麺と湯気の向こうに、世の中が見える……。連載第4回目は、「お前はどこのわかめじゃ?」でおなじみの国民的カップ麺、エースコックの「わかめラーメン」のエクストリームアレンジ商品を実食レポートする。
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○「わかめは脇役」という常識を覆した一杯、エースコックの「わかめラーメン」
エースコックの「わかめラーメン」と聞いて、味を思い出す前にまずその絵柄を思い浮かべる人は多いはずだ。フタを開けた時に広がる、あの鮮やかな緑。一瞬にして視界を支配するわかめの量こそが、この商品の最大のアイデンティティであり、「わかめラーメン」を名乗る一杯の到達点でもある。
「わかめラーメン」が誕生したのは1983年。当時のカップ麺市場において、わかめはあくまで脇役だった。少量が彩りとして入っていることはあっても、主役として成立するとは誰も考えていなかった時代だ。「わかめの入ったラーメンは売れない」というのは、業界の半ば常識に近い定説だったとも言われる。
しかしエースコックは、その定説を真正面からひっくり返した。「わかめを入れたラーメン」ではなく、「わかめを食べるためのラーメン」を作ったのである。
結果は皆さんご存じの通りだ。後にも先にも、これほどまでに「わかめ」にフォーカスし、かつ国民的ヒット商品となったカップ麺は存在しない。「わかめラーメン」という、あまりにもストレートな名前を、この一杯が事実上独占してしまったこと自体がその成功の大きさを物語っている。
○食べても食べても、まだわかめ! エースコックが本気で振り切った「マウンテンわかめラーメン」
これまでも派生商品や限定フレーバーは数多く登場してきたが、今回登場したのが「タテロング マウンテンわかめラーメン しょうゆ」(税抜271円)だ。「海」の食材であるわかめに対して、「マウンテン(山)」というネーミング。この時点で、エースコックが量的な振り切りを狙っていることは明らかだ。
実際にフタを開けてみると、その予感は即座に確信へと変わる。お湯を注ぐ前から、すでにわかめが多い。というより、「多い」という表現では生ぬるい。カップの中に詰め込まれた乾燥わかめの存在感に、思わず笑ってしまうほどだ。
3分後、再びフタを開けると、そこには完全にどんぶりを覆い尽くす緑のマウンテンが広がる。もはや麺の姿は見えない。これはラーメンなのか、わかめスープなのか。そんな問いすらどうでもよくなる迫力がある。
箸を入れると、その凄さはさらに加速する。
ここまでわかめが多いと、スープが負けてしまうのではないかという不安もよぎる。しかし、その心配は無用だ。
ベースは香味野菜をきかせた醤油スープ。そこに液体スープで、いりこダシとオイスターの旨味を重ねている。わかめの磯の香りに負けずに、ダシと醤油がしっかりと主張する設計で、決して薄くならない。それでいて、塩気が前に出すぎないのが見事だ。
そもそも「わかめラーメン」を選ぶ人は、基本的に「わかめを食べたい人」である。何よりわかめを思う存分食べたいという欲求に対して、「マウンテンわかめラーメン」は一切の遠慮がない。
わかめが好きなら、迷う理由はない。これはまさに、わかめ好きの、わかめ好きによる、わかめ好きのためのカップ麺だ。
井手隊長 いでたいちょう 全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。メディア出演、ラーメンの商品監修など多方面で活躍中。ラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。本の要約サービス「フライヤー」執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。 著書に『できる人だけが知っている「ここだけの話」を聞く技術』(秀和システム新社)、『ラーメン一杯いくらが正解なのか』(早川書房)がある。 ブログ:「隊長日誌(ラーメンミュージシャン井手隊長の日記)」 YouTube:「ラーメンミュージシャン井手隊長の 今3時?そうねだいたいね」 この著者の記事一覧はこちら











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