふっくら包み込むような人間性はとても勉強になりました」と役との出会いにも感謝する。
○山田孝之が竹野内豊に癒された理由

2023年10月公開の映画『唄う六人の女』では、約10年ぶりに山田孝之と共演。物語は、美しい村に迷い込んだ男たちが、妖しくも魅惑的な6人の女に翻弄される異色のサスペンスだ。

舞台挨拶では、戦争映画『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』以来となる山田との再会を、竹野内はこう振り返る。

「その当時から同じ世代の役者さんとは空気感が全然違っていて、今回さらに研ぎ澄まされていて、いい意味で動物的な感覚を持っている感じでした。見ていて非常に面白かったですね」

一方の山田は、竹野内について、「森の中で動植物を愛でる竹野内さんを見て癒されていました」と意外な一面を告白。
「写真を撮られていましたよね。苔とか愛おしそうに見ている竹野内さんを僕は水川あさみさんと一緒に後ろから愛おしそうに見ていたんですよ。蛇とかトカゲとか捕まえていましたね」と貴重なエピソードを披露した。
○どんな役にも“体温”を宿す俳優

竹野内が演じる人物には、どんなに無骨であっても、どこかに“人間味”がにじんでいる。強さや威厳だけでなく、悲しみや悔しさ、そして小さな喜びまでを受けとめる体温を感じさせる。

この“体温”の源はどこにあるのか。『あんぱん』では数々の名言が登場する中で、竹野内は最も共感したセリフとして、「人生は喜ばせごっこや」を挙げた。自身も「人生は喜ばせごっこ」という考えを大切にしたいと言う。

「今の時代にこういう精神が日本に広まっていけば素晴らしい国になると思いますし、1人でも多くの人がそのような意識を高めることができれば、きっと素晴らしい未来が約束される気がします」

“年齢を重ねる”という言葉が相応しい俳優・竹野内豊。丁寧に、静かに、着実に演技を重ねてきたその姿勢は、時代が変わっても多くの人の心に優しく火を灯し、これからも信頼を集め続けるだろう。

■プロフィール
1971年1月2日生まれ、東京都出身。1994年に俳優デビューして以来、数々のドラマ、映画等に出演。
近年の主な出演作は、ドラマ『イチケイのカラス』(21)、WOWOW『さまよう刃』(21)、Netflix『THE DAYS』(23)、映画『シン・ウルトラマン』(22)、『映画 イチケイのカラス』(23)、『唄う六人の女』(23)、『四月になれば彼女は』(24)等。2022年には、京都国際映画祭にて三船敏郎賞を受賞した。
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