日本人の多くが勘違いしていた「年金」の真実を明らかにし、大反響を呼んだ『知らないと損する年金の真実』の改訂版『知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(著: 大江英樹、大江加代/ワニブックス)。新たに法改正の時期を迎えた年金制度の解説など、大幅に加筆修正した内容から一部を抜粋して紹介します。

今回のテーマは『繰り下げ以外で年金の受取額を増やす3つの方法』。

○公的年金でも増額可能!?

世の中で出回っている記事やFPの人などが公的年金について話す場合、「公的年金は決まった金額しか支給されない」と語られることが多いようです。

ところが、公的年金もやり方によっては増やすことは可能なのです。最もその効果が大きいのは「受給開始時期の繰り下げ」です。70歳まで繰り下げると42%、そして75歳まで繰り下げると何と84%増額になるというのはかなり大きな数字です。もちろん繰り下げについては注意すべきポイントはいくつもあります。ただ、年金の受取額を増やすという点においては、最も効果的な方法であることは間違いありません。この節では、「繰り下げ」以外にも年金の受取額を増やすための方法をいくつか具体的に考えてみたいと思います。まずは、その対象をサラリーマンの場合を中心としてお話をしたいと思います。
○方法1:収入を上げる

 サラリーマンが加入しているのは厚生年金です。厚生年金には「定額部分」と「報酬
比例部分」があります。65歳になって老齢年金を受給し始めると、定額部分は老齢基礎
年金に移行し、報酬比例部分が老齢厚生年金となります。
定額部分は文字通り、金額は
決まっていて加入していた月数に比例するだけで、収入の額は関係ありません。

ところが報酬比例部分は、名前の通りその人の給与の多寡によって将来の支給額は変
わってきます。具体的な支給額の計算方法は日本年金機構のホームページに載っていま
すので、参考にしていただければ良いでしょう(※1)。給料に比例して増えるのであれば、当然仕事を頑張って昇給すればその分、将来の年金支給額も多くなります。さらに早くから昇給している方が当然、金額は増えます。

結局、給料の多い・少ないは現役時代の暮らしだけではなく、老後の暮らしにも影響を与えることになるのです。やはり頑張って給料を上げることはとても重要ですね。
○方法2:夫婦ともに厚生年金に入って働く

2つ目の年金額を増やす方法、それは夫婦であれば、共働きをすること、それも両方が厚生年金に加入することです。よく「専業主婦は2億円損をする」と言われますが、これは生涯賃金で見た場合、共働きと片働きではそれぐらいの差が出てくるということを意味します。事実、「労働政策研究・研修機構」というところが2023年に出した資料(※2)によれば、大卒で正規社員の場合の男性の生涯賃金は平均で約3億2000万円、女性の場合では約2億5000万円となっています。

これは生涯賃金だけですが、年金の場合も大きな差が出てきます。妻がずっと専業主婦だった場合のモデル年金額は夫婦2人で月額約23万円ぐらいですが、単身の場合だと16万円程度になります。
現在はまだ残念ながら女性の方が平均的な生涯賃金は少ないため、仮に年金支給額が妻の分が12万円だとすると夫婦合計で28万円となります。片働きと比べると月額で5万円増えるとすれば65歳から90歳までの累計金額では1500万円もの差が付きます。もちろん、そのためには夫婦で家事や育児を分担する必要がありますし、これはライフスタイルの考え方の問題なので一概には言えませんが、こと経済的な問題、この場合は「年金額を増やす」という点に限って言えば、共働きで収入を増やすというのは極めて大きな効果を生むと思います。
○方法3:長く働く

基礎年金は原則60歳までしか加入することはできませんので、加入月数には480カ月という上限があります。ところが厚生年金にはこの上限がありません。60歳以降も働いて厚生年金に加入を続けることができます。もちろん原則は70歳までですが、そこまで働けば10年間の保険料納付期間が増えます。

どれぐらいの収入かによって金額は変わってきますが、年間で10万~20万円程度は増えますから、できるだけ長く働くことで年金支給額は増加します。特に年金額を増やすという観点で考えると70歳までは働いた方が良いでしょう。60歳で仕事を辞めてしまうというのは平均寿命が65~70歳の頃の話です。会社を辞めて人生の晩年の5年か10年を年金で暮らす、という時代だったからです。

今の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳と言われていますが、これはあくまでも平均寿命の話です。
「寿命中位数」というデータがあります。これは同じ年に生まれた人の半数がまだ生存しているという年齢のことですが、それによると男性は84.4歳、女性は90歳となっています。つまり2人に1人はこの年齢まで生きているということです。であるならば、今の時代は70歳まで働くのも不思議なことではありません。働けるうちはできるだけ長く働いて年金を増やすということを考える時代になってきているのではないでしょうか。
○60歳以降も国民年金に任意加入

フリーランスや自営業で将来の年金受給額を増やす方法としては、60歳以降も国民年
金に任意加入することです。

もっとも、これは誰でも加入できるというわけではありません。たとえば20歳になってからも学生時代に年金保険料を払っていなかった、または稼ぎが厳しく保険料を免除してもらった期間があるために満額期間、加入していなかった人もいます。そういう人は年金支給額が少なくなるため、60歳以降に480カ月の期間に到達するまでは、国民年金に任意加入すれば年金額は増えます。

また、自分で年金を増やす方法としては「付加年金」という制度もあります。これは
毎年の国民年金保険料に上乗せして月額400円付加保険料を納付することで、将来受
け取れる年金額が増額されます。

(※1)報酬比例部分の計算(日本年金機構のホームページ)
https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/hagyo/hoshuhirei.html
(※2)「ユースフル労働統計2023」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2023/documents/useful2023.pdf

○『知らないと損する年金の真実 - 改訂版 2026年新制度対応 -』(著: 大江英樹、大江加代/ワニブックス【PLUS】新書)

日本人の多くが勘違いしていた「年金」の真実を明らかにし、大反響を呼んだ『知らないと損する年金の真実』(著:大江英樹、2021年刊)の改訂版。
新たに法改正の時期を迎えた年金制度の解説など、大幅に加筆修正しました。年金受給は「繰り上げ」「繰り下げ」どっちが得する?/65歳以上で働いていても年金は減らない?/今の現役世代は年金を払うと損するの?/公的年金は増やすことができる?――年金制度に何となく疑問を持っている、まもなく定年を迎える、老後のお金で失敗したくないなど、多くの方にとって必読の一冊です。
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