第84期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は7回戦が大詰め。1月15日(木)には佐藤天彦九段―中村太地八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。
対局の結果、矢倉対雁木のねじり合いから抜け出した佐藤九段が96手で勝利。貴重な2勝目を挙げ、残留戦線に踏みとどまりました。
○天彦流の序盤戦術

佐藤九段1勝5敗、中村八段2勝4敗で迎えた本局は残留争いの大一番。とくに佐藤九段は敗れるとあとがなくなります。中村八段の先手番で始まった本局は佐藤九段が居飛車・振り飛車の態度を保留。先手が5筋の歩を突いたのを見てから雁木に囲ったのは右四間飛車や早繰り銀で攻められる形に備えた意味合いで、オールラウンダー特有の駆け引きです。

早い開戦を封じられた中村八段は矢倉囲いの堅陣を作って戦いの時を待ちます。やがて棒銀の要領で右銀を繰り出したのは後手からの攻めを誘った含みがあり、盤上は「佐藤九段の攻め対中村八段の受け」という構図で動き出しました。「戦いは歩の突き捨てから」の格言通りに5枚の歩を突き捨てた佐藤九段は飛車角銀桂が存分に働く理想形を実現します。

○攻めさせて勝つ懐深さ

反撃のタイミングを見計らう中村八段ですが、この日は佐藤九段の緩急自在の指し回しを前に苦戦を強いられます。歩頭に銀を差し出す勝負手に対してジッと二段目に歩を受けたのが勢いを与えない冷静な受け。攻め足を止められない中村八段が駒損覚悟で踏み込むよりないのを見越しており、これ以降は形勢の針が先手側に転じることはありませんでした。


丁寧な受けでリードを奪った佐藤九段の第二次攻撃が始まります。玉の腹から銀を打って守りの金に狙いを付けたのが決め手となりました。終局時刻は翌16日0時14分、最後は自玉の必死を認めた中村八段の投了で佐藤九段の2勝目が確定。仕掛け以降は後手が着実にリードを拡げる展開で、佐藤九段の快勝譜となりました。

本局の結果を受けて両者は2勝5敗で並んでいます(ほかに千田翔太八段が同星)。

水留啓(将棋情報局)
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