ソラコムにとって、2025年は大きな節目の1年だった。2025年9月にIoTプラットフォーム「SORACOM」の提供開始から10年目を迎えたのにあわせ、7月には新ビジョンを制定。
さらに新たな戦略として「リアルワールドAIプラットフォーム戦略」を発表した。また、丸紅との提携を発表し、ミソラコネクトを連結子会社化するなど、日本におけるビジネス基盤を強化する一方、海外事業比率が4割を超え、グローバルでの事業成長を加速させている。

ソラコム 代表取締役社長CEOの玉川憲氏は「2026年は、リアルワールドAIプラットフォーム元年。そして、次の10年に向けて、アフターAI組織に変革していく年になる」と宣言。同氏に、これまでの10年や2025年の取り組みを振り返ってもらうとともに、2026年の事業戦略と、これからの10年について聞いた。

玉川憲(たまがわ けん)
株式会社ソラコム 代表取締役社長CEO

日本IBM基礎研究所にてウェアラブルコンピューターの研究開発や開発プラットフォームのコンサルティング、技術営業を経て、2010年にアマゾンデータサービスジャパン(現・AWSジャパン)にエバンジェリストとして入社。AWSの日本市場立ち上げを技術統括として牽引した後、2014年に株式会社ソラコムを創業。

ソラコム創業10年における成長の軌跡

--2025年9月に、IoTプラットフォーム「SORACOM」のサービスを開始してから10年が経過しました。創業当時に描いた10年後の姿にはなっていますか?

玉川氏(以下、敬称略):正直なところ、創業したときには、10年後の姿は具体的には描けていませんでした。もっと短期の視点で捉えていて、IoTプラットフォームをクラウド上に作り上げることに集中し、まずは20万回線を獲得することを目指しました。

当時は、20万回線というのが、とても大きな目標であり、サービス開始からの3日間で200回線しか売れなくて「20万回線までは遠いなぁ」と思ったことを覚えています(笑)。ただ、結果として、20万回線という目標はかなり早期に達成できました。


10年前は、すでに多くの人がスマホを所有していましたが「モノ」がつながっている状況ではありませんでした。モノからデータが集まってくれば、それらのデータから英知が生まれ、モノが適切にコントロールされ、世の中が良くなる仕組みがIoTです。この10年間で、IoTの基盤やそれに関わるセキュリティが用意され、仕組みが定着したという点では、ソラコムが貢献できた部分は大きいといえます。

実は、ソラコムを立ち上げる前に、IoTプロダクトを開発したいと考え、IoT向け通信回線を購入しに行ったことがありました。携帯電話ショップに赴き「IoTで利用するために、10回線買いたい」と言った途端に、相手が怪訝そうな顔しながら「相対契約となるため、詳細な内容を教えてほしい」と言い始めたのです。回線を買うためのハードルがかなり高く、IoTの民主化にはほど遠く状況でした。

私は、AWS(Amazon Web Services)でクラウド事業の立ち上げに関わり、Web上のボタンを押すだけで、すぐにコンピュータのリソースを利用できるというメリットを多くの人たちに提供し、コンピューティングリソースの民主化を実現した経験があります。このときの感動を、IoTでも実現したいと考えました。これが、ソラコムのはじまりです。

2014年11月にソラコムを設立し、2015年9月にクラウド上にIoTの通信基盤を作り、日本でIoTプラットフォーム「SORACOM」のサービスを開始しました。創業期のソラコムは、新たなテクノロジーイノベーションを生み出し、お客さまとの話し合いによって、このイノベーションに磨きをかけていくことの繰り返しで、まさに毎日が戦いの連続でした(笑)。

また、日本で作り、日本のお客さまによって鍛えられたサービスが、北米や欧州で通用するのかという挑戦も開始しました。
海外では、ここ2~3年で、ようやくソラコムの価値が認められ、実績が出始めています。

2017年8月には、KDDIグループの連結子会社となりましたが、独立性を維持しながら、事業拡大と黒字化を両立し、経営の地盤を固める一方で、2020年からはスイングバイIPO(新規公開株)による上場準備を進め、2024年3月に東京証券取引所グロース市場へ新規上場しました。

ここからソラコムは、上場企業として、次のステップへと踏み出し、現在に至っています。創業以来、目指してきたのは日本発のIoTグローバルプラットフォーム企業になることでしたが、現在は少しだけ胸を張ってそれが言えるようになってきました。

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