「年収が数千万円もあれば、将来の不安はない」。そう考える人は少なくないかもしれない。
実際、世帯年収が数千万円に達する家庭は、周囲から「成功している家族」と見られがちだ。都心のマンション、余裕のある暮らし、子どもへの十分な教育投資──。一見すると、経済的な不安とは無縁に思える。
しかしその一方で、高収入であるがゆえに、誰にも相談できず、静かに追い込まれていく人たちがいるのだそう。
「収入が多いことと、経済的に安全であることは、まったく別の話です。むしろ、生活水準を上げきった後につまずくと、立て直しは一気に難しくなります」──そう語るのは、倒産や借金問題に直面した経営者を数多く支えてきた専門家・高橋健一朗氏だ。
彼のもとには、外から見れば順風満帆に見える人々から、切実な相談が後を絶たないという。なぜ「十分すぎるほど稼いでいるはずの人」が、ある日突然、選択肢を失ってしまうのか。
今回は、高橋氏が向き合ってきた事例をもとに、高収入層に共通する家計・財務の盲点と、表面化しにくい“油断の正体”を掘り下げる。
世帯年収8000万円でも、家庭が詰む理由
一般的に、世帯年収8000万円を超えるケースでは、同族経営の役員報酬で構成されていることが多い。社長である父、役員の妻、そして娘や息子。家族全員で会社の利益を分け合う形は盤石に見えるが、ここに大きな落とし穴がある。
「中小企業の多くは、会社と個人の財布が事実上、一緒になっています。帳簿を細かくチェックせず、“感覚だけ”でお金を動かしている。役員報酬として家族に金を流していても、経営者自身が“会社の本当の数字”を理解していないケースが非常に多いです。数字を見られない人は、どれだけ稼いでいても、いつか必ず行き詰まります」(高橋氏、以下同)
さらに問題を深刻にするのが「パーキンソンの法則」だ。一般に3つあるとされる法則のうち、家計において重要なのが「第2法則」である。これは「支出の額は、収入の額に達するまで膨れ上がる」という傾向を指す。収入が増えるほど生活水準も無意識に上がってしまい、以前より稼いでいるはずなのに貯金が増えない、あるいは減っていくという現象だ。
「年収3000万円を超えると、家賃100万円のマンションに住んでいてもおかしくない状態になります。ほかにも外食や趣味の単価も上がり、生活コストが膨張していく。一度上げた生活レベルを落とすのは、心理的にも物理的にも非常に困難です。本人は成功者の暮らしをしているつもりでも、実際には入ってきた金をそのまま流しているだけの『自転車操業』に陥っているのです」
つまり、収入が増えた分だけ生活水準を上げず、踏みとどまれるかどうかが分かれ道になるということだ。
口座に1億円あっても安心できない…。
高収入家族の経済を支えているのは、多くの場合、特定の事業一本だ。しかし、市場の変化やブームの終焉によって売上が数割落ちただけで、その家計は即座に立ち行かなくなることも...。
「私のところに相談があった事例では、結婚式関連の商材を扱っていた会社が、コロナ禍で一気に需要を失いました。それまで家族で年1億円近い報酬を取っていても、売上が止まれば一転して赤字です。
それでも一度上げた生活は変えられず、プライドから『破産だけはしたくない』と、泥沼の経営を続けてしまう。挙句の果てに、身内が会社の金を持って逃げ出すようなケースさえあるのです」
さらに、家族間で「借金」の情報が共有されていないことが、取り返しのつかない悲劇を生む。
「具体的には、亡くなったご主人の口座から葬儀費用を出した奥さまがいたのですが、実はこれが致命的なミスになります。口座からお金を動かした時点で、法的には『相続を認めた』と見なされるからです。後日、夫に5000万円の借金があったことがわかっても、もう相続放棄はできません。よかれと思った行動が、一生背負いきれない借金を引き継ぐ引き金になってしまうのです」
「うちは稼いでいるから大丈夫」という思い込みが、家族を路頭に迷わせる。仮に、銀行口座に1億円あったとしても、裏で10億円の負債があれば、実態は債務超過…。収入が大きい家庭ほど、手元のキャッシュが安心材料になりやすく、結果として負債の全体像が見えにくくなることがあるのだ。
生活費は収入の3割に。難しいならルール化しよう
では、高収入ゆえの転落を防ぐために何をすべきなのか。高橋氏は、攻めの経営とは対極にある“現実的な守備”の重要性を説く。まず大前提となるのは、徹底的な数字の把握だ。
「いくら稼いでいても、生活費は“収入の3割以内に抑える”のが鉄則です。これを守らなければ、たとえ年収が1億あっても破綻のリスクは消えません。とはいえ、自分を律することができる人は意外と少ない。だからこそ、意志ではなくルールで支出を管理しなければなりません。
また、数字を税理士に任せきりにする経営者も多いですが、自分自身で収支を厳格に管理する癖をつけましょう。先ほどもお伝えしましたが、数字から目を逸らすことは、破綻へと一歩踏み出すことに他なりません」
次に重要なのが、家族間の透明性である。高年収層の中には、見栄やプライドが邪魔をして、家庭内で財務状況を隠してしまう人もいるそうだが、それが有事の際に家族を突き落とす凶器となる。
「せめて夫婦間では、資産だけでなく借金の状況も共有しておくべきです。
そして最後に、高橋氏は「やり直せる」という準備と心構えを強調した。
「安定した収入が永遠に続くという幻想は、今すぐ捨てるべきです。中小企業の経営は常に不確実性と隣り合わせです。有事の際でも、自分と家族の生活を守り、再出発できるだけの資金を別に確保しておく戦略が必要です。もし行き詰まったとしても、孤立せずに専門家を頼れば、必ずやり直す道は見つかります」
もし今、自分の家計の正確な状況が言えないのであれば、一度立ち止まって現実を確認してみてはどうだろうか。
参考/年収別・1カ月の支出額
西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら











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