第84期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、8回戦計13局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち東京・将棋会館で行われた久保利明九段―戸辺誠七段の一戦は99手で久保九段が勝利。
振り飛車党同士の決戦を制し、8戦全勝の圧巻の成績で2局を残してB級1組昇級を決めました。
○昇級に向けた大一番

ここまで7戦全勝の久保九段は勝てば第81期以来のB級1組復帰が決まる大一番。対する戸辺七段も暫定3位と昇級が現実的な位置取りです。振り飛車党同士の上位争いとなった一局は戸辺七段のゴキゲン中飛車に対し久保九段が居飛車から右銀を繰り出す超速を採用しました。序盤から駒損を恐れず5筋の歩を突いたのは戸辺七段で、超速▲3七銀戦法の初期に見られた激しい変化です。

激しい駒の取り合いが行われて戦いは一段落。手順のなかで久保九段は王手飛車取りをかけられていますがこれも定跡手順です。形勢はやや居飛車ペースで、ここから手番を握った先手がどう攻めをつなぐかに注目が集まりました。数手後、単に飛車打ちの王手をかけたのが久保九段の答え。前例のある金を取る手を保留したことにより、飛車を捕獲される危険性が下がっています。

○ファン安心の振り飛車宣言

久保九段の攻勢が続きます。金2枚と飛車の二枚換えを決行したのちベタっと金を張り付いたのが「寄せは俗手で」の格言通りの一手。
後手玉への攻めが途切れなくなり先手優勢が明らかになってきました。確実な攻めを手中に収めてから冷静に自陣に手を入れたのも緩急自在の呼吸で、いつの間にか「攻めてよし、守ってよし」の盤石の体制ができています。

終局時刻は23時17分、最後は形を作った戸辺七段の玉を久保九段が即詰みに討ち取り終局。中飛車を知り尽くす両者らしい定跡で始まった本局は、鋭い踏み込みでポイントを稼いだ久保九段が緩急自在の手順でリードを拡大する快勝譜となりました。8勝0敗で2局を残して昇級を確定させた久保九段は局後のインタビューで「最後まで振り飛車党で戦いたい」と力強く宣言しました。

水留啓(将棋情報局)
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