「糖化は老化」という言葉の生みの親であり、「糖化ストレス研究」のパイオニアである八木雅之氏が、「老けない食べ方」の新常識を解説した『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識 糖化博士が教える若返り46のコツ』(著: 八木雅之/三笠書房)。この記事では、書籍から一部を抜粋して紹介します。


今回のテーマは『皮膚や内臓、脳に悪影響を及ぼす「悪玉架橋」』。

○皮膚や内臓、脳に悪影響を及ぼす「悪玉架橋」

日々発生するアルデヒドに対して、何の対策も講じないと、糖化のスピードが加速します。それによって、「老化のラスボス」であるAGEsが体内に蓄積していくことになります。

AGEsは私たちの体の奥深くで、確実に老化の火種となっていきます。

その理由の一つが、「悪玉架橋」というやっかいな構造の存在です。

AGEsは、体内のタンパク質どうしを化学的につなぎとめてしまう性質があります。これを「架橋構造」と呼びます。本来は柔軟で弾力のあるはずの組織を、まるで接着剤や紐で縛りつけるように固めてしまうのです。

その結果起こってくるのが、以下のような老化現象です。

皮膚の弾力が失われ、シワやたるみが生じる。
血管のしなやかさが失われ、動脈硬化や高血圧の原因になる。
関節や腱に動かしにくさや痛みが現れる。


これらは表面的に現れる老化現象です。悪玉架橋は、体の中でも発生します。

たとえば、腎臓や肝臓などの臓器に悪玉架橋がつくられれば、硬化や線維化が進行し、機能が低下していきます。

さらに恐ろしいのは脳や神経にも影響を及ぼすことです。

AGEsは脳の組織にも蓄積し、アルツハイマー型認知症の進行に関与している可能性も示唆されています。

そして、もう一つ見逃せないのが、慢性炎症のリスクです。

AGEsは炎症を誘発することが知られています。体内のあちこちで「ジワジワと続く痛みやだるさ」「関節の違和感」の原因になり得るのです。

こうした不調を感じて病院に行くと「老化ですね」「年齢のせい」といわれることも多いと思います。

ところが、その症状は、AGEsの蓄積や悪玉架橋によって起きている可能性が高いのです。
○コラーゲン線維が硬化して、骨折の原因に

骨粗しょう症とAGEsの関係についても、近年研究が進んでいます。

これまで、骨粗しょう症といえば「骨密度が下がることで骨がもろくなる病気」と考えられてきました。


しかし現在は、「骨質」という新たな観点が注目されるようになっています。

骨質とは、骨のしなやかさや弾力性など、いわば「骨の質」に関わる要素のことです。その中でもとくに重要なのが、コラーゲンの状態です。

骨というと硬い成分が連想されがちですが、じつはコラーゲンという柔軟性のある繊維状のタンパク質も多く含まれます。コラーゲンは骨に弾力をもたらし、衝撃を吸収する役割を担っています。まさに、骨に内在するバネのような存在です。

このコラーゲンが糖化すると、骨の質が大きく損なわれます。とくに「ペントシジン」と呼ばれるAGEsは悪玉架橋ができる原因になり、コラーゲン線維が硬化し、弾力を失わせてしまいます。その結果、骨が衝撃に弱くなってしまうのです。

たとえば、転倒した際、本来であれば骨のしなやかさがバネのような働きをして衝撃を吸収することで骨折を防ぎます。

しかし、糖化が進み、骨質が劣化していると、そうしたクッション機能が低下し、強い衝撃が加わったときに、衝撃を吸収できなくなって骨折しやすくなってしまいます。

つまり、骨密度が正常範囲内にあったとしても、骨質が劣化していれば、骨折のリスクは高くなるのです。


現在、骨粗しょう症学会などでも、「骨の強さは骨密度と骨質の両方によって決まる」という考え方が常識となりつつあります。

骨を健康に保つには、カルシウムの摂取や運動に加えて、「コラーゲンを糖化させない生活習慣」が欠かせないのです。
○抜け毛、不妊症の裏にはAGEsの蓄積がある

糖化ストレスは私たちの体にさまざまな老化や病気を引き起こします。

たとえば、わかりやすいところでは毛髪。髪の毛にもAGEsは蓄積します。

とくに日本人は髪が黒いため、紫外線や熱の影響を受けやすく、AGEs化が進みやすいのです。それによって、髪のパサつき、ハリやコシの低下が見られます。

また、頭皮の糖化は、抜け毛の原因にもなります。

育毛メーカーの研究では、AGEsが毛乳頭細胞における炎症を誘発し、毛母細胞の増殖が阻害されることによって脱毛が起こることを示しています。

体のAGEsの蓄積が毛包の老化を引き起こし、加齢にともなう脱毛症の進行を加速させる原因になることがわかり始めているのです。

毛母細胞をAGEsから守り、抜け毛を減らすためには、普段の食事でAGEs対策をしていくことが欠かせないのです。

一方、意外なところでは、不妊症も糖化ストレスが原因の一つになります。


以前、不妊治療を専門とする医師たちによって、「どうやったら体外受精の成功率を上げられるか」という研究が行なわれました。その研究では、卵巣内の卵胞液もAGEs化が進むことがわかりました。

