最先端テクノロジーを搭載した自動車、未来の移動手段がお披露目される「ジャパンモビリティショー札幌2026」が1月23日から3日間、北海道・札幌の大和ハウスプレミストドームで開催された。

トヨタ、ホンダ、日産、ポルシェ、ランボルギーニ、ルノーなど国内外の22ブランドが出展。
コンセプトカーや最新型市販車が展示されるとともに、一般企業や大学、高等専門学校で研究開発された最新技術を紹介。期間中にのべ7万6,667人が会場を訪れ、モーター技術を中心とした工学技術の現在と近未来を体感した。

○“工学系女子”が集結! 「ギャル電×We are Engine.」のトークショー

1月24日のステージイベントでは、「ギャル電×We are Engine テクノロジーでサバイブ! トークショー」が開催された。スペシャルゲストに、ギャルがアガる作品を続々と生み出す電子工作ユニットのギャル電さん、北海道電力 水力部発電グループの村雲由梨さん、北海道大学 大学院工学研究所 助教の岩井愛さん、戸田建設 札幌支店建築工事部技術課の山中くるみさんが登壇。司会は工学部出身のアナウンサー・磯田彩実さんが務め、“工学系女子”がそろうトークセッションがステージを盛り上げた。

このステージに「工学ってこんなにワクワク。」という、若者を工学に惹きつけるようなサブタイトルがついたのには理由がある。日本は、大学・大学院における工学系の女子学生割合が OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも極めて低く、約17%にとどまる。同機構が世界38ヵ国で実施している学習到達度調査(PISA)によれば、日本は15歳の時点の「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3部門でトップに立つ。女子は「読解力」に優れ、「数学的リテラシー」は男子に譲るという結果は世界的に共通するが、その差は年々縮まっている。

しかし、調査の3年後、高校卒業後に大学の工学部に入学する女性の比率は、工学部入学者全体の16%に過ぎない。36%のイスラエル、32%のオーストリア・メキシコといった比較的工学系の大学に進学する女性比率の高い国々が存在し、欧州のほとんどの国が20%を超えている実情から見て、日本の“工学女子”の少なさは異常でもある。

村雲さんが所属する北海道電力の水力部門には、約180名の従業員が所属しているが、そのうち女性はわずか4名。
2名は北海道内各地の水力センターで勤務しており、札幌市の本店で働くのは村雲さんを含む2名だけだ。

「入社した時は旭川の水力センターの現場で保守の作業をしていましたが、女性は私1人でした。入社した2020年はちょうど新型コロナウイルス感染症が始まった時期で、入社式も分散開催。女性と接する機会が本当になくて、ものすごく心細さを感じました」という。大学や大学院の工学系に進学する女性が少ないため、結果的に工学系の仕事に就く女性の数も増えていかない。

一方、次世代半導体の活用、グリーントランスフォーメーション(GX=エネルギーの供給を、温室効果ガスを大量に発生する化石燃料から、水力、風力、太陽光といった再生可能エネルギーに転換し、経済・社会の仕組みを持続可能な方向に変革すること)、宇宙開発などの先端技術領域の拡大・発展により、北海道に限らず、日本全体で、工学人材の需要が高まっている。この分野への女性の進出は、革新的なアイデアや新しい価値観を社会にもたらすという意味でも、大きな期待が寄せられている。

こうした風潮の中で、2025年6月に誕生したのが産学官連携プロジェクトの「We are Engine.」である。企画を北海道大学 工学部、情報発信を北海道新聞社、広報戦略や計画のサポートを電通北海道が担当。北海道電力もゴールドパートナーの1社として名を連ねた。

「Engine」は工学のシンボルであり、女性こそが、社会を動かす動力機関であることを示す。未来の社会を支える中学生や高校生に工学の魅力を発信し、「工学女子」「女性エンジニア」を増やし、北海道・日本の未来を輝かすことが、プロジェクトの目標である。
イベント参加やワークショップの開催を通して工学の面白さを若年層に伝え、「工学は男性ばかり」「重労働で危険も伴う」といった印象を払拭することを狙う。

北海道電力は、「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、排出量を実質0にする試み)」の実現に挑戦している。村雲さんのグループが扱う水力は、まさにその中心的な再生可能エネルギーである。河川のダムに水の位置エネルギーを貯え、それを用いて水車を回転させることで電力を生み出す水力発電。現場の作業は、ダムの水位や、その日の天候、装置の状態によっても左右される。現場からの作業の問い合わせに対して的確な指示を出し、安心・安全な再生エネルギーの安定供給を支えるのが村雲さんの現在の業務だ。

学生時代に研究した「病院の排水に混じる抗生物質を取り除くためのフィルターの開発」との共通点は、「水ぐらいです」と、にこやかに笑う村雲さんだが、日々の業務を通して夢が徐々にふくらんでいくのも感じている。「いつか、自分で水力発電所を設計して、自分で建てたいなと思っています。まだ少しずつお勉強しているところです」。村雲さんがEngineを全開にして建設した、カーボンニュートラルな水力発電所の誕生を楽しみに待ちたい。
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