日本人の多くが勘違いしていた「年金」の真実を明らかにし、大反響を呼んだ『知らないと損する年金の真実』の改訂版『知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(著: 大江英樹、大江加代/ワニブックス)。新たに法改正の時期を迎えた年金制度の解説など、大幅に加筆修正した内容から一部を抜粋して紹介します。

今回のテーマは『2026年から変わる新しい制度とは』。

○法律で何が変わるのか?

2025年6月13日に「年金制度改正法(案)」(正式名称は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)」がようやく成立しました。

この法律は2024年7月に発表された財政検証の結果を受け、その後「社会保障審議会」で議論されてきた内容に基づいて作られたものです。財政検証は言わば年金の健康診断のようなものですから、その結果を受けて、治療するところや予防するところを決めて対応する内容が書かれているのがこの法律です。

厚生労働省のホームページ(※1)を見ると、この法律の骨子や何のためにこの改正を行うのかということが書いてありますが、本章ではそれをわかりやすく解説したいと思います。

今回の改正は次のように大きく6つの部分に分かれます。

1.遺族年金の見直し
2.在職老齢年金の見直し
3.被用者保険の適用拡大
4.厚生年金保険等の標準報酬月額上限の段階的引き上げ
5.個人型確定拠出年金の加入可能年齢を70歳まで引き上げ
6.その他

これらのうち、5については私・加代の専門でもあり老後資金準備という点では大切な確定拠出年金ですが、本書は「公的年金」への理解を深めるということに主眼を置いているため割愛したいと思います。
○何のために改正するのか?

制度改正があると一部のマスメディアやあまり本質をわかっていない評論家などは「年金制度がもたないから変えるのだろう」とか「改悪」だと言いがちですが、今回の改正を見る限りにおいては、むしろ財政にとって支出が増える部分もありますので、極めて冷静に現在の社会情勢に応じた制度に変えようとしていることが読み取れます。

厚生労働省のホームページを見ると、制度改正の趣旨として、次のように書かれています。

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成等の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再分配機能の強化や私的年金制度の拡充等により高齢期における生活の安定を図る」

ここで特に重要な部分は、「働き方や男女の差等に中立的」という点でしょう。男性育休に象徴されるように、性差による家庭内での役割分担は昔とは大きく変わってきています。その結果、女性は若い世代においては結婚しても出産しても働き続け、夫婦で家計を支える共働きが当たり前です。
50代でも役職に就いて高い報酬を得たり、定年を迎えたりする女性も増えつつあります。

そして、高齢者の就業がますます増えています。中には自嘲気味に「そりゃあ、働かないと食べていけないからさ」とおっしゃる方もいますが、あながちそうとばかりも言えないと思います。なにしろ「人生100年」という時代、60代と言わず70代でもまだまだ元気なアクティブシニアが増えており、たとえ経済的に問題がなくても生きがいのために働くという人も多いはずです。

実際に、総務省が公表しているデータによれば、65歳以上の就業率は年々上昇し、2023年には5%と半数以上が働いています。これは、社会全体、特に社会保険にとってはとても良いことです。多くの人が労働参加し支える側に回る人が増えることによって、制度がより厚みを増していくからです。

高齢で働く人にとって年金の制度が経済的な不利益になるのでは、意欲をそぐことになりかねません。そういった意味でも、環境整備をすることはとても大切です。
○女性の働き方を支援できる制度を

一方、女性については、40代以下では正社員として働きつづけている女性が増えてきていますが、働いてはいるもののその多くは非正規やパートによる就業というケースがまだまだ多いようです。

夫の被扶養者であり続けることで税や社会保険の負担を少なくしないためにパートでく時間を抑えて働いているという人もいるでしょうし、望んでも非正規雇用でしか仕事に就けないケースも少なくないのが現状です。そのような立場で働くということは、今の給与だけでなく、将来の年金、病気や怪我で仕事をできなくなった時の経済的な不安も大きいということを意味します。


まだまだそんな立場で働く女性が多いという実態を踏まえ、そういう方こそ社会保険の恩恵を受けられるように環境を整備していくことが必要ということはおわかりいただけると思います。前回の改正でもこの点について一定程度の対応がされましたが、今回は時代に合わせた制度にするため、もう一歩その取り組みを進めていく内容になっています。

制度を変化させて、時代にあわせた形に徐々に近づけていくことは大きな意味があるのではないでしょうか。

※1厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

○『知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(著: 大江英樹、大江加代/ワニブックス【PLUS】新書)

日本人の多くが勘違いしていた「年金」の真実を明らかにし、大反響を呼んだ『知らないと損する年金の真実』(著:大江英樹、2021年刊)の改訂版。新たに法改正の時期を迎えた年金制度の解説など、大幅に加筆修正しました。年金受給は「繰り上げ」「繰り下げ」どっちが得する?/65歳以上で働いていても年金は減らない?/今の現役世代は年金を払うと損するの?/公的年金は増やすことができる?――年金制度に何となく疑問を持っている、まもなく定年を迎える、老後のお金で失敗したくないなど、多くの方にとって必読の一冊です。
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