そこで、糖化を抑える作用のあるサプリメントや食生活の改善を行ない、AGEs化の改善を図ったところ、妊娠成功率が上がったと報告されています。

なお、海外の研究では、まだ結論は出ていないものの、精子も糖化することが示されています。精子の糖化によって運動能力が落ち、男性不妊症につながっているのではないか、と研究が進められています。

私たちも、人の精液や卵胞液中にAGEsが含まれ、その量が人によって大きく異なることを見つけ始めています。

そう考えると、赤ちゃんを望むカップルは、男女ともに食生活を改善して糖化を防いでいくことが必要不可欠だとわかるのです。
○AGEsが脳も血管もむしばんでいく

AGEsの蓄積と認知症の関係もわかってきています。

アンチエイジングドックの受診者226名(50代後半~80歳)を調査した愛媛大学院の研究結果があります。

皮膚のAGEsの蓄積量を測定したところ、その数値が高いグループに、軽度認知障害(MCI)になっている人が多く見られました。軽度認知障害とは、認知症の一歩手前で、認知症に進行していく可能性が高い状態です。

なお、認知症で患者数が最も多いアルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ」があり、その周辺にAGEsが蓄積していることが知られています。


糖尿病の合併症も、糖化が強く関わっています。糖尿病が進行すると、神経障害や網膜症、腎症などの合併症が起こってきます。

神経障害では、手足のしびれや痛み、感覚の鈍さ、自律神経の乱れによる立ちくらみや発汗異常が見られます。網膜症は、網膜の毛細血管が損傷し、視力の低下や失明につながることもあります。腎症では、腎臓のろ過機能が低下して尿にたんぱくが出るようになり、進行すれば人工透析が必要になるケースもあります。

こうした合併症の多くに糖化ストレスが関与しているのです。

血管が老化すると、動脈硬化が起こります。動脈硬化とはその名の通り、血管が硬くなることを表しますが、その際、粥のようなドロッとした物質が血管壁に塊となって蓄積されます。それを「粥状化」といいますが、その塊のものそのものがAGEsの集まりであることがわかっています。

さらに、がんとAGEsの関係を実験した研究結果もあります。がん細胞にAGEsを加えると、がん細胞が活発に動くようになったうえ、細胞の中に侵入していく能力も上がったのです。

AGEsとがん細胞は、ともに人の健康を奪う「悪者」。


悪者は悪者さえも味方につけてより強くなる――。そんな現象が、私たちの体内でも繰り広げられるのです。

このように、糖化ストレスやAGEsは、万病の発症や進展につながっていきます。

だからこそ、私たちが健康であり続けるためには、1日3回の食事をいかにアルデヒドの発生量を抑えるようにとるかが重要なのです。

○『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識 糖化博士が教える若返り46のコツ』(著: 八木雅之/三笠書房)

本書では、アルデヒド対策に唯一効果のある最強の食べ方を紹介します。ポイントは、「タンパク質 × 脂質 × 酸」。この3つを1食の中でそろえれば、アルデヒドの過剰発生を抑えて、老化を防ぐことにつながります。白ご飯、ラーメン、スイーツ、なんでも食べてOKです!食事を楽しみながら、若々しく、豊かに、人生を味わい尽くしましょう。

○八木雅之(やぎ・まさゆき)

同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授。農学博士。京都生まれ。京都工芸繊維大学繊維学部卒業、同大学院修士課程修了。1989年、京都府立大学大学院農学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員、糖化ストレス研究会理事。
糖化アミノ酸分解酵素を用いたグリコヘモグロビン測定系や、抗糖化作用をもつハーブ素材の開発などに従事。糖化ストレスに関する基礎研究から応用研究まで一貫して取り組む。2011年より現職。老化や生活習慣病の原因となる“糖化ストレス”の解明と対策に力を注ぎ、抗糖化素材や測定法の開発など、糖化研究の最前線を支える、日本を代表する第一人者。「糖化は老化」「糖化ストレス」「抗糖化」という言葉の生みの親。
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