第11期叡王戦(主催:株式会社不二家)は本戦がスタート。1月7日(水)には2局が行われました。
このうち、関西将棋会館で行われた藤井聡太竜王・名人―山崎隆之九段の一戦は127手で藤井竜王・名人が勝利。山崎流の力戦振り飛車を手厚い指し回しで退けて挑戦に向け一歩前進しました。
○この日も山崎ワールド全開

一昨年の棋聖戦五番勝負以来の顔合わせとなった両者。この日はその第2局と同様に、後手番の山崎九段が振り飛車を選択して幕を開けました。四間飛車に組んだところまではよくある展開ながら、守りに使うはずの右銀をスルスルと囲いの外に出していったのがまさに「山崎ワールド」の独創性。対する藤井竜王・名人は冷静に居飛車穴熊へと移行しました。

先述の右銀は中央での銀交換に落ち着いて盤上は第二次駒組みへ。いつのまにか山崎陣は雁木中住まいの居飛車へと姿を変えています。9筋の端攻めで穴熊に嫌味を付けたのは実戦的な攻め方で、金香両取りの桂跳ねが決まった局面は山崎九段の主張が通ったようにも思われました。しかし、静かに相手の言い分を聞いていた藤井竜王・名人がここで動きます。

○効かなかった「脅しの桂」

「両取り逃げるべからず」の格言通り、金取りを放置して攻め合ったのが当然とはいえ好手。先手の穴熊は一枚はがされても十分堅い上、桂馬が手に入れば後手玉攻略の貴重な足掛かりとなります。
山崎九段としては一局を通じて脅しに使いたかった桂を質駒として逆用されたのが大きな誤算に。以降は藤井竜王・名人による歩の手筋満載の一人舞台となりました。

丁寧な指し回しで拠点を作っておき、一転して拠点に打ち込む駒集めに向かったのが「急がば回れ」の決め手となりました。終局時刻は17時20分、最後は自玉の受けなしを認めた山崎九段が投了。猛攻を受けても堅い居飛車穴熊と、一度手がつくと早い山崎陣の対比が印象的な投了図となりました。勝って新年白星発進を決めた藤井竜王・名人は「久しぶりの公式戦だったが充実感も感じながらの対局だった」と振り返りました。

水留啓(将棋情報局)
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